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第3話;宵闇の舞台には暗い赤が舞う

大体このぐらいのペースで更新していきたいと思います


遼牙は自然に尚太の店で食い逃げした後、真っ直ぐ事務所に帰った。燃え尽きてしまった書類の件に関しては早々に諦めていた。


「……誰もいねぇよな」


帰宅した事務所には誰も居らず、綺麗な部屋――ある一部を除く――は伽藍としていた。


―洸太さん、もう仕事行ったのか?たしか開始は昼過ぎからだったような気がしたんだが。


「まぁいいか。どうせまた、どっかで喧嘩してるだろうし」


遼牙は戦闘狂バトルジャンキーな上司の事を思うが、すぐに頭の外に追いやる。


―………んー、集合までまだ時間があるな。


「よし、寝るか。」


遼牙は事務所に誰も居ない事を良いことに、接客用のふかふかのソファーを占領し足を投げ寝始める。







遼牙がちょうど事務所で寝始めた頃、その事務所の所有者である銀野泰月は一枚の紙を見ながら賑やかな街路を歩いていた。受けていた依頼はほんの一時間程ですべて片付けてしまったので受けていた依頼ではない、全く別件の用事で街に来ている。


「やはり、平和が一番だな。」


泰月は戦闘狂の洸太や瀬奈とは違い争いは好まない。しかし、泰月は自分がいくら争いというものを気嫌っても、それが無くなるということはないときちんと理解している。だから


―俺は戦い続けなきゃいけない。俺の存在価値を証明するためにも。ずっと願い続けてきた夢を実現するためにも。


「それにしてもここは静かでいいな」


楽しそうに話しながら通り過ぎる人々を横眼で見ながらぼそっと呟く。


「さて、あと回らなきゃいけないとこは…」


泰月は持っていた紙を見ながら一軒の店に入っていく。 


「俺はあいつにとってはプラスになると思うんだがな……。さて、本人がなんというか」


泰月は勝手に決めてしまったことを正当化しつつ、店の中を散策し始める。








結局、あのふかふかソファーのおかげでぐっすりと寝かせてもらった遼牙は集合時間ギリギリに目を覚まし、結果的には数分遅刻していしまい、泰月に叱られた。それに加えて書類を紛失してしまった事で更に叱られた。そして今は集合場所の中央病院の地下駐車場にいる。地下都市の地下駐車場ってどうなの?って思うのだが、その疑問は今はスルー。


「手順はさっき教えたが、遼牙が遅れてきやがったからもう一度確認するぞ。このトラックに積まれた荷物を南区聖マリア教会に護送するのが今回の仕事だ。位置配置は運転席に俺。荷台の中にシャイナ。トラックの上に遼牙。という配置でいく」


「俺トラックの上っすか……」


「もし襲撃を受けた場合、そっちのほうが荷物を気にしないで思いっきりやれるだろ?」


「まぁそうですけど」


―問題ないと言えば問題無いんだけどさぁ……三月の夜はまだ少し肌寒いんだよねぇ


ちなみに、地下都市ワンダーワールドの七つの都市には四季や暦という概念は存在しているが、機械によって制御されている風や気温の違いによって区別されるものにすぎない。


「問題無いなら文句言うな。俺が能力展開して辺りの監視をするから、もし襲撃者が来た

場合はお前がトラックの上で襲撃者の遊撃な。荷台の部分は結構丈夫な素材を使っているらしいからそれなりに派手な事しても問題ないそうだ」


「ういーす……ってそんな襲撃されるような物を運ぶんですか?」


「荷に関しては何も聞いていないが、ただ念入りに警戒するように言われただけだ」


「ふーん。まぁどうでもいいですけどね」


遼牙は自分で聞いたにも関わらず興味なさ気に返す。


「それじゃあ五分後出発する予定だから、それまで各自自分の持ち場に付いて待機してろ」


「「了解」」


遼牙はトラックの上に、シャイナは荷台の中にと、それぞれの持ち場に向かい準備を始める。


「はぁ、そういや午後の運勢良くねぇんだよなぁ」


―頼むから面倒くさいレアスキル持ちの発現者は来ないでほしいな。


そんなマイナス思考な事を考えながら、トラックに寝転がっている内に予定の五分が経ち、遼牙達を乗せたトラックは地下駐車場を出た。









「いやー、暇だな」


遼牙は揺れるトラックの上で寝転がりながら空を見上げ呑気に言う。遼牙達が護衛するトラックが出発してから数十分が経ち、目的地までの距離も半分を切っていた。しかし、予想されていた襲撃はおろか、泰月の展開している千里眼にすら襲撃者らしきものは引っ掛からずにいた。


「空も綺麗だし、敵も来ないし、…あの星座占い思いっきり外れてんじゃんかよ」


 ―――♪


そんな文句を言っていると、遼牙のズボンのポケットに入っている携帯が鳴り出す。遼牙は素早く携帯を取りだして開き、相手を見てみると自分の上司からだった。


「はい、なんでしょう」


『おい遼牙、お仕事忙しいですか?全く大変だね~♪』


電話の向こうの相手―陣内洸太は苛つく笑いを含んだ声で茶化してくる。


―……この人どんだけ子供なんだよ。とりあえず………切るか。


『遼牙?聞いて―』


 ブチッ


―ふぅ、アホの相手は疲れるだけだからな


 ―――♪


洸太の電話を切ってからすぐに再び携帯が鳴る。しかし、今度の相手はまともな方の上司からだった。


「はい、なんでしょう」


『遼牙、このトラックから約二キロ程のところに襲撃者と思われる集団を発見した。数は三十三。格好は全員同じで、黒づくめで奇妙な白い仮面を被っている。武器は刀や銃器、槍に斧など多種多様。身体強化系の発現者がいるのか、ただ単純にお前みたいに身体能力が並みはずれているのか分からんが、奴らはビルを飛び移って移動している。まぁ、恐らく前者だと思うがな』


「身体強化系の能力……まぁ当たりに部類される能力ですね」


『つーわけで、あとニ、三分したら襲撃がくるから準備体操でもしてろ』


「うぃーす」


 ブチッ


遼牙は泰月からの電話の切り、携帯をポケットにしまう


「さぁーて、お仕事といきますか。」


遼牙はポケットから、掌に収まる程の大きさの長方形のケースを取り出し、その中から白い小さな錠剤を一つ取り出し口に放り込む。そしてホルスターからリボルバーを引き抜き銃の安全装置を外す。そして空いている左手を上着の内側に入れ、刃渡り二十センチばかりの一本のナイフを取り出し、腕をだらりと下げる


「来た来た。どうせやるんだったら、ちょっとは歯ごたえのあるやつがいるといいんだがな」


遼牙は言い終わるのと同時に、右手に握られている銃を上に向けて発砲し、前方に飛んでその場を離れる。


「ガッ!?」


その弾はビルの上から飛び降りてきた仮面の集団の一人に突き刺さり貫通する。他は先程まで遼牙がいた辺りに着地すると各々の武器を構える。


―数が10人……さっきの入れて11人か。泰月さんの話だと33って言ってたけど、あとの23人は後続部隊か後方支援ってところか?まぁ一応飲んだし問題はねぇな


遼牙は冷静に状況を確認しながら、目の前の敵の一挙一動をも見逃さないよう警戒する。仮面の男たちは先程の奇襲の失敗が効いているのか、いきなり飛びこんでくるようなことはせずにジリジリと警戒しながら間合いを詰めてきている。


「さぁ……さっさと始めようぜ」


遼牙は銃を構え仮面の男たちに向けて銃を乱射し始める。しかし、当たったのは近くにいた二人だけで、他の者はしっかりと回避、若しくは防御をした。


「そうそう。ちゃんとかわしてくれなきゃ困るよ」


遼牙の乱射を皮切りに、刀と斧を持った二人が普通の人間では考えられないような凄まじい速度で間合いを詰め、遼牙に襲いかかってくる。しかし遼牙はそれを眉一つ動かさず、真上から振り降ろしてくる斧を夜の闇と同化している漆黒のハンドガンの銃身で、横薙ぎに迫る刀を銀色に光るナイフで受け止める。


「馬鹿正直に真正面から来るなんて、相当自分の腕に自信があったのか?」


「っ!!」


自分たちの自信の塊ともいえる攻撃を防がれたことが衝撃的だったらしく、二人の動きが一瞬止まる。


「おい、戦闘中に呆けるとは良い度胸だな」


「っ!」


彼らが気付いた頃にはもう遅かった。刀の男は、刀身の上を滑るようにして突き出されたナイフにより、顔面を縦一文字に斬り裂かれて。斧の男は、遼牙が銃身を傾けたことにより斧の軌道をずらされ、前のめりになったところを横から頭に鉛玉を喰らって、動かなくなる。


「お前ら、しっかり防げよ。」


遼牙はそういうとナイフを逆手に持ちかえて、腕を前に突き出し親指を立てる。


起爆オン


遼牙はまるで何かのスイッチでも押すかのように、親指をナイフの柄つける。


 ドゴォーン!!


「ギャ!!」


「グハッ!!」


「クッ!!」


それと同時に、なにもないはずの床や武器が突如爆発した。


―んー……今ので三人、残りは槍とメイスとレイピアか。


遼牙は残りの四人仮面たちを武器で区別する


「くそっ!!強化を頼む!」


「わかった!」


レイピアはそういい、槍とメイスは言葉通り強化が施す。


「行くぞ!」

掛け声と共に槍とメイスを持った発現者の二人が遼牙の左右に飛び、強化を受けている男が真正面から突っ込みながら渾身の突きを放つ


「ウラァ!!」


「残念、外れだ」


「っ!!これも回避するかよ!!」


男の放ったレイピアの必殺の突きは遼牙の頭の横で空を切った。


「惜しかったな。だが、いい突きだったぞ」


「まずい!!回避を」


遼牙は距離をとろうと足に力を入れたレイピアの男の襟を掴み、白い仮面のど真ん中に銃口を突き付ける。


「お前はここで死んでおけ」


冷淡な感情のない言葉を発し、闇夜に輝く真紅の瞳が男を見据え、引き金を引く


「させっかよ!!」


「やらせん!」


前に発現者の二人が割り込みそれを中断させる。


「ちっ。」


遼牙の頭とリボルバーを持った右手を狙ってきた攻撃を回避するために、已む無くレイピアの男から手を離し、大きく後ろに後退する。


「あっぶねぇ!!死ぬかと思った!!」


「あんまり突っ込み過ぎるなよ。奴はかなり戦い慣れている上に相当強い。」


「しかし妙だな。奴の力はさっきの爆発の能力のはず。なのに何故あの攻撃が避けられる?」


槍を持った男が遼牙に矛先を向けながら言う。


「さて何故でしょう。」


遼牙はニヤリと笑いながら左手で自動式のハンドガンをホルスターから引き抜き、二丁の

銃口を三人に向ける。


 ガンッガンッガンッ!!


「ちっ!弾は全部避けろ!絶対に防ぐな!さっきみたいに爆発させられるぞ!」


レイピアの男は二人にそう言いながら、銃弾を避けつつ遼牙との距離を詰めていく。


「戦法を変えるか」


遼牙がぼそっと呟くと銃声が止む。そしてハンドガンをホルスターに仕舞い、両手を上着の内側に突っ込む。


「チャンス!」


進行の邪魔をしていた銃弾の雨が止んだ瞬間、好機と思ったレイピアとメイスの男が一気

に間合いを詰めてくる。


「まっ待て!」


遼牙の動作をあやしく思った槍の男が二人に静止を掛けるが、左胸を狙って突くレイピアと脳天目掛けて振り降ろしたメイスは止まらなかった。


「残念、判断ミスだ」


 ザシュッ!


「えっ?」


「はっ?」


二人は突然目の前から消えた敵に驚き端的な言葉を零す。


「おやすみ。お二人さん」


二人のすぐ後ろで、血の付いた刃渡り四十センチ程の双剣を持った遼牙がそう告げた瞬間、二人の男の首が体から離れ、重力に引かれトラックの上に落ちる。

 ガンッ

首と一拍遅れで、二人の体が堅いトラックの上に倒れる。


「……嘘だろ」


槍の男は唖然とした表情で、無意識に槍の穂先を遼牙から外す。


「良い判断だ。」


遼牙は剣の柄で槍の男の腹部を殴る。


「かはっ!」


男は殴られた腹部を押さえ地に膝をつく。


「終わりかな」


遼牙は静かに呟く。


「これはいらないな」


そう言って男の槍を取り上げ車外に放り投げ、男の白い仮面を外す。


「さて、いくつか君に聞きたいことがあるんだが、大人しく話してくれないか?」


遼牙は双剣の切っ先を男の眼前につける。


「安心しろ。大人しく話せばこれ以上危害は加えない。まぁ大人しく話せばの話だが。」


三月の寒い風を受けつつ、走行中のトラックの上での尋問が始まった。






 プルルルッ!


トラックの助手席で敵の監視と状況の把握を行っていた銀野泰月の携帯電話が鳴る。相手は先程まで情報収集をしていた部下からだった。


「何が分かった?」


『ええ。まず奴等のことですが、敵は半年程前に解散した「戦場の色彩スタックフリード」っていう荒事専門の企業のメンバーで構成されているそうです』


「なるほど、それなら身体強化系の発現者や装備が納得いくな」


『はい。それで向こうの襲撃の目的なんですが、俺たちが護送中の荷物を奪ってくれば採用すると唆されたからだそうです』


「採用試験ってところか、まぁ俺たちは良いように使われたってわけか」


『いえ、向こうは俺たちが護送していることを知らなかったみたいです』


「そうか。それでそいつらを唆した企業は?」


『この地下都市アンダーワールドの三分の一の製品を生産している大企業。龍紋電機です』


「こりゃまた……」


『泰月さん……この仕事、実はとんでもないものかもしれませんよ。』


「ああ、だが一度引き受けた仕事は最後までやり遂げなきゃいけないからな」


『分かってます。途中で投げようなんて思ってませんよ。それよりも向こうにはまともな戦闘員はいないそうです。ですが、一応千里眼を展開して警戒は続けてください。』


「分かった。また向こうに動きがあったら連絡入れる」


『了解しました。』


 ブチッ


―龍紋電機ねぇ………主に電化製品などの製造から販売までを一挙にやっていて、食品や建設、その他の様々なジャンルに手を出している大企業。しかしそれは表向きの顔で、裏では質量兵器の開発や麻薬の密売、人身売買までやっている腐った奴等。


「まったく、タイミングがいいんだか悪いんだか……」


泰月は怒りと歓喜が織り混ざったようななんとも言えない表情で、金色の瞳を暗闇で光らせる。









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