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第23話「まるでジ●ーズのように」

「な、なに、その目!」

「ポンちゃん、ポンちゃんはエロポンなんですよね?」

「ちゃんとエッチな本、読んできたんですか?」

「え?」

「その水着は伝説のアイテムなんですよ!」


 閉店間際、お店のカウベルがカラカラ鳴りました。

「いらっしゃいませ~」

「こんにちは~」

 入ってきたのは神社で巫女をやってるたまおちゃん。

 手にはなにか、持ってます。

「回覧版です……で!」

「なんです、たまおちゃん?」

「ちょっと見てください」

 回覧版を開くと、なんでも工事で停電になるそうです。

 道路も閉鎖されて麓に下りれないんだって。

 以前、こんな事があったように思います。

 あの時は店長さんに裏切られたかと思いました。

「ポンちゃんわかります?」

「え? うん、一度停電あったよ」

「道路も塞がったんですか?」

「うん、村は真っ暗だった」

「そうですか……」

 店長さんとミコちゃんが奥から出てきます。

 わたし達の見ている回覧版を覗き込んで、

「ああ、また工事なんだ」

「店長さん、以前もこんな事があったんです?」

「うん、あれはポンちゃんコンちゃんが来てすぐくらい」

「うう……」

「どうしたの、たまおちゃん?」

「回覧版、よく読んでください」

「うん……みんなで温泉に行くんだよね」

「わ、わたし、旅行の積み立てを全然していなくて」

「そうなんだ……俺、行かないから、たまおちゃん行ってきなよ」

 わたしとミコちゃん、店長さんを見つめます。

 店長さん積み立てあるなら、行かないでいいのかな?

 そんなわたし達に気付いたのか、

「ほら、うちの看板娘をほっとけないからね」

「て、店長さん!」

 わたし、改めて店長さんにホレ直しました。

 さすがです。

「ほっといたら、呪いそうなのばっかりだし」

 う……そこは黙っていればいいのに。

 店長さんニコニコしながら、

「うちはみんなで、バーベキューでもしようか」

「バーベキュー!」

「うん、どうせ工事で道路も閉鎖だし、お客も来ないから店も休み」

 バーベキューなんだって、すごい楽しみです。


 バーベキューは川辺でやる事になったの。

「今日は俺が料理当番、ポンちゃん達は休んでていいよ」

 そう言うと、店長さんは早速準備です。

「わたし達も、手伝わなくていいのかな?」

「ポン、おぬし、店長の気遣いをわかっておらんな」

「!」

「せっかく店長が遊んでおってよいと言うのじゃ、遊ぶのじゃ」

「そ、そんなもんですか」

「ポン、おぬし、店長と結婚するつもりではなかったのか?」

「う、うん、そうだけど……なにをいきなり」

「最近店長にアピールしておるのかの?」

「う……」

「では、こーゆー時にアピールせんで、どーする!」

「アピール!」

 目の前でコンちゃん術を発動。

 あっと言う間に水着姿になっちゃうコンちゃん。

「うわ、コンちゃん綺麗~!」

 するとミコちゃんも変身で水着になりました。

 コンちゃんは普段からスケスケ寝巻きで露出してるから見慣れてるけど、ミコちゃんの水着はなんだかドキドキしちゃいます。

「ほれ、ポン、おぬしも水着になるのじゃ」

 コンちゃんが指を鳴らすと、わたしも水着に変身です。

 うーん、コンちゃんやミコちゃんはビキニなのに、わたしはスクミズです。

 なんだかすごく惨めな気分。

 ここはコンちゃんに抗議しましょう。

「なんでわたしはコレなんですか!」

「え?」

「スクール水着じゃないですか! セクシーじゃなーい!」

 二人のわたしを見る目が凍ってます。

「な、なに、その目!」

 珍しくミコちゃんが説明してくれます。

「ポンちゃん、ポンちゃんはエロポンなんですよね?」

 その「エロポン」はやめてほしい。

「ちゃんとエッチな本、読んできたんですか?」

「え?」

「その水着は伝説のアイテムなんですよ!」

「え!」

「私やコンちゃんじゃ、それ、着れないでしょ!」

「え……そうなの?」

「スクミズは年齢制限があるんです!」

「そ、そうなんだ……」

「さ、店長さんにアタックしてっ!」

 めずらしくミコちゃん熱く語ります。

 でも、コンちゃんの言葉より、信じられるかな。

 ともかく店長さんのところに行きましょう。

「店長さ~ん!」

「あ、ポンちゃん、どうしたの?」

「これこれ!」

 わたし、思い出しました。

 スクミズのおすましポーズで勝負です。

 あ、店長さんニコニコして、

「ポンちゃん、似合ってるよ」

「きゃー!」

 もう、耳まで真っ赤です。

「て、店長さん、こっぱずかしいっ!」

「ふふふ」

「わたしになにか出来ないですか!」

「そうだね……せっかく水着だし、魚とか捕れる?」

「はーい!」

 わたしが行こうとしたら、そこにたまおちゃん登場です。

「あれ、たまおちゃん、温泉旅行に行ったのでは?」

「うう……寝過ごしちゃいました」

「な、なんと……」

「神社の池を掃除してたら……疲れちゃってモウ」

「ドジ~」

「わたしも仲間に入れてください」

 たまおちゃんその場に体操座りして眠り込んじゃいました。

 店長さんそんなたまおちゃんにバスタオルをかけてやりながら、

「そうそう、交番のシロちゃんも後で来るから、ポンちゃん頑張ってね」

「はい、まかせてっ!」

「この川、誰も魚捕らないから、山女の大きいのがいるよ」

「大きいの、捕ります!」

「俺が子供の頃は、ヌシ伝説とかあったんだよ」

「じゃ、ヌシも狩ってきます!」

 わたし、川に飛び込みます。

 店長さんに水着を褒められたから、今は無敵なんです。


 川の中、コンちゃんやミコちゃんも泳いでいます。

 二人の泳いでいるの、すごく綺麗。

 わたしじゃかなわない……なら、せめて獲物です。

 でも、山女は泳ぐのが速くて、わたしに捕まえられるか……不安になってきました。

 ともかく山女を追って深いところまで行きましょう。

 あ、コンちゃんが来ました。

『ポン、おぬし魚を捕まえられるかの?』

『店長さんが綺麗って言ってくれたから、今なら出来ます』

『店長は「似合ってる」と言うただけじゃ』

『む~』

 水の中でも、コンちゃんの術で会話できるんだよ。

 コンちゃん嫌な事言います。

 そう、よく考えたら「似合ってる」だった。

 でも、わたしが魚を捕ってくるのを、店長さんは待ってます。

 ちょうどいい感じで、底の岩陰で山女、おとなしくなりました。

 今がチャーンス!

 わたし、全力で急速潜航。

『え!』

 わたしとコンちゃん同時です。

 わたし達の前に巨大白ナマズ登場。

 あ、あれはまさに伝説のヌシでしょう。

『ポン、ヌシじゃ、狩るのであろうっ!』

『コンちゃん、あれ、わたしよりでっかいっ!』

 あ、ヌシがこっち見てます。

 きゃー! こっちに来ました!

 わたし反転百八十度、急速浮上。

『カプ!』

 軽~い擬音。

 わたしのしっぽに食いついてます。

『きゃーっ!』

 目の前にあったコンちゃんのしっぽ、つかんじゃいます。

『どわ、なにをするのじゃ、ポンっ!』

『コンちゃん助けてっ!』

『ヌシを狩らぬかっ!』

『いいから助けてーっ!』

 コンちゃんに引っ張られて、とりあえず岸に到着。

 ここまで来れば大丈夫……って思ったら、まだしっぽに食いついてます。

「きゃー!」

 ミコちゃんに店長さん、たまおちゃんもやって来ました。

 みんな、ヌシにびっくりしてるよ。

「助けてーっ!」

 まず、わたしが見るのはコンちゃん。

「しっぽが痛くて嫌」

 ああ、さっきわたしが引っ張っちゃったから……

 ミコちゃんを見ましょう、ゴットアローを期待。

「私、こーゆーのはちょっと……」

 肝心な時に役に立ちません……

 たまおちゃんのお祓い棒アタックをぜひっ!

「眠くて力が出ません」

 ダメ巫女でした……

 店長さん来てくれました。

 白ナマズを引っ張ります。

 でも、わたしのしっぽも引っ張られます。

「て、店長さん痛いです!」

「どうしたらいいんだ……」

 わたしと店長さん、ヌシを見ます。

「モグモグ」

 うわ、のんきな感じです。

 でも、わたしのしっぽ食われてます。

「やめてーっ!」

「パクパク」

 ああ、もう、わたしのお尻のところまで来ています。

「わ、わたし食われちゃいます!」

 コンちゃんがニコニコしながら、

「よかったのう、ポン」

「コ、コンちゃんなにをっ!」

「しっぽを食われたら、人間になれるではないか」

「そ、そんなの嫌です、助けてください」

「嫌じゃ」

「わ、わたし先輩なんですよ!」

「おぬしが死ねば、わらわが一番じゃ」

 くっ!

 もしも生還したらコンちゃんのいなり寿し食べてやるんだから!

 あ、でもでも、コンちゃんもミコちゃんも、ヌシを引っ張ってくれます。

 でも、ヌシはぬぼーっとした顔のまま、わたしのしっぽを放しません。

 今度はポカポカ叩くけど、ヌシは顔色一つ変えないの。

 ミコちゃんのゴッド系の攻撃は全然効かないみたい……

 コンちゃんが攻撃しようとしたら、逃げ始めましたよ……

 でも、それってわたしも引っ張られて水の中です。

「わーん、おぼれちゃうよ!」

「ムグムグ」

「もう食べないでー!」

 そこにシロちゃん登場。

「遅くなりました……なにをやっておられますか!」

「し、シロちゃん助けてっ!」

「こ、これは?」

 シロちゃん、水の中のヌシを見てびっくりしてます。

「なななナマズがわたしのしっぽをっ!」

「そうですか」

「シロちゃん、わたし、恩返し要求しますっ!」

「え、本官にどうしろと!」

「ヌシをやっつけてーっ!」

「では、ヌシを水から上げてください」

「はい!」

 わたし、全力でヌシを引きずり出します。

 でも、ヌシはちょっとくらい水から出てもへっちゃらみたい。

「タイホー!」

 シロちゃん「タイホ」って言いながらいつも銃を抜きます。

「タイホ」イコール「射殺」のような気が……

 容赦なく発射するシロちゃん。

 ヌシの体にペイント弾がはじけます。

 あ、ヌシがわたしのしっぽを放しました。

 川に逃げて……シロちゃんも後を追ってダイブ。

 制服の下にちゃっかり水着を着てたみたい。

「待てーっ!」

「ウワーン」

 ヌシ、泣きながら逃げていきます。

 シロちゃんヌシを捕まえましたよ。

 あ、噛み付きまくりです。

 ヌシを引っ張って戻ってきました。

「ヌシの身柄を確保!」

 もう、見事というか野生な戦いっぷりに拍手喝采。

「焼いて食うであります」

 みんなでヌシを見ます。

 そんなヌシが涙をぽろぽろこぼしながら、

「ゴメンナサイ」

 なんだか人の言葉をしゃべると食べにくいです。

 店長さんが、

「っても、ここは子供も遊びに来るし……これじゃあぶなくて……」

「モウシマセン」

 たまおちゃんが、

「神社の池があるから、そこに移しましょう」

「そうだね、あそこなら子供も水遊びしないし」


 なんだかバーベキューどころじゃない一日でした。

 ロウソクの灯りのお風呂は、いつもと違った雰囲気です。

「コンちゃん全然役立たず~」

「あんなのぺーっとしたのは苦手じゃ」

「そ、それはわかるかも」

 ミコちゃんが体を洗いながら、

「でも、ヌシを殺さなくてよかったですね」

「わたし、食われかけたんだよ!」

 しっぽにはバンソウコウが×印みたいに貼ってあります。

「白ナマズは美肌にしてくれるそうです……お参りに行ったらご利益あるかも」

「美肌……むー!」

 わたし、自分の体を確かめながら、

「ね、それって胸、大きくなるかな?」


 店長さんが風邪をひいちゃいました。

 む~、家にお薬なかったです。

 そんな時はどーやって治すかというと…

 汗を出すとか、葱でしょ葱っ!

 ふふふ、わたし、店長さんのお布団にスパイ大作戦で~す。


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