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第8話;悪戯な少女は何を企むのか

どうもです。



九月になったというのに一向に涼しくなりません。日中は夏場並みに暑いです。


………もう死にそうです




「ったくお前ら、悪ふざけも大概にしろよ」


セリスの怪し気な薬が効いてきているのか、遼牙は自分で体を起こすことができる程に回復していた。


「いや、遼牙があまりにも可愛くてね。つい」


「すいません」


さっきまで、我を忘れて暴走していた二人も今はすっかり正気に戻り、遼牙の説教を受けていた。


「全く、お前ら仮にも相手は怪我人なんだぞ。それを―」


 ガラガラッ


「おっもう元気そうだな」


「やっぱすごいわね。もう効果が出始めてるなんて」


遼牙の説教の途中で入ってきたのは、どっかに行ってしまった泰月とセリスの二人だった。


「二人ともどこ行ってたんですか?」


「ちょっと屋上でお話をね」


「そういうことだ。ところで洸太はどこ行った?」


泰月が病室内をキョロキョロと見わたし、金髪不良男を探す。


「さっき俺を置いて逃げていきましたけど、多分そのうち戻ってくると思いますよ」


「逃げた?……まぁあいつ、たまに消えることあるからな」


泰月は深く溜め息をつきながら、遼牙のベットの端に座る。


「そういえば昨日も仕事前からどっか行ってましたね」


「探しに行きましょうか?」


冷たく硬い床に正座させられていたシャイナが、少し控えめに手を上げる。


「あ!シャイナ自分だけ逃げようなんてずるい!私も行く!」


それに便乗して瀬奈も立ち上がり手を上げる。


「探す必要はないよ。いつも知らぬ間に帰ってきてるから」


が、見事に脱出失敗。


「逃げようたって無駄だぜ」


遼牙はそう言って、ニヤリと笑いながらベットから降りる。


「もう動けるな……ん?なんか目線がかなり低いんだが―って、身長低っ!なにこれ!?」


緑色の病院服を揺らしながら自分の身体を見渡す遼牙は、その幼い顔つきにぴったりあう

大きさになっていた。


「……シャイナより小さい」


「遼牙くんとっても可愛いです」


「やばっ……超可愛いんだけど……」


「これどういうことなんっすか!?」


「知らん。俺に聞くな。それよりもさっさと説明しちまえ」


泰月は自分の隣にいるセリスに声をかける


「はいはい、そんなに急かさないでよ」


「説明って?」


「遼牙君の能力の」


遼牙の問いにセリスはバックを漁りながら答える


「え?分かるんですか?」


「ええ、私の能力はそういうものだからね」


セリスはバックの中から分厚いファイルを取り出し、パラパラとページをめくる


「あ、あった。遼牙君の能力は反転能力リバースワークスっていう能力だと思う」


「反転能力?なんだそりゃ?」


「詳しくは分かんないけど、事象や概念とかを反転させる能力みたい。遼牙君の性別が女になっちゃったのは、性別を反転させたからだと思うよ」


セリスは遼牙の頭を嬉しそうに撫でながら言う。


「ちょっ!止めろ!この歳になって頭撫でらたくねぇよ!」


遼牙は照れているのか、顔を赤くし必死に抗議する。


「はぅ~遼牙君可愛すぎですよ」


「ねぇねぇ遼牙。一回だけでいいからぎゅって抱きしめ」


「近づくな変態!」


「ぎゃっ!」


怪しい笑みを浮かべて迫ってくる瀬奈に、恐ろしいスピードで放った飛び後ろ回し蹴りを華麗に顎に決め意識を刈り取る。


「随分と調子良さそうだな。」


泰月はベットに座ったまま呑気に声をかける。


「ええ。何か妙に身体が軽いんですよ。まぁ身体が縮んだからだと思いますけど」


爆弾エクスプロージョンは使えるか?」


遼牙は宗志の質問を答えず、ベットの横の棚の上にある空の花瓶を手に取り、窓の外に投げ捨てる。


 ドォゴーン!!


綺麗な放物線を描いて落下していく花瓶は、地面に落下する前に大きな爆発音と共に木端微塵になった。


「使えます」


「………遼牙君……一応ここ病院なんだけど」


いきなりの遼牙の行動にセリスが苦笑いする。


「あ!反転能力っていうことなら、いつでも男に戻れるってことですよね!」


遼牙が思い出したように言う。


「まぁそうだな」


「駄目!折角可愛くなったんだから、戻るなんて絶対に駄目!」


しかし瀬奈がそれに猛反発。


「ふざけんな!こんな小っさい身体じゃ戦い辛いってぇの!」


「私もまだ戻らないほうがいいと思うわ」


セリスも参加。


「そういう全身にかけるような大きな力は、能力に慣れて力のコントロールができるよう

になってからじゃないと危険だわ。ただでさえ力の消費の激しい能力のようだし」


「むぅ」


セリスにもっともな事を言われ、遼牙は思わず口籠ってしまう。


「ということは、遼牙は暫くこのままって事ですか!?」


「少なくとも能力まともに使えるようになるまでね」


「やったぁ!!」


セリスの言葉に子供のように喜ぶ瀬奈


「なんで喜んでるんだ?」


「昨日も言ったでしょ。子供が好きだって」


「はぁ!?俺は子供じゃねえよ!」


「いいや。今は可愛い子供だよ。まぁ中身が遼牙なのが少し残念だけどね」


「なに失礼なことさらっと言ってんだよ!」


「あ、ごめん訂正する。少しじゃなくてかなり残念」


「ふざけんな!」


 ガラガラッ


「随分賑やかだな。なんかあったのか?」


少し乱暴に扉を開いて入ってきたのは金髪に迷彩柄のバンダナがトレードマークの洸太だった。


「いや、特に何も。それよりもお前はどこでなにしていたんだ?」


洸太は泰月の問いを聞きながしながらスタスタと窓際に歩いていき、開いている窓の縁に

腰かける。


「恐ろしい二人に脅されて逃げていったら迷っちまってな」


ハッハッハッと豪快に笑い声をあげる洸太


「ったく……まぁいい。瀬奈、洸太、シャイナよく聞け。」


いつの間にか金色の眼になっていた泰月が真剣な口調に変わる。その瞬間、病室の空気が戦場の重々しいものになる。


「なんでしょう。」


「なにかあったんですか?」


「敵か?」


瀬奈も洸太もシャイナもさっきまでの普段の顔から、仕事の顔に切り変わる。


「ああ、今のところ動く気配はなく、こっちを監視しているようだ。下手に身構える必要

はないが、一応いつ来ても良いように準備はしておけ」


「「はい(うぃっす)」」


洸太はポケットに手を入れて銀色のダーツの矢を取り出し、瀬奈は手首を回し始め、シャイナは小さな手帳を開き、各々準備を整える。


「泰月さん、俺の着替えと武器はどこですか?」


名前を呼ばれなかった遼牙はその外見からは全く想像できない程、強く、鋭い眼をしていた。


「遼牙、お前が準備する必要はない。」


「っ……分かってます。俺が下手に動けば向こうを刺激するってことぐらい」


「ならおとなしくして」


「守られる立場じゃ駄目なんですよ」


泰月の言葉を遮り呟くように、訴えかけるように遼牙は言う。


「………ったく、どうしてうちの奴等はこうも頑固なんだよ」


泰月は頭を掻きながら溜め息をつく。


「ちょっと待ってろ。医師と話してくる」


「本当ですか!?」


「おとなしく待ってろよ」


「はい!!」








暫くしてから泰月が医師と一緒に戻ってきた。医師は最初、重体患者であった遼牙が起きて歩きまわっている姿を見て、信じられないとでも言いたげな顔をしていたが、すぐに平静を取り戻し遼牙の診察と検査をするために遼牙を連れて病室を出ていった。


「診察と検査で問題がなければ退院できるらしい」


「それなら今日中に退院だな」


洸太は腕を組みながら呑気に告げる。


「おそらく………いや、確実に退院するだろうな」


「それにしても遼牙は相変わらずですね」


泰月と瀬奈も溜め息混じりに言う


「泰月さん、セリスさん、遼牙君は本当に元に戻るんでしょうか?」


椅子に座っているシャイナが俯きながら二人に静かに尋ねる


「ええ、今はまだ力のコントロールが出来てないから無理だと思うけど。」


「そうじゃなくて………なんて言うんでしょう。うまくは言えないんですけど、今の遼牙は遼牙君じゃないような気がするんです。その性別とかじゃなくて、その……」


シャイナ自身もうまく言葉の整理できていないようで、最後の方は口籠るような言い方になっていた


「違和感を覚えるのは仕方ないだろ。容姿も大分変わっちまったし。でもじきに慣れるだろ」


泰月は呑気に答える


「ですよね!すいません、なんか変なこと言っちゃって」


「シャイナは愛しの遼牙が本当に元に戻るのか心配なんだね」


「ちょっと瀬奈ちゃん!?何言ってるの!!」


「シャイナちゃん、安心しなさい」


セリスがシャイナの肩に手を置き、優しく微笑む


「愛に性別は関係ないわ」


セリスは微笑んだままの顔で優しく告げる


「ええっ!!遼牙君本当に戻りますよね!?」


「んー正直、反転能力について本当によく分からないのよね」


「そうなんですか」


その言葉を聞いたシャイナは大きく肩を落とした


「まぁ仕方ないさ。今あるだけの能力でも、大体全体の半分程しか分かっていないらしいからな」


壁に寄り掛かって腕を組んでいる泰月が、窓の外を眺めながら独り言のように言う


「へぇ、それだけしか分かってないんですか」


「ああ。他の都市じゃ、能力を戸籍と一緒に登録しているから、ある程度は把握出来るけど、判別不能な能力とかもあるし、エスポワールの南区みたいに戸籍登録自体が強制じゃないところがあるからな」


泰月はそう言って扉の方に歩きだす


「どこ行くんだ?」


「外。ちょっと一服してくる」


洸太の問いに振り返らず手を上げ答える


ガラガラッ


その後、泰月が出ていってから数分後、遼牙とさっき見たよりも何故か少しやつれた医師と一緒に病室に帰ってきた。そして


「何の異常もないそうなので、もう退院していいそうです」


遼牙は少し嬉しそうにそう告げた


「本当に退院しやがった……」


「遼牙……あんた一体何したの?」


瀬奈がジト目で遼牙を見る


「いや、何もしてないぞ」


「嘘だ!あの医者のおじさんの様子絶対に変でしょ!」


そう言って、扉付近に突っ立ってる、さっき見たときよりも確実に5、6歳老けて見える医師を指さす。


「そんなことないですよねぇ」


遼牙は医者のおじさんに同意を求めるため振り返ると、「ひっ!」と小さな悲鳴を上げた


「はっはい、私は何もされていません!」


医者のおじさんの台詞は最後の方は声が裏返っていた


「「「………。」」」


「ほら、本人もそう言ってるじゃん」


遼牙はボフッと音を立ててベットに腰かける


「明らか脅されるじゃねえかよ!!」


「遼牙君、一体何したんですか!?」


「ん、ただの話し合いだけど?」


「絶対にただの話し合いじゃないでしょ!!」


「だから、平和的な普通の話し合いしかしてねぇよ。ねえ、そうですよね」


「あ、それじゃあ私はこの辺で」


遼牙の問いに答える前に医者のおじさんは脱兎のごとく素早く逃げ出した


「明らかビビって逃げてんじゃねぇかよ!!」


「違いますよ。あの人はただ仕事熱心だから、こんなところで油売ってられないだけです」


「顔が尋常じゃないほど怯えてたんだけど」


「気のせいだよ。それよりも俺の着替えと武器はどこにあるんだ?」


無理矢理その話題を打ち切る遼牙


「はぁ……もういいや」


「こりゃ時間の無駄だな」


「ですね」


事務所の三人は諦めたように溜め息をつく


「それで俺の着替えは?」


「これじゃない?」


瀬奈がベットの脇にひっそり置かれていたグレーの鞄を掲げ、遼牙に手渡す


「あ、あったあった」


遼牙は瀬奈から受け取った鞄を開き、中から病院に運び込まれる前に着ていた、異様に想い黒の上着とズボンと手袋、赤いTシャツと下着、そして白い紋章の描かれた黒い銃が収まっているホルスターが詰め込まれていて、ベットの下には黒いブーツが置かれていた。服などは病院側洗ってくれたらしく汚れ一つ見つからなかった。


「それじゃあ着替えたいから外行っててくれないか?流石に恥ずかしいんで」


「了解。着替え終わったら呼んでくれ」


そう言って四人は病室を出ていき、最後に残った瀬奈が扉の前で立ち止まり遼牙のほうを振り返る


「なっなんだよ」


「いや、遼牙にひとつ言っておくことがあってね」


瀬奈は真剣な面持ちで遼牙を見据える。それを見て遼牙も対応を変える


「なんだ」


瀬奈はすっと目を閉じる。そして目を開くと同時に口を開く


「女の子になった自分の身体に発情しないよーに」


瀬奈の顔にはさっきまでのような無邪気な笑顔しかなかった


「なっ!しっしねぇよ!」


遼牙が顔を赤くして反論するがそこにはもう瀬奈はいなかった








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