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第4話;金色の双眸は絶望を映す

サブタイトルは一応とあるアニメをイメージしてつけています



タイトル自体は基本適当ですけど(-_-;)


最初の襲撃の後は静かなもので、銃声も悲鳴も上がらず無事に目的地までついた。目的地であるこの南区聖マリア教会は木々に囲まれた無駄にだだっ広いだけの教会で、来る人も多い訳でもなく、そこにいる人も決して多くない、そんな寂しい教会である。


「随分静かだな。」


「もう遅いですしね。」


トラックの上から降りた遼牙と、荷台の中から出てきたシャイナは教会内の長椅子に座りながら呑気に駄弁っている。


「シャイナの方には襲撃者は来なかったか?」


「はい。遼牙君が上で戦ってくれましたからね」


「まぁ相手が弱かったからな」


「そんなことないですよ、遼牙君が強かったんですよ」


「強くなんかはないさ。ただ戦い慣れているだけ。シャイナだって十分強いさ」


「そんなことないです。私は………ただの臆病者です」


シャイナは俯きながら蚊の鳴くような弱々しい声で返す。


「そんなことないさ。シャイナは十分強いよ。だからもっと自信を持とうぜ」


遼牙はシャイナの綺麗な白髪の頭を優しく撫でる。シャイナはそれを嫌がることなく素直に受ける。


「………はい、ありがとうございます」


俯いていた顔を上げて遼牙の方を向き、頬を赤く染めながら無邪気な笑顔を送る。


「おい遼牙、シャイナ。ちょっと来てくれ」


今まで奥で、この教会の所有者である高齢の神父と話しをしていた泰月が出てきて、二人を呼ぶ。


「はい、今行きます。さ、行こうシャイナ」


遼牙はそう言いシャイナに手を差し伸べる。


「はい!」


シャイナは遼牙の差し伸べた手をとり立ち上がる。


「なにかあったんですか泰月さん?」


「いや、ただ護送してきた荷物を地下室まで運んでほしいと頼まれてしまってな。流石に

御老人に荷を運ばせるわけにはいかんだろ?他の者は皆帰ってしまっていていないという

し、ここに置きっぱなしといわけにもいかん。という訳で遼牙、これ運んどいてくれ」


「へ?なんで俺なんっすか?」


「俺はここまでずっと能力を展開してたから疲れた。だからお前が行け。道は灯りを辿っていけばなんとかなる」


「俺も戦闘しましたが。それに泰月さん、この程度じゃ疲労なんてしないでしょ」


「面倒……いや、日々の疲労が溜まっていてな」


「泰月さん、あんた今面倒だからって言おうとしてただろ」


「気のせいだ。それにお前の体力は俺と違って無尽蔵だから大丈夫」


―駄目だ、こうなった泰月さんに何言っても無駄だ。


「………はぁ、行けばいいでしょ行けば」


「いやー悪いな遼牙。では頼んだぞ」


泰月はわざとらしく頭を掻き、ひと抱え程の鉄のケースを渡す。


「これを地下室に置いてくればいいんですね」


「そうだ」


「御一人では可哀想ではないですかな。なにぶん地下室への道は薄暗く、長いですし」


白い髭を蓄えた神父が泰月にそう告げる。


「じゃあ、私もついて行ってもいいですか?」


遼牙の横にいたシャイナが手を挙げながら泰月に聞く。


「ああ、別に構わないよ」


泰月はそれを優しく笑いながら許可する。


「ありがとうございます!」


シャイナは泰月に深く頭を下げる。


「それじゃシャイナ、行こうか。」


「はい!」








「意外と明るいな。」


「ですね」


遼牙とシャイナは地下室に続く石階段を下っているところである。等間隔に設置されていいるランタンが煌々と燃え、狭い通路を照らしているため、暗いということはない


「………」


「………」


 カツ…カツ…


石階段を踏む音だけが木霊し、静寂がこの空間を支配する。


「あ、あの!」


「どうした?まさかシャイナも視えたのか?」


「えっ?視えたって………っ!確かにここは教会ですけど!……本当ですか?」


「ハハハッ!冗談だよ冗談」


「そういう悪い冗談は止してくださいよ~。本気にしちゃいましたよ」


シャイナが目頭に涙を溜めながら遼牙に抗議する。


「悪い悪い。それで、どうかした?」


「あっ、はい。ただこういう所で静かなのはちょっと嫌なので、遼牙君がよければ何か話

しでもしたいなぁって思いまして」


「成程。ちょうどいい。俺もこの静寂が鬱陶しくなってきたところだしね。それじゃあ話

題はどんなの?悪いけど俺こういうの苦手でさ。シャイナが話題をだしてくれない?」


「じゃあ……差し支えが無いようなら、遼牙君の昔の話がいいです。」


「俺の昔話か……別にいいけど、全然面白くない上に、気分を害すと思うぞ」


「それでも聞きたいんです」


「………分かった」


遼牙は一息ついてから、自分の過去を話始める














 ~数十分前~


「ふむ、遼牙達が帰ってくるまで暇だな」


泰月は教会の長椅子に座り、アタッシュケースを横に置く。


「どうしようかなぁ。」


泰月はコートのポケットからライターと煙草を取り出し火を着けようとする。


「すいませんが教会内は禁煙ですよ」


「ああ、すいません。ちょっと外行ってきます」


「ええ、この辺りは最近物騒な事が多いですので気を付けてくださいね」


「お気遣いありがとうございます」


泰月は煙草とライターを仕舞って神父に礼を言い、長椅子から立ち上がり入口の扉に向か

う。


「あ、銀野さん。ちょっと」


「はい、なんでしょう……か?」


 ブスッ


振り返った泰月の左胸にナイフが深々と刺さり、真っ赤な粘性の液体が噴き出す。


「すいませんねぇ銀野さん。先に言っておきますが、地下室への道とここは殆ど音が通りませんよ。だから助けを呼ブッ!」


「クソが!はぁ……やってくれるうっ……じゃねえかよ」


泰月は神父の顔面を殴り飛ばし悪態をつく。殴られた神父は長椅子に突っ込み、ピクリとも動かなくなる。


―……千里眼、展開。………教会内ゼロ……入口付近に三人………か。武器はアサルト……ご丁寧に消音機付きか。それにC4と手榴弾。暗視ゴーグルまであんのか。まずいな……遼牙達はまだ地下室にすら着いてねえ……さっさと打開策を考えねえと。


泰月はかろうじで心臓は避けたものの、このまま放置しておけば確実に失血死する。それを重々承知している泰月は、刺さったナイフは抜かずそのままにしておき、目を金色のまま体を引きずるように移動する。


―畜生、集中力が散漫だ。敵はまだ突入する気配はねえが、まずは身を隠さねえと。こんな状態じゃ速攻でアウトだ。


「はぁ……はぁ……まさか……この千里眼が囲まれる……とはな」


泰月は自嘲気味に笑いながら、一つの部屋に入る。


「はぁ……とりあえず……時間を稼がねえと。」


大量の汗をかきながら泰月は扉に鍵をかけ、家具を使って簡単なバリケードを作る。


「こんなもんか。うっ……次は怪我だな」


泰月は床に座り、血で赤く汚れてしまった銀のアタッシュケースを開いて使う事なんてないだろうと思っていた、旧友から貰った応急セットを取り出す。


「おいおい、ただの応急セットになんでペニシリンや縫合糸が入ってんだよ」


泰月は応急セットを漁りながら、旧友の意味不明な行動に対してぼやく。


「お、あったあった。これたしか、副作用が半端ないんだよな」


応急セットの中から真っ赤なパッケージの塗り薬のタイプの薬を取り出し開くと、中には粘性の強い緑色の液体が詰まっていた。更に白いガーゼを適当にひとつかみ取り出し、傷口付近に添える


「せぇーのっ!!」


空いてる手の方で刺さったナイフを一気に引き抜きガーゼを押し当てる。そして傷口を押さえながら泰月は服を捲り、緑色の液体をたっぷりと傷口に塗っていく。


「いっぅ!!………ははっ……こんな姿、洸太に見られたら……絶対に笑われるだろうな」


そんなことを言いながら泰月は応急処置を進めていく。


「………まずいな。敵さんが動き出しちまった」


泰月の千里眼に映っていた、入口付近の敵が突入の準備に入っていた。


「とりあえず応急処置……と」


泰月は傷口で固まっている緑色の液体の上から包帯を巻く。


―さて、遼牙達が地下室に着くのは約5、6分ってところか……。帰りの時間を含めるとすると……まだ救援を頼れねえな。ふぅ、生き残るためにちょいと奮闘してみますか。


泰月はアタッシュケースから一丁の拳銃を取り出し、行動をし始める。








「なぁ、あのじいさんからの合図はまだか、正人?」


ドアの前を落ち着きなく歩きまわっている長身の男が、教会の壁に寄り掛かっている男に声をかける。


「まだだ。それにしても少し遅いな。中でなんかあったのか?」


「さっきの報告だと、切り離しには成功したみたいだから、このまま突撃でもいい気がす

るんだが。」


「秀多、そんなに焦るな。もしこれが失敗したら、俺たちはいいが刈谷が降格になっちま

う。」


「……すまん。」


「そういう話は俺がいないところでしてくれ。俺は割と涙脆いんだ。」


刈谷と呼ばれた大柄な男は手ごろな大きさの石の上に座り、照れながら頬をかく。


「よし。正人、秀多、突入準備を開始しろ。三十秒後突入だ。」


「「了解」」


入口付近に待機していた男たちは銃を取り出し、暗視ゴーグルを装着する。そして扉の近くで突入の機会を窺う。


「三……二……一……GO!」


 ドンッ!


刈谷の合図とともに入口の扉が勢いよく蹴り開かれ、銃を構えつつ中に入る。


「おい!じいさんやられてるじゃねえかよ!」


「だな。だが、向こうも手負いのようだ。」


秀多は銃を構え辺りを警戒、正人は倒れた神父のところへ行き状態の確認、刈谷は教会中央の血痕を調べる。


「向こうはあの出鱈目集団だろ?手負いと言っても油断できねえぜ。」


「ああ、だが今回の件では皇帝エンペラーと舞姫はきていない。しかも、向こうの主戦力の狂気の爆弾魔クレイジーボマーが今はいない。」


「報告ではバイトのガキもいねえってあったから、上にいるのは千里眼だけか。」


「千里眼は基本後方支援役だ。ろくな戦力もないだろ。」


三人は今の状況を把握し、次の行動を算出する。


「血痕の行方からして、千里眼はここだな。」


 ガチャガチャ!


秀多がドアノブを回すが扉は開かなかった


「ここの部屋、鍵なかったよな。つーことはバリケードでも組んでんのか?」


「どうせ、向こうはこっちを視てるんだ。最初から強行突破でいくぞ。」


「「了解」」

秀多が手際よくドアにC4を仕掛け、起爆させる。


 ドォン!


一発でバリケードごと扉は破壊され、粉塵が舞い、視界が悪くなっている状態のまま、部屋の中に手榴弾を投げ込む。再び爆音が鳴り響く。


「流石に死んだだろ」


「だな」


「気を抜くな。死体をこの目で確認するまで相手が生きてると思え」


刈谷に注意されつつも二人は警戒したまま、泰月の死体を確認するために中に入る。


「どこだ?」


「こっちにもいないぞ。」


「こっちもだ。」


「全く、酷えことしやがるな。お前たち。」


「「「っ!!」」」


 パァンッ!


一番ドアに近かった正人が右肩から赤い液体を噴き出しながら倒れる。

二人は急いで振り返りドアの方を見るが、そこにいるのは痛みに呻いている正人だけだった。


 パァン!


「がぁ……」


鋭い発砲音と共に正人の頭から血しぶきが舞う


「どこだ!出てきやがれ!」


秀多は銃を構えながら部屋を出て教会の礼拝堂に出る。


「おい!勝手に動くな!もっと冷静になれ!」


完璧に頭に血が上り激情している秀多は、獲物を狩るような目で左右を確認する。


「ばぁか。戦場で冷静さを欠くやつは確実に死ぬんだよ。」


「っ!」


パァンッ!


秀多の頭頂部から真っ赤な噴水が上がり、秀多は力なくその場に倒れる。


パァンッ! 


そうして再び発砲音が響き、唯一の光源であった蛍光灯の根元が破壊され、蛍光灯が堅い床の上に落ちて割れる。


 パリッン!


部屋は暗闇に包まれる。それと同時に刈谷は大きく横に飛び瓦礫に身を隠す


「大人しく投降してくれないか?俺もこれ以上面倒なことはしたくないんだ」


暗闇に響く撤退要請。しかし刈谷はそれを無視し、仲間を殺した奴に対する激しい怒りを必死に押さえ、冷静に思考を巡らす。


―馬鹿め。声を出すことは大まかな位置を相手に教えているのと同義。奴はやはり入口付近か。しかし何故電気を落とした?こちらに暗視スコープがあることぐらい千里眼知で視てるはずだ。まぁいい。とりあえず大まかではなく、完璧に向こうの位置を把握しなければこっちだけ体の良い的だ。俺たちが壊すまで扉からは出られないはず。この部屋には窓はない。じゃあどこから?


そんな疑問を持ちながら入口付近を見渡していると、驚く事に気がついた。


「っ!!」


ちょうどバリケードのあった場所の天井が一部無くなっているという事に。


―くそっ!あそこから撃っていやがったのか!あんなの普通に入ってきたまず気付かねえよ!


刈谷は素早くポーチの中から手榴弾を取り出し、瓦礫から飛び出しその天井の穴に投げ入れる。


 ドォン!


凄まじい音と粉塵を立てながら、部屋の天井が破壊される。


「これでどうだ。」


 ガチャッ


「残念。」


粉塵立ち込める部屋の中で、暗視ゴーグルをかけた泰月が煙草をふかしながら刈谷の後頭部に銃を突きつける。


「なんで生きてるんだよ、お前。あんな狭い所で手榴弾食らったんだ。無事でいるはずがねえ」


「俺は手榴弾真正面から受けてピンピンしてるようなビックリ人間じゃねえよ。端から手榴弾なんか俺は喰らっちゃいねえってだけさ」


「なんだと?」


「たしかにあの二人を撃った時はあそこにいた。だが、いつまでもそこにいた訳じゃねえよ。」


「どういうことだ」


「なに。入口付近で真上から撃たれたら、敵は真上にいると思うだろう。ましてや声も聞

こえたら尚更そう思う。そして全体を警戒しているつもりでも、無意識に入り口付近を重点的に警戒してしまい、他が疎かになる。そうなったら後は簡単。天井を移動して、予め開けておいた奥の穴から出てお前が油断したところを襲うだけだ。」


「蛍光灯を落としたのは着地音を誤魔化すためか、声はどうした?あれは確実にあそこから聞こえていたぞ。」


「なに。高性能の録音機を使えば容易に代用が効く」


「ふっ、完全に俺たちの負けだな」


「お前には聞きたい事がいくつかある。大人しく言えば見逃してやろう。」


「俺を舐めてんのか。そんなことじゃ口は割らねえよ!」


そういって刈谷は振り返り、持っていた銃を泰月に向けて引き金を引こうとする。


 パァンッ!


しかし、その指が引き金を引くことなく、刈谷の手から銃が落ちる。そして、それに倣うように刈谷も力なく床に倒れる。そして三体の死体を背に泰月はその部屋を後にする。








「ってのが、俺の過去の話し。な、なんにも面白くないだろ?」


自嘲混じりに笑いで、遼牙は自分の過去の話を締めくくる


「あの………安易に聞いてすいません」


「いいよいいよ。それにしても随分長いな。こんなところに置いていいのか?」


「どうなんでしょうか?たしかに護送させるぐらいなんですから、それなりに大切な物の

はずだと思いますけど」


―……なんか引っかかるな


「シャイナ、この箱の中身、何だか知ってるか?」


「?いえ、なにも聞いてませんが……それがどうかしましたか?」


「………」


遼牙は持っていた箱を階段の上に置き、少し乱暴に開ける。


「……くそ!やられた!シャイナ!礼拝堂に転移できるか!?」


「え?どういうことですか?」


箱の中身を見てもシャイナは状況を理解できず、焦る遼牙の言葉の意図が分からない。


「上にいる泰月さんが危ない!」


「え?は、はい!分かりました!」


遼牙のあまりの真剣ぶりにシャイナも混乱しつつも従う。


「転移!行きます!」


シャイナの言葉と共に二人の姿が消え、地下通路には無機質な開けっぱなしの金属の破子だけが残った。








「ったく、やってくれるぜ。」


泰月は胸部を押さえながら礼拝堂の長椅子に腰かけ、パーソナルリングを起動させ、遼牙との通信を試みるが……失敗


「まぁ地下だから仕方ねえか」


泰月はパーソナルリングを切る。そしてゆっくり目を閉じ、再び開くと金色の瞳は元の藍色に戻っていた


「こりゃもう千里眼も展開できねえな。」


「そう、それはよかったわね。それじゃあ貴方は、今の現状を把握できていないということよね。」


「っ!!」


泰月は飛び上がるように立ち上がり、左手にアタッシュケース、右手に銃を持ちながら後方に大きく後退する。そこにいたのは長い黒髪の綺麗な女性と丸眼鏡をかけた白衣の男だった。


「あらあら、意外と元気ね。でも無理はよくないわよ。ほら、傷が開いちゃうわ」


突如現れたその女性は泰月の左胸を見てクスクス笑いながら言う。


―ちっ援軍か。完全に見落としてたぜ


「くっ、てめえがこいつらの親玉か」


「ええ、そうよ」


「なにが目的だ」


「んー、私は優しいから特別に教えてあげる。目的は二つ。一つ目は銀野泰月の抹殺。二

つ目は光崎遼牙の捕縛よ」


「つーことは、俺の墓場はここってわけか」


―……一つ目はいくつか思い当たる節があるが、二つ目のはなんだ?遼牙の捕縛?あいつ

を捕縛して向こうにプラスになることがあるのか?っていうか俺よりもあいつの方が抹殺されるようなことやってる気がするんだが………


泰月は絶体絶命の状況下でも頭を回転させ続ける。それと並行して千里眼で見た、うろ覚えの教会内の逃走ルートを割り出し始める。


「ええ、そうなるわね」


「成程、どうせ死ぬ俺に、なにを話したところで問題無いという訳か」


「その通り。死人に口無しってね。さて、そろそろ貴方には死んでもらうわ。ドクター」


その女性がそう呼ぶと、後ろから痩身の白衣を着た男が前にでる。


「はいボス」


「ええ、こいつにあの薬の被験者になってもらおうと思ってね」


「御意。直ちに準備をいたします」


白衣の男は女性の言葉を聞くと、にやりと笑って持っていたバックの中から一丁の銃と一発の緑色の銃弾を取り出した。


「なんだ?それは」


「ん、気になるか。確かに、なんであるのか分からないまま死ぬのは少し可哀想でもある

な。ボス、どうせ死ぬんです。いいですよね」


「ええ、構わないわ。寧ろそれを聞いた時、絶望に染まる顔が楽しみだわ」


女性はクスクス笑いながら、白衣の男に許可を出す。


「君は発現者の能力の正体について知ってるかな?」


「ああ、この能力は数百年前に落ちた隕石から無限生産されている、汚染物質ブレイムコアによる汚染によって生み出されたものだ。それがどうかしたか」


「その通り。汚染され感染した人は高熱と頭痛が発症する。君も経験したよね?」


「ああ」


「この弾は殺生弾という我らの会社が開発した対人兵器。これを撃ちこまれた者は弾丸内部に仕込まれている超高濃度の汚染物質が体の中に侵入し、計算上君が経験した熱と頭痛の約四十二倍の症状が強制的に発症するようにする物だ」


「………」


「そうなるともう分かるよね。君の末路が」


「成程な。それで俺はそれの実験動物モルモットに宛がわれた訳か」


 ガチャッ


白衣の男は泰月に銃口を向け笑う。


「いい被験者になってくれよ」


―………ここまでか。


泰月はそう思い、静かに目を閉じた。


 ガシャァン!!


「痛ってて、シャイナ!しっかりと飛ばしてくれよ!」


「遼牙君が急かすからですよ!」


礼拝堂内に薄青色の光が瞬くと、突如何もなかったはずの虚空から遼牙とシャイナがあらわれ、長椅子に落ちる。その光景を見た二人は呆気にとられ呆けてしまっている。


「光崎……遼牙!」


長髪の女性が口に手を当て、嬉しそうに遼牙の名前を呼ぶ。


「遼牙!シャイナ!お前たちまだ地下室にいるはずじゃ!」


「泰月さん!まだ生きてますか!?」


―……こりゃまだ死ねないね。


「ドクター!早くやりなさい!」


「はっはい!」


我に返った白衣の男が引き金を引こうとする。


「力が……入んねえ」


―畜生、今頃になって副作用かよ!くそっ!……回避が


パァンッ!


引き金は引かれ、弾は腹部に命中した。皮膚を突き破り、肉を抉り、内臓を穿ちながら、弾は体を汚染しながら通過する。突き刺さった部分からは真っ赤な液体が流れでて、床を赤く染め上げていく。泰月は動けなかった。ただ目の前の光景が信じられなくて。


「りょう……が。お前……なんで。」


泰月の目の前には自分の部下である遼牙が、腹部から血を流して立っていた。


「やっぱ、運勢最悪……だな。」


そう言って遼牙は汚れた床に倒れる。



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