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第1話;トルマリンの光が輝いて


あの人類の非情とも言える選択から半世紀ほど経った今、俺たちは人類の住めなくなった地上を捨て、地下に逃げ込んだ。その決断までに多大な犠牲を出し、減少した総人口は更に半分程に落ち込んでしまったが、その生き残った者達が科学の力や発現者による能力などを借りて、七つの巨大な地下空間を作り上げ、そこに新たな都市アンダーワールドを築いた。そして今の今まで発展を繰り返し、俺たちはなんの不自由なく暮らしている。まぁ地下都市といっても鬱蒼な空気は全くなく、気温はきちんと管理されているし、上を向けば昼には青い空と暖かい光を降り注ぐ太陽が、夜には光り輝く星々と月が映し出されるなどして、視覚によるサポートもされている。そんな、見た目は地上とさして変わらない科学に包まれた人口の街で人々は生活している。また当時少なかった発現者も数が増え、今では全体の人口の一割弱を占める程になっている。しかし、発現者が多くなっていくのと同時に、その能力を悪用する犯罪者が増えてきてしまっているのは否めない事実だ。俺たちの住む、楽園の都市「エスポワール」は七つある都市の中でも、発現者が最も多い都市である。都市の中心には荘厳な大時計台が設置されていて、その中にはこの都市の行政機関や他の都市への転送装置などが設置されている。そしてその時計台から東西南北を分断するように分厚い合金の壁が延びていて、北区、東区、西区、南区に地域区分がされている。楽園の都市というのは、周りからなにかと異質な目で見られてしまう発現者を救うために付けられた名だと言われているが、実際は発現者であっても、まともな人であるならば他の都市で普通に暮らすことができるし、異質な目で見られることもない。では何故そんな名目を謳っているのかというと、端的に言えば新たな力を得て犯罪に走る輩を隔離するためである。発現者である犯罪者をもし捕まえたとしても、能力を使われてしまえば留置は難しいし、下手したら逃げられてしまう。そんな犯罪者たちを安全に管理するために、上はこのエスポワールの一部を完全な無法地帯にし、危険な発現者を半ば隔離状態にした。そのため、人はこの都市を無法者の街と呼んだ。







「ふぁ~……よく寝た。」


カーテンの隙間から差し込む眩しい朝日を浴びて一人の青年が目を覚まし、気だるそうに体を起こす。程良く鍛えられた少し細めの体駆にきつめの黒い目を輝かせる、青年こと光崎遼牙こうさきりょうがは軽く伸びをして、毎日使っている固いマットのベッドから起き上がる。眠そうな目を擦りながら遼牙の目の前に広がるのはいつ見てもなんの面白みもない、必要最低限の物しか置いていないコンクリートむき出しの冷たい部屋。「寂しい」という枠を軽々と通り越してどこかの牢屋の中を思わせるような部屋だが、遼牙はなぜかこの部屋が気に入っているらしい。頭をガシガシ掻きながらベッドから降りた遼牙は隣の部屋にある洗面台で顔を洗い、ぼさぼさになっている長めの髪を濡らして寝癖を直し、歯を磨く。そして寝巻として使っている灰色のタンクトップと黒のハーフパンツを脱いで、洗面台の横にある小さな籠の中に入れる。そして下着一枚のまま再びさっきの部屋に戻り、ベッドの横に置いてある棚の引き出しから黒いズボンと赤いTシャツを取り出し素早く着る。そしてその上から、ハンガーに掛けてあった怪し気な白い文字の描かれた黒い上着を羽織、愛用のゴツイ手甲付きの黒い指なし手袋と、これまたゴツイ所々に銀色の装飾がされている黒いブーツを履く。そして最後に、飾りっ気の無い黒の髪ゴムを使い髪の毛を後ろで一本にまとめて縛る。


「準備完了っと。」


遼牙は一通り身支度を終えると、上着の中に入れっぱなしだったスライド式の縦十センチ、横三センチ程の真っ黒の携帯を取り出し操作する。全くの余談だが今の現代人の多くは長方形の四角い携帯を持っておらず、代わりに腕輪型の携帯、通称「パーソナルリング」を装着している。これは腕を介して脳からの電気信号を読み取りことができるというもので、空中に自在にディスプレイを映写して表示したり、文字を打つことなどを思うだけでできるなど、様々な機能を持っている。さらに持ち運びが便利という事、ファッションとして着飾るためにも使える、などの理由で支持されている。しかし、遼牙は未だに四角形の携帯で尚且つキーボード式のものを使っているのだが、これは物好きとかそういう訳ではなく、単純に金が無いからだ。


―まぁ使えればどれも同じなんだけどな。


遼牙は慣れた手つきで携帯を操作し、いつも必ずチェックしている星座占いを見る。ちなみに遼牙はしし座だ。


「っしゃ!今回は二位だ!」


―ええっと、『しし座のあなた。今日の運勢は午前中凄まじい程運が良いですが、正午か

ら日の入りまでの間、運気という運気が一気に吹き飛びます。なので、死にたくなかったら午前のうちに用事を全て済ませて、午後は家の中でじっとしていましょう。』………なんか二位なのに微妙じゃね?ってか説明文なんかおかしくね?


遼牙は若干おかしな結果を表示した携帯をポケットにしまい、ドアの横に放置しっぱなしの段ボールの上に無造作に置いてある黒いホルスターを手に取り腰に装着する。ホルスターには直方体の黒い銃身に白い奇怪な紋章が刻まれた回転式リボルバーと、同じ紋章の刻まれた自動式オートマチックのゴツイ二丁の銃が収められている。そして、この部屋には場違いな程綺麗なドアを開いて部屋から出ていく。


「ちわーす泰月さん。今日の仕事はどうっすか?」


「よう。相変わらず早いな遼牙」


部屋から出た先の部屋は、先ほどのコンクリートむき出しの牢屋とは比べ物にならない程きれいな部分の多い(・・)部屋だった。清潔感漂う汚れ一つない白塗りの壁に、ドアの近くに置かれた観葉植物。部屋の後方の棚の上に置かれているコーヒーメーカー。二つの向かい合わせにセットされた長い机。それと合わせるように置いてある四つの椅子。その机の奥には接客用の洒落た紺色のソファーと透明の机。ここまでがきれいな部分。接客用のソファーの奥は……酷い。書類などが大量に散乱している床に、少し大きめで書類が山積みになっている一つの黒塗りの上質な机。なぜその一画だけが片付いていないかというと、その一画の主人が片付けても片付けても散らかすため、すでに諦められたからだ。その散らかった一画の中心に、全体的に線の細い中性的な顔立ちの青年―「銀野相談事務所」の所長、銀野泰月は呑気に革造りの回転式の椅子に腰をかけ、真っ白のマグカップに入ったコーヒーを啜っていた。遼牙はそんな泰月を一瞥すると部屋の隅に設置されているコーヒーメーカーを使って勝手に自分の分を入れ始める。


「まあ部屋が隣ですからね。それより、仕事はあるんですか?」


「まあまあ落ち着け。全員揃うまで少し待ってろ」


遼牙は赤い自分のマグカップにコーヒーを入れて、所長席から見て右側のソファーに近い自分の席に座る。そして周りには泰月以外の所員は居らず、特にすることもないのでコーヒーを飲みながら泰月に話しかける。


「泰月さん」


「ん、なんだ」


「今月こそは貰いますよ。給料。」


「………君にはトイレもシャワールームも完備の部屋を格安で貸しているじゃないか」


「確かにそれは感謝していますが、この一か月間まともに食事を摂ったのが片手の指で数えられるぐらいしかなんですよ。流石にそろそろ倒れますよ」


「文句はあの馬鹿に言え。あいつが無駄に建物を破壊するのが悪いんだ」


泰月はコーヒーを啜りながら呑気に返答する。


「………あの人がまた何かやったんですか?」


「ああ。あの馬鹿、仕事中関係ないビル三棟もぶっ壊しやがった。全く、ちょっとは周りに気を使ってほしいもんだ」


泰月は深く溜め息をつきながら、散らかった机の上にカップを置く。


「ああ、でも安心しろ。今回はなかなか割のいい仕事があるから。」


「……ならいいんですけど。」


遼牙はそう言いながらも、訝しげに泰月を見つめる。なぜこんなにも泰月を疑うのかというと、この調子で四カ月ほど給料を滞納させられているのだ。実質ただ働きである。家賃は泰月の事務所の一部屋を借りているので、仕事さえしていれば問題ないのだが、当然その他の生活費は実費である。


―全く、そろそろ本当に職を変えようかな。


泰月に給料の件で釘を刺していると、遼牙の部屋のドアとは逆側のドアが静かに開かれ、一人の少女が入ってくる。身長は小柄で150センチ前後。服装は薄いピンク基調のフリルのついた服とスカートを穿き、つき出た肌とストンとおろした髪は雪のような白。瞳は宝石のように綺麗な深い青で、真っ白な肌と相まって非常に映えて見える


「おはようございます泰月さん、遼牙さん。相変わらずお二人は早いですね。」


「おはようシャイナ。」


「おはようシャイナ君。あとは、あの馬鹿と瀬奈君だけか。」


シャイナは出勤して直ぐに遼牙の隣の席に着き、鞄の中から書類の束を広げて早くも仕事を始めた。


「………シャイナ、昨日の報告書、書き忘れたの?」


「……はい。昨日の件は忙しい内容だったので……つい寝てしまって。」


シャイナはペンを止めることなく少し俯き加減に返す。ふと横を見ると、泰月も自分のデスクにノートパソコンを広げ仕事に入っている。遼牙は手持ち無沙汰になったので、仕方なくホルスターから二丁のハンドガンを引き抜き、手早く分解して手入れをすることにした。そんなこんなで、時計の短い針が8を半分程過ぎた辺りで、突然乱暴にドアが開かれる。入ってきたのは、片袖の無い前の開いた燕脂色のシャツに灰色のズボンを穿いた、金髪に迷彩柄のバンダナを頭に巻いたガタイの良い男だ。彼の格好も然ることながら、最も目が行くのは恐らくその背中に背負われた物だろう。それは彼の巨体をも上回る程の、先端に刃の付いた巨大なハンマーだ。そんな超重量武器を常に背負っていながらも、辛そうな表情一つしない彼の事を、人はこう呼ぶ


「遅せぇぞ馬鹿」


「筋肉達磨め。人の給料無駄にしやがって遅刻とは良い身分だな、おい」


「遼牙君駄目だよ!銃降ろして!あ、それと洸太さんおはようございます!」


舌打ちをするだけで画面から目を離さない泰月、鋭い目で睨みながらリボルバーを構える遼牙、それを必死で止めるシャイナ。入ってきて早々災難な目に遭った洸太は自業自得としか言えない


「朝からなんか酷くない!?」


洸太はハンマーを降ろし部屋の隅に立てかけて、遼牙の前の席に座る。


「うっせぇ馬鹿。いつも言ってるがさっさときやがれ、クビにするぞ」


泰月は洸太に睨みを飛ばし黙らせる。遼牙もシャイナに諭され渋々銃を降ろし、自分の給料を飛ばしている張本人に対して、幾分かの怒りの意を込めて睨みを利かせるが一応、年上の先輩として挨拶をする。


「おはようございます洸太さん。相変わらずうるさいですね。死んでくれますか?」


「遼牙も俺に酷くない!?一応年上だよ!?しかも副所長だよ!?」


洸太は遼牙の前の席に座り、抗議を始める。


「まあそうですけど、実際、社員は五人しかいないから副所長いらない気がするんですけ

どね。それにぶっちゃけ洸太さん物破壊してるだけな気がするし。」


「してるよ!ちゃんと仕事してるよ!」


「おい遼牙と馬鹿、少し静かにしろ。今から今日の依頼の件について話をするぞ。」


泰月が何枚かの書類の束を持って自分の席から立ち上がる。


「馬鹿って酷いだろ!ってそれより瀬奈がまだ来てないぞ。始めちまっていいのかよ。」


「大丈夫だ。あと三秒で来る。」


泰月が自分の腕時計を見ながらそう言ってからきっかり三秒後にドアが開かれ、藍色の着物を着て、黒い鞘の日本刀を帯刀した黒髪のポニーテールの女性が入ってくる。


「すいません、遅刻しました。」 


「気にするな、今から始めようとしていたところだから。とりあえず席に着いてくれ」


「はい。」


瀬奈は少し急ぎ足で洸太の隣の席に座る。


「なんだよ、俺にはあんな厳しい事言うくせに瀬奈には優しいのかよ。」


洸太が泰月に聞こえないようにボソッと呟く。


「さて諸君。今回はなんと五件もの依頼が入っている。」


「おっ珍しいな。うちにそんなに転がってくるなんて。」


「たしかにそうですね。これで洸太さんが丁寧に仕事をしてくれたなら、今月はちゃんと

給料貰えそうですね。」


「おい遼牙。まるでいつもの俺の仕事が雑みてぇな言いかたじゃねえか。」


「いいえ。洸太さんの仕事は雑ではありませんよ。ただ要らんもん破壊し過ぎなんだよ」


「おいおい、最後の方なんか地が出てたぞ!?」


「気のせいですよ」


「嘘だ!俺は確かに聞いた―」


 ズゴッ!


「ぞ……。」


洸太が文句を言いきる前に、泰月が書類に目をやったままスーツのポケットから取り出したボールペンを凄まじい勢いで洸太に投げ、洸太の前髪数本を刈り取り向かいの壁に突き刺さった。洸太は額から一筋の冷や汗を搔き、頬を引き攣らせる


「喧しい。黙って聞かねえとバラすぞ。」


氷のように冷たい無表情と有無を言わせない迫力の泰月に圧倒された遼牙と洸太は、顔を青くしながら何度も頷く。


「よし。それじゃあ依頼の内容を説明するから、やりたいものがあったら挙手しろ」


そう言って泰月は持っていた書類をめくり、依頼内容を読み上げ始める。この「銀野相談事務所」は受けた依頼を基本なんでもこなす便利屋のようなところであり、仕事と報酬が見合っていれば迷子捜しから要人暗殺まで何でも受け付けている。


「一つ目は東区の佐藤さんからの依頼で、田植えをするので助っ人が欲しいらしい。ちな

みに未経験でも構わないそうだ。あと、金以外に報酬として茶菓子を出してくれるとのことだ。」


「茶菓子……何なのかによるな。」


洸太が顎に手を当てて真面目に考え始める。


「先に言っておくが、色々と申請のめんどくさい洸太と遼牙は除外な」


「なっ!」


「あっそれ、私やりたいです。」


ようやく報告書を書き終えたシャイナが挙手し、泰月から依頼書を受け取る。シャイナが挙手した瞬間に、洸太が何か良いたそうな顔をしているのに遼牙が気付くが、華麗に無視。


「シャイナは田植えやったことあるのか?」


「いえ、やったことはありませんが、なんか楽しそうなので。」


遼牙の問いにシャイナが微笑みながら答える。


「よし。じゃあ次だ。」


泰月が再び書類を読み上げ始める。次の依頼は無くしたペンダントの捜索だったのだが、能力的に泰月が適任という訳で読み上げただけでスル―。ちなみに泰月は上位発現者で能力は感覚霧散スキルディスパージ。泰月を中心に円を描くように自分の視的感覚を広げることができ、更に物体を透視することができる能力。能力使用中は目の色が黒から金色に変化し、有効範囲は直径数十キロにも及ぶらしい。次の依頼は親が仕事の関係で家にいない間、五歳の男の子の世話をするというものだったのだが、瀬奈が速攻で手を挙げ即決定。


「瀬奈って子供好きなの?」


「うん、子供の純粋なところが可愛くてね。」


―瀬奈……お前、同性のみならず、ショタ…


「おい!そういう意味で言ったんじゃないよ!っていうか私は別に百合じゃないし!」


瀬奈は少し顔を赤くしながら立ち上がって遼牙に抗議する


「勝手に人の心読むほうが悪いだろ。」


「うっうるさい!」


そう言って瀬奈はそっぽ向いてしまった。ちなみに瀬奈の能力は読心能力サイコメトリーで、対象とした物体の思考、残留思念を読み取る能力だ。本人曰く思考を読みのは得意なのだが残留思念を読み取る方は苦手らしい。


「おら二人とも、いい加減静かにしろ。話が先に進まん。」


「すいません泰月さん。」


「……すいません。」


「では、残りの二つだが、この二つの依頼は依頼主から受注者のご指名が来ている。」


「へぇ。まぁ、指名が来るような仕事は大抵ろくなもんじゃねえけどな。」


「まず一つ目は俺と遼牙とシャイナの三人を、そして二つ目は遼牙一人をご指名だ。」


「こいつを指名するって事は、本当にろくな仕事じゃねえな。」


洸太はニヤニヤしながら遼牙の方を見ている。


「遼牙、そんな馬鹿放っておいて話を聞け。一つ目の仕事だが、依頼内容は貨物品の護送で、今日の午後5時、東区の中央病院に集合だ。それまでに各自、担当の仕事を片付け、武器の整備をしっかりしておけ。以上。解散だ。」


「ちょっ!泰月さん!俺の依頼についてなんかないんですか?」


「おっと、忘れるところだった。ほれ遼牙、資料だ。」


泰月はそう言うと、机の横に置いてあった銀色のアタッシュケースを開けて漁り始め、分厚いA4サイズの茶封筒を取り出して遼牙に向かって投げた。


「後で目を通しておいてくれ。お前の依頼の詳細が書かれている。」


「………結局、俺の依頼内容ってなんなんですか?」


「依頼内容はとある人物の護衛だが、実際に護衛を開始するのは四月に入ってからだ。」


「四月?それじゃあ、一週間ぐらい先の話じゃないですか。」


「ああ、依頼自体は四月からだが、動き出すのは明後日からだ。だからしっかりと目を通

しておけよ。」


「うぃーす。」


「あと、必要な物については向こうが用意してくれるそうだから、準備はいらんらしい。」


「準備?それって護衛に必要な物ってことですか?それなら俺は、今の装備で十分ですよ。」


「まぁ時期に分かる」


泰月はそう告げると、自分の椅子にかけてある灰色のコートを手に取り、アタッシュケースを持って事務所から出ていってしまう。


「………俺が護衛ねぇ。」


遼牙は受け取った茶封筒を眺めながら、小さな溜め息を一つ着く


「私もそろそろ行きますか。」


さっきまで書類の整理などをしていた瀬奈が立ち上がり装備を整え始める。この事務所は無法地帯の南区にあるため、荒っぽい馬鹿どもが多く、犯罪者や血の気の多い発現者の溜まり場となっている。そんなこの南区を丸腰で彷徨うろつくのは、よっぽど腕に自信があるものか、何も知らないただの馬鹿かのどちらかである。まぁ、後者の方は大抵二三時間後には金目のもの全て盗られ、路地裏に捨てられるか、適当に売り飛ばされるのが落ちだ。


「あ、遼牙。何本かナイフを貸してくれない?流石に、日本刀を帯刀して子守りはマズイ

でしょ。だから携帯に便利なのを二三本貸して。」


「ああいいぞ。」


遼牙はそう言って立ち上がり、上着の内ポケット、ズボンの裾、に隠し持っていた、大小様々のサバイバルナイフを瀬奈に手渡す。


「ありがと。相変わらずいつも携帯してるんだね。」


「まぁ散々厳しく言われてたからな。今じゃ寧ろこれがなきゃ落ち着かないぐらいだ。」


そう言って遼牙は上着の袖に手を入れて二本のナイフを取り出して見せる。


「……一体何本持ち歩いてるの?」


「んー、数えたことないな。でも、まだ十本以上はあるぞ。」


遼牙は手早くナイフを再び袖に仕舞いながら、軽い口調でそう返す


「遼牙、いつもそんなに持ち歩きながらあんなに動いてるの?」


「ああ。でも、慣れればそこまで重く感じないよ。」


「慣れればって……。」


瀬奈が呆れ顔をしながら遼牙を見る。


「まぁとりあえずありがとね。それじゃあ行ってくる。」


「おう、いってらっしゃい。」


遼牙は瀬奈を見送りした後、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干す。


―んー、やっぱりコーヒーはホットの方がいいな。


遼牙はそんなことを思いながら、空になったマグカップを机に置くと、隣の席のシャイナがおずおずと話しかけてくる。


「遼牙さん、最近ずっと気になっていたんですけど、このごろなんか荒っぽい仕事って少なくないですか?平和なのは良いことなんですけど……。今日だって五件も依頼が入っていたのに、そういう仕事一つもなかったじゃないですか。前までは一日に一つ以上はあったのに。」


「ああ、多分この前の大規模の検挙が効いてるんじゃないかな」


「検挙?………何の話ですか?」


「ありゃ?知らない?そん時シャイナいなかったっけ?」


遼牙は一週間程前に受けた依頼のことを思い出す。依頼内容は外部で違法行為をした凶悪な犯罪者の検挙。ちなみにその依頼は元々この事務所の方に直接回ってきた仕事ではなく、他のいくつかの会社や企業が受けていた依頼であったのだが、形勢がすこぶる悪いとのことで助っ人という形で、オフにも関わらず突然入った依頼だった。その上、主戦力である遼牙と洸太は共に戦いの最前線にいたので、誰が居て誰が居なかったのかなんて確認している暇なんか無かったのであった。


「その話ってこの前の、途中参戦したやつのことだろ?」


「はい。」


「たしかそん時、シャイナは学校の宿泊研修だかで居なかったんじゃなかったか?」


「あ、その時ですか」


「あ~。そういえばそんなこと泰月さんが言ってたような気がしますね。洸太さんも、たまには役に立つじゃないですか。」


「遼牙さっきから、俺に対する言葉遣い酷くね!?」


「気のせいですよ。」


洸太の言葉を適当に流す遼牙。


「ええっと。遼牙さん、洸太さんありがとうございます。それでは私もそろそろ時間なので、失礼させていただきます」


シャイナはそう言って立ち上がり、黒いバックを持って、実に礼儀正しく部屋を出ていく。


「洸太さん、貴方は行かなくていいんですか?」


「ああ、俺は午後からだからな。それより暇つぶしにコレやんねぇか?」


洸太はニヤニヤ笑いながらトランプの箱を取り出す。


「いいですよ。なにをやるんですか?」


「あー適当にポーカーとかでよくね?」


「わかりました。負けても知りませんよ。」


そうして始まったポーカーだが、洸太は十戦中一勝もできないままは取れないまま終了。軽く青くなっている洸太が種目を急遽変更し、ブラックジャックや様々な種目で勝負したのだが、結局遼牙の大勝で終了し、洸太が勝てたのは片手の指で数えられる程しかなかった。




どうも咲花木です。


今回は初回(プロローグは除いて)ということでちょっと長めです。


この話以降は、多分もっと短くなると思います。


読みにくい稚拙な文ですが、読者の方々、これからもよろくしお願いします。


出来れば感想やレビューなどをいただけると嬉しいです。

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