第5話;青年は死の淵に呼びこまれて
どうもです。
私個人はもっと馬鹿っぽく、ギャグ要素テンコ盛りな感じで書きたいんですが、ストーリー上なかなか書けなくて、早く話が進まないかなぁと思う今日この頃
「遼牙!お前!どうして!」
「大丈夫ですか!?遼牙君!」
泰月は冷たい床に出来た真っ赤な血だまりの中心にいる遼牙を抱き起し、シャイナと共に必死に声をかける。
「いや、ただ貴方に死んでもらいたくなかっただけですよ。それに俺は腹に一発食らっただけで死ぬような体じゃないので安心してください。」
いつもと変わらない口調で遼牙が淡々と返し、泰月の肩を借りながら立ち上がる。その口調に安心したのかシャイナは安堵したようにほっと息を吐いた。しかし、それは見た目だけであって遼牙の状態は芳しくなかった。
―やべぇな。とりあえず虚勢張ってみたものの、このままじゃ長期戦は無理だな。それになんか体が熱くなってきたし、あー、ついでに頭も痛てぇな。って、なんで腹撃たれたのに、頭の方が痛てぇんだ?もしかして変な特殊弾的な類か?
「泰月さん、この弾なんですか?」
「細かいことはよく分からんが、能力発現時の発熱と頭痛の症状を何十倍にもして、強制的に発症させる弾らしい」
「……じゃあ、これは普通の汚染の強化版ってわけですか?」
「ああそうだ………全く、この馬鹿野郎め」
「折角助けたのに馬鹿野郎扱いは酷くないっすか?」
遼牙は赤く染まった腹部を押さえながらも、深刻そうな顔をした泰月にいつものような軽い調子で笑いかける
「………死ぬ事は絶対に許さんからな。」
「っ……了解っす。」
遼牙は泰月が感情をはっきりと表に出したのを初めて見て少し驚いたが、すぐに平静を取り戻し、再び泰月に笑いかける。その顔を見た泰月は安心したのか、その場に座り込む。
「大丈夫ですか!?」
「心配するな。俺の方はすでに応急処置はしてある。それにこれは薬の副作用だ。すぐによくなる」
突然座り込んでしまった泰月に狼狽するシャイナだが、当人の事情説明により平静を取り戻す。そんな光景を横目で確認しながら遼牙は思考を巡らす。
―どのくらいの強さなのかは分からねぇが、このまま上がり続けたら数十分程度で余裕で死ねるな。とりあえず、傷口云々の前に、これをなんとかせにゃならんという訳か………
それにしても、あの鉄面皮の泰月さんが感情を表に出すなんてな。しかも戦場で………こりゃ簡単に死ねないな
遼牙は高熱と頭痛で苦しみながらも、苦痛を表に出さず冷静に状況を把握する。その冷静さとは相反して
「ドクターぁぁ!!!貴様ぁ!!!なにをしたかわかっているのか!!!」
先程まで淑やかで、綺麗だった女性は、凄まじい形相で怒り狂っていた。なんとも言えない程の豹変振りだ。
―おいおい、随分おっかねぇな
その大声を聞きつけた、外で待機していたであろう武装隊が小銃を構え中に入ってきて遼牙達に銃口を向けた。
「動くな!―ボス!御無事ですか!?」
全員フルフェイスのメットを被っているため顔は分からないが、陣形の先頭にいた男が声を荒げ彼女の安否を確認する。
―……十二人。……陣形や装備を見る限り訓練を積んできたプロってところか。……ちっ、この怪我でこの数は流石に厳しいな。泰月さんは恐らく体力的に戦闘はもう無理。俺の命もタイムリミット付き………全く、なかなかスリル満点な状況じゃねえか。とりあえず、なんとかしてここを脱出し
「すいませんボス!!あいつが勝手に入ってきて!!」
「言い訳は聞きたくないわ!!」
遼牙は耳をつんざくような怒声により思考をストップさせられる。彼女ただただ感情のままに激昂し続けた。
「言い訳は地獄で言ってなさい!!」
そういうと彼女は男の顔の前で右手を横に振る。
ザシュッ!
「ぎゃああぁぁぁ――……」
それだけで、白衣の男の鼻の下辺りに横一線の赤い線が走り、白衣の男の頭がゴトッと床に転がり、男はその場に力無く倒れる。
―なんだあの女の能力……鎌鼬かなんかか?
「貴様は万死に値するわ!!」
ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!
彼女はすでに絶命している白衣の男の身体を何度も何度も斬り裂く。そしてただの赤い液体をまき散らすだけの肉塊と化したそれを容赦なく踏み潰す。
「ひっ酷い。」
シャイナが口に手を当て、必死に嘔吐を我慢しながらそう零す。
「おい、そこまでやる必要はねえだろ。」
「あるわ!こいつは貴方を殺したのよ!これ以上の罪はないわ!」
彼女は踏み潰していた足を止め、怒りで声を荒げながら叫ぶ。
「勝手に人を殺すな。現に俺はまだ生きている。」
「今はね!だけど、あと三分程で本格的な感染症状が発症するわ!そうなったら貴方は確
実に」
「さっきも言ったろ。勝手に人を殺すなってよ。それに俺はまだ死ねないんだよ」
「っ!!そうよね……遼牙がこの程度で死ぬはず無い……だって……だって遼牙は!」
返り血で赤く汚れた顔の口角が徐々に上がっていき、最終的には狂ったような怪しい笑みを浮かべる
「シャイナ、俺たちとあいつらの間に何か遮蔽物を転送できないか?」
未だ銃口を突き付けられたままの遼牙は、顔を動かさず小声でシャイナだけに話しかける。そして遼牙は話しかけながら上着で死角を作り、自分の足元にナイフを突き刺す
「できます。でもその後どうするんですか?時間を稼ぐにしても私の力じゃ二人同時は無
理ですよ。」
シャイナもそれに応じて小声で遼牙に問いかける
「とりあえずは泰月さんを病院に転送してくれ。」
「遼牙君はどうするんですか?」
「俺は大丈夫だ。なんとかする。」
「駄目です!遼牙君は怪我人なんですよ!?おなか撃たれて、血もいっぱい出て」
「シャイナ、落ちつけ。ただでさえ不利な状況下でこの事が向こう気取られたら、それこ
そ終わりだ」
「……でも」
シャイナが駄々をこねていると、真っ赤な顔で笑っていた女性がこちらを向く
「そうだ、ゴミ掃除を忘れていたわ」
そう言って、息を荒げ座りこんでいる泰月を指さす。
「安心しろ。俺一人だけなら暫くはなんとかなる。だから泰月さん置いた後――に来てくれ。」
「………分かりました。絶対に死なないでくださいよ」
次の瞬間、薄青色の光が一瞬教会内を満たすと、遼牙達との間に巨大な舞台などで使われる幕が出現した。
ドゴォン!
「っ!!猪口才な真似を!!あの小娘、瞬間移動系の発現者だったなんて!!」
重力に従った幕が静かに地面に落下すると、そこには真っ赤な断面をしたコンクリートの塊の先には大きな血だまりと、月明かりの差す巨大な大穴だけしかなかった。
「追うわよ!能力追跡系の発現者はいる!?」
彼女は語気を荒げながら振り返り聞く
「すいません。我々の部隊にはそのような発現者は居りません」
「ちっ、まぁいいわ。最初から転移しなかったところを見ると、三人は同時に転移出来ないと見て間違いないわ。部隊の半分はその残った一人を追い、遼牙だったら確保。他の二人だったら殺して構わないわ。残った半分は転移の子がここに戻ってくるかもしれないから、待機。処置は一緒よ」
「はっ!!」
そう言って部隊の半分と彼女は教会に空いた巨大な穴から出ていく。
「ふぅ……一先ずはなんとかなったな」
今遼牙がいるのは教会の外――ではなく教会の地下室に続く通路である。遼牙はシャイナが転移する前に突き刺したナイフを爆発させ、地下の通路まで続く穴を作ったのだ。そしてそれと同時に、背後の壁にナイフを投擲し爆破させ、偽の逃げ道を作ったのだ。ちなみにこの穴は落ちる前に瓦礫で塞いできた。
「まぁシャイナには言ってあるから大丈夫だろうが……」
熱があがり続けて立っていられなくなった遼牙はその場に倒れ込む
―やっべぇな……体中めちゃめちゃ熱い。これなら目玉焼きぐらい作れそうだな。さて、そろそろ熱と頭痛が本格的にヤバい領域に入る前に、命を張った大勝負といきますか
遼牙は仰向けに倒れながら左手を自分の額の上に乗せる
―泰月さんの言う事が本当なら……
ふぅぅぅ……ドォォン!!
長い息吹の後、静かな通路に爆発音鳴り響くと同時に薄青色の光が瞬く
「遼牙君!!」
スタンっと静かに着地をしたシャイナは慌てて遼牙のもとに駆け寄ると、再び薄青色の光が瞬く




