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第15話「コンちゃんのぬけがけ」

 店長さんとミコちゃんが急接近?

「むう……では、ミコと店長はどうじゃ?」

 言われると、前の回だってミコちゃんと店長さん一緒でした。

 わたし、ミコちゃんと勝負なら負けちゃうかも…

 って、コンちゃんどこに行くんですかっ! ぬけがけ禁止っ!


「ポンちゃんポンちゃん!」

 朝のお勤め、祠掃除を終えて帰って来たら、ミコちゃんが呼んでいます。

 なにかな?

「ちょっとちょっと!」

 ミコちゃんの手招きに行って見れば、そこには大福が並んでいました。

「なかなか良く出来たみたいなんだけど……」

「ふわわ、ミコちゃん上手~」

「試食お願いします」

「は~い」

 早速つまんでみます。

 ミコちゃん大福はすごい薄皮であんこが透けています。

 黒いあんこは普通のあんこ。

 緑のあんこはうぐいすパンのあんこと一緒。

 赤いあんこはあんこじゃなくて、ゼリーでした。

 甘くて美味しくて、見た目も綺麗。

「美味しい……ミコちゃんすごーい!」

 よく考えたら、家のごはんはミコちゃんが作ってます。

 お料理上手なんだ。

「赤いのはどうでした?」

「ゼリー、美味しかったよ」

「でも、ちょっと味、薄くないです」

「むー、あんこと比べると、そうかも」

「普通にあんこの方がよかったかしら」

 ミコちゃん考えながら行っちゃいます。

 そこに今度はスケスケ寝巻きのコンちゃん登場です。

「おはよ~、メシは~?」

 お腹に手を突っ込んで掻いています。

 ボサボサの髪。

 今のコンちゃんは女を捨ててます。

「ポン、メシはまだかの?」

「コンちゃん……店長さん見たら引いちゃいますよ」

「スケスケじゃから、大丈夫じゃ」

「そ、そう……むう……」

 コンちゃんボサボサの髪を掻きながら目が泳ぎます。

 そしてミコちゃんお手製大福で目が止まりました。

「大福じゃ、うまそうじゃの」

「うん、おいしかったよ」

「ポンが作ったのか?」

「ううん、ミコちゃん」

「ミコは器用じゃのう」

 コンちゃんも一つ一つ試します。

 口に入れる度に、目が大きくなってびっくりしてるみたい。

 全色食べた後で、唸りながらもう一度黒あんを手にしましたよ。

 すごい真剣な顔で味わっている。

「コンちゃん、どうしたの?」

「い、いや……どら焼きと同じあんこかと思ったら、別のようじゃの」

「わたし、そこまで気付かなかった」

 と、ミコちゃん戻ってきました。

 手にはお饅頭を盛った皿。

「今度はこっちを試食して」

 言われるままに、わたしとコンちゃん手を伸ばします。

「こっちも美味しい」

「そう、よかった」

 でも、コンちゃんは真剣な顔のまま、黙ったままです。

「コンちゃん、どうしたの? コンちゃんっ!」

「え、あ、ポン、なんじゃ?」

「黙り込んじゃって、どうしたの?」

「い、いや……あまりの美味さにびっくりして」

「コンちゃんもびっくりしたんだ……ミコちゃんのお饅頭、美味しいよね」

「う、うむ……」

 コンちゃんかじったお饅頭をじっと見つめて、また固まっちゃいました。

 わたし、もう一つお饅頭を貰って割ってみたけど……美味しいけど、特別なお饅頭って訳じゃないようです。

 コンちゃんは何であんこを見て固まったんでしょう?

 ミコちゃんもお饅頭を割ってから、

「お饅頭の中にオマケとか入れた方がいいのかしら?」

 そ、それはやめた方がいいような気がします。

 オマケがあんこまみれになっちゃうから。


「じゃ、配達に行ってきますね」

「はーい、行ってらっしゃ~い」

 ミコちゃん、新作大福を持って行っちゃいました。

 お店にはわたしとコンちゃん。

 今日もお客さん来ないのかなぁ。

 でも、観光バスはいきなり来るから、用心しないといけません。

「のう……ポン」

「わ……コンちゃんどうしたの?」

「うむ……おぬし、さっきの饅頭はどうだった?」

「美味しかったけど?」

「うむ……おぬし、最近店長と話しておるか?」

「店長さんと? うん、ちょっとは話してるよ」

「前と比べてどうじゃ?」

「前と……同じくらいかな?」

「むう……では、ミコと店長はどうじゃ?」

「ミコちゃんと店長さん?」

 よーく思い返してみます。

「あー、ミコちゃんと店長さん、最近よく一緒にいますね」

「そうか……」

「それがどうしたんです?」

「いや……ミコのやつ、店長を狙っておるのかも知らん」

「え……まさか」

「いや、あやつは元々人間ゆえ、人肌が恋しくなったのかも知らん」

「むー……そんな事あるのかな」

「店長とミコが話しているとき、楽しそうではないかの?」

「あー、二人とも笑ってますね、楽しそうかも」

「ほれ、そうじゃろう」

「ん?」

「それに比べて店長の態度はどうじゃ、わらわやポンに対しての態度」

 思い返してみます。

 いろいろあると思うけど、わたしやコンちゃん怒られてばっかりかな?

 そう思うと、店長さんの笑顔はミコちゃんばっかり?

「でも、ミコちゃんがわたしの恋人の店長さんを盗ったりするとは思えません」

「人間はウソをつくぞ」

「それはそうですけど、ミコちゃんに限って……」

「うむ……こう、急いで店長をなんとかせんといかんの」

「コンちゃんどうしたの? どうするの?」

「ミコに盗られる前に、わらわがゲットするのじゃ」

「……」

「そうすれば、わらわはずっとここに居座れる」

「あのー、コンちゃん」

「あん?」

「店長さんはわたしのものです!」

「……」

「さっきから聞いてたら、ミコちゃんは脅威でもわたしは大丈夫みたいな言い方!」

「それはそうじゃろう」

「コンちゃんっ!」

 あ、コンちゃんもう逃げてます。

 ドアの所に立って、

「わらわは急用を思い出した……ちょっと出かけてくる」

「えー! わたし一人だけー!」

 って、いつも店は一人でやってるようなものだけど、

「ちょっ!」

「なんじゃ?」

「コンちゃん……まさかミコちゃんを殺しに行くんじゃないですよね?」

「安心せい、そんな安っぽいサスペンス劇場みたいな事はせん」

 言い残して行っちゃいました。

 ミコちゃんが心配だけど、お店から動けません。

 ミコちゃん、無事に帰ってきてくれるといいんだけど……

 そしたらすぐにミコちゃんが帰ってきました。

「ただいま~」

「ミコちゃん! コンちゃんに会いませんでしたか?」

「コンちゃん……会わなかったけど?」

「用事があるって出て行きました」

「うん……私、会ってないけど……」

 そこでわたし、コンちゃんが言ってたの、聞いてみます。

「ミコちゃん、店長さんの事、好き?」

「ええ、好きですけど?」

 む……躊躇なしです。

「ミコちゃん、人の恋人盗らないって言ってたのに!」

「好きかって聞かれたから好きって言っただけで、ポンちゃんの恋人を盗ったりしませんよ」

「?」

「好きか嫌いなら好きってだけです、ポンちゃんもコンちゃんも好きよ」

「あー!」

「もう、変なポンちゃん」

 そう言うとミコちゃん、奥に行っちゃいました。

 ミコちゃんの顔はウソを言ってるようには見えませんでしたよ。

 わたし、コンちゃんに遊ばれてたのかも。

 でも……

 コンちゃんの「先にゲットするのじゃ」って辺りがすごく気になります。

 もしかしたら、店長さんに魔の手が……でも、店長さんはパン工房で明日の仕込みの最中で無事。

 一応確認です、お店ほっぽってパン工房に行っちゃえ。

 お客さんいないから、いいよね。

「店長さーん!」

「なに、ポンちゃん?」

「なにもないですか?」

「??」

「さっきコンちゃんが一人で飛び出しちゃったから」

「ふーん、コンちゃんがねぇ……ここにはいないけど」

「なら……いいんです」

「コンちゃん出かけてるなら、お店一人じゃなんだろうから、俺も店に立つかな」

 きゃーん、店長さんと二人でお店です。

 コンちゃん出かけて、ちょっと心配したけど、今はラッキー感じます。

「今、お店、誰がいるの?」

「えーっと……」

 店長さん怒ってますよ、笑いながら、

「ポンちゃん!」

「お、お客さんいないから、ちょっとくらいっ!」

「お客さん……いないんだ」

 あう、店長さん落ち込んじゃいました。


「むー、本当にお客さんいないね」

 店長さん腕組みして苦い顔。

 わたし、店長さんと二人でお店にいられるのは嬉しいけど、この雰囲気はちょっと……

 なんとか楽しい雰囲気にしたいけど……

 店長さん、こわい顔でわたしを見つめていますよ……

 そっと差し出した手……

 わたし、手を握られて赤くなっちゃいます。

「そろそろポンちゃんに狸汁になってもらうしか」

「えー!」

「だってポンちゃんパクパク食べるよね」

「わ、わたしそんなに食べてないもん」

「本当かなぁ」

「店長さん、今、すごいいい雰囲気だったのに」

「へ?」

「わたしと店長さん二人きり!」

「あ、ああ、うん」

「ここはキスとかするシーンですよ!」

 もう、強引に雰囲気にもっていきますよ。

「さぁ! レッツ、メイク、ラーブ!」

 目を閉じて、キス待ちモード。

 店長さん逃げられないように、しっかり襟首つかまえてます。

 もう、キスしないと放さないんだからっ!

 でも、そんな時に限ってお客さんです。

 カウベルが鳴って、お店のドアがきしみながら開く音。

「ただいま……」

 あ、お客さんと思ったらコンちゃんです。

 うわ、キスしようとしてるの、見られちゃったかな。

「……」

 コンちゃんこわい目をしてわたしを見てます。

 やっぱりキスシーンをしっかり見られたみたい。

 未遂なんだけど……

「?」

 でも、コンちゃんこわい顔のまま、一度奥に引っ込んじゃいましたよ。

 ま、まさか、包丁とか持って戻って来るかもしれません。

 そんな事ないよね、コンちゃんだったら能力でどーとでもなるもんね。

 あ、コンちゃん戻って来ました。

 なにかお皿を持ってます。

「コンちゃん、それは?」

「店長……まさかポンとキスしておらんだろうな」

 コンちゃんの台詞に店長さん首をブンブン横に振ってます。

「ふむ、よかろう、キスの一つや二つ……」

 コンちゃんがお皿をレジに置きます。

「店長、約束を忘れておらんだろうな」

 お皿には「おはぎ」が盛られています。

「ほれ、『馬糞のおはぎ』じゃ、持って来たら結婚じゃったろう」

 わたしも店長さんもドン引きです。

 お皿に載っているのは、どう見ても「普通のおはぎ」。

 でも、「馬糞のおはぎ」と言われれば、そんな気もします。

 店長さんピクピクしてて、なにも言えません。

 代わりにわたしが抗議しましょう。

「そそそそんなの信じられませんっ!」

「ふむ、では、試してみるがよかろう」

「えー!」

「ほれ、ポン、食べてみよ」

「そ、そんな……」

「店長でもよいぞ、食べてみい」

 コンちゃん、お皿をわたし達の前に出します。

 別に変な臭いとかしないと思うんだけど、「馬糞のおはぎ」って言われるとそんな気もします。

「いたずら」に使うくらいなんだから、すごい偽装かもしれませんし。

 もしかしたらこれが「ステルス」ってやつでしょうか!

「あら、コンちゃん帰ってたの?」

 奥からミコちゃんが出てきましたよ。

「おやつの準備出来てるけど……あら、おはぎ」

 ああ、ミコちゃんがつまんじゃいました。

 そのまま食べちゃいましたよ。

 口がもぐもぐして……あ、眉間に縦しわ発生です。

「このおはぎ、スーパーの特売ね」

「!!」

「砂糖の甘さ……ちょっとくどい感じ、これはこれで甘くて美味しいけど」

 ミコちゃんの解説に、わたしと店長さんもつまみます。

 うん、普通におはぎだよ。

 美味しくいただきました。

 でも、コンちゃんは怒った顔でミコちゃんにらんでいます。

「ミーコー!」

「なに、コンちゃん?」

「おぬしが余計な事するから、わらわの結婚が台無しじゃ!」


 そして夜。

 村はとっても山の中で、星が綺麗なんです。

 そんな夜空にダンボール。

 コンちゃんは、お店をほったらかしておはぎを買いに行った罰なんだって。

 そしてコンちゃんの隣にはわたし……わたしもお店、ほったらかしにした罰。

「もう、コンちゃんが勝手をするからいけないんです」

「うまくいくと、思ったんじゃがのう」

「離れないでください、寒いんだから」

「わかっておる」

 肩寄せあってコンちゃんと二人。

 そんなコンちゃんの肩がピクッてしました。

「コンちゃん寒いの?」

「い、いや……ここにわらわとポンがおるという事は!」

「?」

「店長とミコの二人きりじゃ!」

 あー、もう、それはいいですよ。


「浮気者ーっ!」

「え!」

「めめめ雌のニオイがします、雌の、女の!」

「えー!」

 店長さんからニオイます、浮気のニオイが、昼ドラな展開になっちゃうのかな~


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