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第14話;いい加減な悪魔と真面目な天使と

どうもです




ルービックキューブにはまった今日この頃

「さてと、早速始めますか」


アイザックと別れた遼牙は、適当に昼食を見繕った後、とある場所に来ていた。四人も入れば狭く感じてしまう個室の中には、白いソファーと木の机といす、そして机の上には一台のパソコンが設置されていた。


「しかし、いらん出費だな。これは」


遼牙はそうボヤキながらパソコンを起動させ、メモリーチップを挿入する。今遼牙がいるのはネットカフェの一室。何故、態々こんなところで資料を閲覧しているのかというと、

この前の自爆の一件で、携帯が御臨終なされてしまったからである。遼牙は自分のパソコンなど持ち合わせていない。そのためこうしてネットカフェまで足を運んできたのだ。


「あったあった――って音声ファイル?」


遼牙はメモリー内にあったファイルを見て、引き出しの中からヘッドホンを取り出し、パソコンに繋ぐ


「再生開始っと」


遼牙はヘッドホンを装着してからマウスを操作し、ファイルを開く。数秒後に音声再生プログラムが起動する


『………あ、あっあー。マイクテストマイクテスト、声帯良好、テンションそこそこ、空腹感マックス………あー腹減った、肉食いてぇ肉。おーい――』


 カチッ


遼牙は再生中のファイルに一時停止をかけ、眉間に指を当て大きく溜め息を一つ吐く


―……再生するファイル間違えたか?


遼牙は一度プログラムを閉じ、メモリー内をもう一度探し始める。しかし、先程のファイル以外発見できなかった


「……やっぱこれなのか」


遼牙は再びファイルを開き、先程聞いたところまで早送りして再生し始める


『―い、なんか食い物くれ……え?もう入ってる?………ごっごほん、過酷な試験を勝ち抜いた優秀な者よ。一先ずここまで御苦労であった。しかし、ここより先は更に熾烈を極めるだろうということを、十二分に理解せよ。では、早速だが本題に……と行きたいところだが、この仕事は命の保証はできない上、この先を聞いてしまった時点で途中辞退は不可能になる。覚悟がないならばここで再生を中止しろ。…………では、改めて本題に入ろう。貴君らに務めてもらうのは、露草カンナという女生徒の護衛。護衛期間は彼女が高校を卒業するまでの三年間。具体的な役割などは、貴君らの能力に応じてこちらで決めさせてもらうが、仕事中は状況に応じて臨機応変に対応しろ。必要となる最低限の物はこちらで用意し、試験の次の日には自宅に届くようにしてある。その荷物の中に次の指示が入っている。それに従え。では、期待しているぞ』


最初の残念な部分を聞かなかったら、威厳たっぷりで終われただろう。しかし、終始間抜けなイメージが払拭されることはなかった。


「まぁいいや」


遼牙はヘッドホンを外し、メモリーチップを取り出す。そしてポケットからUSBメモリを取り出し、パソコンに接続する。


「報告書でも書くか」


遼牙は気だるそうにキーボードをたたき始める











銀野相談事務所に二人の男女がいた。一人は椅子にもたれかかり、左手を天上に取り付けられた蛍光灯に翳し、もう一人は窓の外を眺めていた。


「ねぇ泰月」


瀬奈は手を翳したまま、外を見ている泰月に声をかける


「ん、なんだ?」


泰月は椅子をくるりと回転させ瀬奈のほうに向きなおる。そして机の上にあるカップをとり、口につける。


「泰月は視てたんでしょ?」


瀬奈は何を(・・)とは言わなかった。それで伝わると思ったからだ。案の定、泰月は意味を理解し、カップの動きが止まる。


「……ああ」


泰月はカップを机に戻しながら、静かに答える


「泰月はなにか知ってる?」


「悪いが何も知らない。俺も今日初めて知った」


「そう」


瀬奈はそう小さく返し黙り込む。


「………」


「………瀬奈」


泰月は再び窓のほうに視線を移し、瀬奈に声をかける


「なに?」


「心強い御仲間が御帰りだ」


泰月の言葉の数秒後、事務所の扉が開かれた


「ただいま戻りました」


入ってきたのはダボダボの黒い服を着た、小学生くらいの可愛い女の子。ついこの間までキツイ顔した男だったはずの女の子。そして


―そして、私と同じ……


「どうした瀬奈?なんか用か?」


じっと見つめられていた遼牙が不振気に瀬奈に訊ねる


「あ、いや、別に」


そう言い瀬奈は遼牙に背を向け、自分の机に向き直る。遼牙はそんな瀬奈を訝しげに数秒眺めた後、泰月に報告書の入ったUSBメモリを放り投げる。


「今回の報告書です」


「御苦労」


それを受け取った泰月は、すぐにパソコンに繋ぎ確認し始める。遼牙はそのまま自分の机に行き、椅子に腰かける。


「ねぇ遼牙」


手持無沙汰になってしまった遼牙に、正面に座っている瀬奈が話しかける。


「なんだ?」


「昨日の夜、なんか変なこと起きなかった?」


遼牙はこの瀬奈の言いぶりを少々おかしいと感じた。まるで答えを知っているのに、態々質問しているというような――そもそも能力上、瀬奈の質問に答えを返す必要はない。そんな妙な遠慮ともとれる態度と、今朝の慌て様から察した遼牙はさっさと本題に入ろうとする。


「ああ、『D-GAME』とか言う訳わかんねぇゲームに参加させられた。ん?させられたじゃなくて、参加した、か?」


遼牙は軽く首を傾げながら答えを返すと、瀬奈が微妙な顔をして遼牙を見た


「………はぁ、遼牙に気を遣った私が馬鹿だったわ」


そして大げさに頭を抱え、溜め息をつく


「なんか酷でぇ言い様だな……」


「まぁいいわ。さっさと話を進めましょう」


「しかも無視」


「………まず、知っていると思うけど、私も昨日ゲームに参加したわ。クラスは悪魔よ」


そう言って瀬奈は左手の包帯を外す。そこには、掌に真ん中に白いローマ数字で2と書かれた黒い髑髏の刺青が入った瀬奈の手があった。


「それが悪魔の刻印か」


『2ってぇとチェルノボグの奴か』


いきなり出てきたフラウロスが呟く


「チェルノボグ?」


「え!?なんで分かったの!?」


フラウロスの言葉を反芻した遼牙に、瀬奈が驚きの声をあげる


『ああ、俺やラファの声は譲ちゃんにしか聞こえないぜ』


「そうなのか?」


「え?」


二人の会話は1柱の悪魔の介入のせいで、ややこしく拗れていった


「あ~すまん。今話してたのは俺の悪魔だ」


「じゃあ遼牙もクラスは悪魔なんだ」


瀬奈は少しほっとしたように胸をなでおろす。その安堵は近くに味方がいたためか、身近な者が敵ではなかったためか定かではないが、瀬奈の表情が少し柔らかくなった。


「あー、いや―」


 ガンッ!!


「ちぃーす!!今戻ったぜ!!」


遼牙が瀬奈の言葉を訂正しようとした瞬間、壊れるんじゃないかと思う程の勢いで扉を開いた洸太が入ってくる


「おい洸太、もう少し丁寧に入ってこい。壊れるだろ」


「あーすまんすまん」


洸太は笑いながら背中のハンマーを壁に立てかけ、自分の席につく


「んで瀬奈―」


「遼牙!!」


 バンっ!!


遼牙が改めて話をしようとした瞬間、瀬奈が自分の机を思いっきり叩き、大声をあげてそれを遮る


「……どうした?」


軽く引き気味な遼牙が恐る恐る問い掛ける


「遼牙、明日の一時に典玄亭ていげんていでお昼食べいこ!!」


鬼気迫る表情で誘う―もとい脅す瀬奈。ちなみに典玄亭というのは、この事務所からさほど遠くないところにあるラーメン屋のことで、この事務所の面々はよく行く店である。それと遼牙がバイトしている店でもある。


「お、おう」


―そういやバイト先に連絡入れてねぇや。二日ほどサボり扱いになっちまったけど、事情話せばなんとかなるか


「それじゃ!!」


そういい残し瀬奈はダッと事務所を飛び出す。遼牙は瀬奈の急変した態度を不思議がり、泰月は大きな溜め息をつき、洸太は気まずそうに頬を掻いていた


「洸太さん、瀬奈の奴どうしたんですか?なんかあったんですか?」


遼牙は椅子の背もたれにもたれかかりながら洸太に問う 


「さっさぁ?俺も知らねぇよ」


洸太は明らかに狼狽しながらそう言った。


「そうですか」


遼牙は明らかに何かを隠している洸太の口ぶりを、特に追求することはなかった。そして遼牙はそれ以降その話題について触れることはしなかった。








あの後遼牙は、泰月から報告書の合格を貰い、洸太とカードゲームに興じていた。洸太も最初は乗り気ではなかったが、今はふっ切れたようで、ゲームを楽しんでいる。ちなみに泰月は用事があるとのことですでに退社している。


「あーそういや遼牙」


「なんですか?」


所長がいないのをいいことに、来客用のソファーに堂々と陣取り神経衰弱をやる二人は、視線をガラステーブルに並ぶトランプから外さず会話を始める


「シャイナがなんで休んだか知ってるか?」


「いいえ、知りませんが。それがなにか?」


洸太がテーブルの上にあるカードを一枚めくる。そのカードを見て二人は顔をしかめ、記憶を手繰る。


「いやな。こっちに連絡がないから、泰月が能力使って探したんだよ――あっ!逆だった!」


「へぇ、それでどうだったんですか?――御馳走様ですっと」


遼牙は先程洸太が取りこぼしたペアを取り、適当にもう一枚めくる。


「畜生――なんか結局見つからなかったらしい」


「見つからなかった?見慣れた顔探すなら、この都市全部見通せるぐらいの力ぐらいあるでしょ?」


遼牙は記憶を手繰りながら返す


「ああ、つまりこの都市にはいないってことだな」


「まぁ外出ぐらいするでしょ」


「まぁな。一応知ってるかどうかきいてみただけだ」


「ふーん」


遼牙は左程興味なさげに返し、カードをめくる。その後も他愛も無い雑談をしながらゲームは進んでいった。







二人のカードゲームは、夢中になり過ぎて五時ぐらいまで続いた。そして時間も時間なのでそのまま二人で夕飯を食べに行き、その場で解散となった。


「ふぅ。おそらくこれは一生慣れないな」


遼牙は濡れた髪の毛をタオルでガシガシふきながら、疲れたようにぼやく。洸太と別れた遼牙はそのまま事務所に帰宅し、面倒なことをさっさと終わらせるためにも、早々にシャワーを浴びたのだ。


「全く。なんとかならないのか?」


そんな一人言を言いながら、硬いマットレスのベッドに腰かける

 

『結論から言いますと、なんとかなります』


「……昼の時もそうだが、唐突に話に入らないでくれるか?」


一人言に割り込んできたラファエルに軽く注意を促す


『すいません。以後気をつけるように心がけます』


「んで、なんとかなるってのはどういうことだ?」


『はい。私たちの能力は三段階ありまして、二段階目までいけばなんとかなります。』


「は?どういうこと?もっと詳しく教えて」


ラファエルは要点しか言わない、説明とは言えないような説明をする。遼牙は寝転がりながら聞き返す


『ああ、そういえば能力に関しての説明は省いていましたね。少し長くなりますがよろしいでしょうか?』


「ああ、構わない」


『では。先程も言ったように私たちの能力は段階によって強くなっていきます。段階は契約によって強くなっていき、第一段階は契約前の状態。第二段階は契約完了後。第三段階は契約状態からなんらかの条件を満たした状態となります。第一段階は私の能力における今の貴方のような状態。無意識下でしか能力を発動できない状態のことを指し、第二段階は意識的に能力を発動できる状態のことを指します。つまり今の爆発の能力の状態ですね。そして第三段階は第二段階よりも強力な能力が使用できる状態を指します。』


「ふーん………ってかそもそも契約ってのがよくわかんねぇんだけど」


『フラウロスとの契約時に説明されなかったのですか?』


「ああ、何も聞いてねぇ」


この時、頭の中で小さく溜め息が聞こえた。遼牙は天使も大変だなと密かに思った


『そうですか。契約というのは簡単に言うと、私たちと参加者を繋ぎ、魔力供給するためのパイプを作る工程のことです。この工程を欠くと意識的に私たちから魔力を引き出せなく、能力を発動することができません』


「へぇ、そういう仕組みなんだ。じゃあラファと契約すれば男に戻れるってことか?」


『そういうことです』


「ん?ってかさ。俺もうアイツと契約してるから、魔力ってのは供給されてんだろ?だったら今のまんまでもいいんじゃねぇの?」


『できないことはないんですが、質の違う魔力だと燃費も悪いし、コントロールも難しいのでお勧めはしません』


「じゃあ契約するのがベストか」


『そうですね』


「じゃあラファ、契約しよう」


『無理です』


「は?」


俺:男に戻りたい→ラファ:契約すれば能力が使えるようになる→俺:契約したい→ラファ:無理


「なんで!?まさかお前も瀬奈みたいなこと言うんじゃねぇだろうな!」


体を起こしマットをバンッと叩く


『違います。契約にも条件があるんです』


「条件?アイツの時、なんかした覚えはねぇぞ」


遼牙は首を傾げながら記憶を手繰るが、思い当たる節はなかった。


『契約の条件は強い感情です』


「感情?」


『はい。契約する際――つまりパイプを作る工程で、基盤とする感情が一つ必要となります。ちなみにその感情が大きくなればなるほど、能力の出力が上がっていき、より強く長く能力が使用できるようになります』


「……こんな重要なこと、なんでアイツは言わねぇんだよ」


遼牙は適当過ぎる悪魔に悪態をつく。しかし、当の本人?からの返事はない


『というわけで、今はパイプになり得る感情が無いので貴方と契約することはできません』


「ちぇ、まぁいいや」


―明日にでもどんな感情で契約したか聞いてみよ


遼牙は再び寝転がり布団を被る


「あ、そういや、ラファってナンバーいくつなの?」


『ナンバーですか?』


「ああ、今朝アイツとそんなこと話しててな。」


『はぁ。一応私はナンバー1という数字が与えられています』


「8と1か………共通性ねぇな」


『ナンバーなんてそんなものですよ』


「ふーん」


そこで会話は終わり、遼牙は意識を手放した












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