第12話 22の花火が花開き
どうもです。
随分と久しぶりの投稿な気がします。
『あ、あー……開始三十秒前です……………開始五秒前……四、三、二、一、スタート』
スピーカーからよく通る知らない男の声が響き渡る。その瞬間ビル内に緊張が走る。制限時間は三十分と短い。戦闘を好む者たちはライバルを減らすためにビル内を駆け、苦手な者は己の保身のために身を隠す。そんな物々しい雰囲気が漂うビル内で、最も目立っていると言っても過言ではないのが、この大声をあげている男だ
「あのガキ共!!何処行きやがった!!俺様をコケにしてただで済むと思うなよ!!」
顔の所々に小さな傷があり、短く切り揃えられた青髪を持つこの三十代前半に見える青年―ゴンザレスことカスだ
「あの……もう少し静かにした方が……」
「うるせぇ!!俺様に意見しようってのか!!」
眼鏡をかけたひ弱そうな青年がおずおずとカスを宥めるが、このカスにはまるで効果がない。今彼らがいるのはエントランスから伸びる通路の奥にあった階段を上った先。つまりビルの二階に位置する廊下にいる。彼らは一階の長い回廊にある部屋は一つを除いて全て調べ終わっていたため、この二階に移動してきたのだ。ちなみに調べられなかった一部屋というのは、周りの木製の扉とは違う金属の防音ドアで出来た放送室で、この一部屋だけ鍵が掛けられていて開くことが出来なかった。そのため、カスが「ここが怪しい」と言いドアを破壊しようと試みたが、その途中で先程の放送が流れ、中にいるのが雇い主側の人間ということが分かったため破壊を中断し、そのまま無視してきたのだ。
「畜生!見つけたらぶっ殺してやる!!」
「ひっ!」
カスはガンッと壁を蹴ると、眼鏡の青年は小さく悲鳴をあげ、身を縮込ませる
「あ、おい眼鏡の」
そこでカスは何かに気づいてように眼鏡の青年に話しかける
「は…はい、なんですか?」
「お前発現者か?」
「はい……一応」
「どんな能力だ?」
「え、えっと弱いですけど催眠能力です」
「催眠能力か。捜索には使えそうにねぇな」
「……すいません」
「謝る暇があったら探すの手伝いやがれ」
「はっはい!」
こうしてカスと可哀想な眼鏡の青年は二階の部屋を調べ始めようとした。その時
『あ、あー……これ流れてるよね?』
スピーカーからノイズ混じりの少女の声が響いた
「なんでスピーカーから……?」
カスは信じられないとでも言いたげな顔でスピーカーを見つめる。
『ごほんっ……えー、本日の試験に参加の皆様にご連絡がございます。一度しか言わない
のでしっかりと聞いてください。皆様にはこちらから開始前にプレゼントをお贈りさせていただきました。まぁ不可視のため気にならないと思いますし、条件を守っていただければなんの害もない物ですので気にしないでください』
「おっおい!放送室に行くぞ!!」
カスは急いで階段まで戻っていった
『あー、条件を説明する前にプレゼントの正体をお教えしましょうか。それでは皆様、今
一階の階段を下りている方々にご注目ください』
「クソ!舐めやがって!!」
「あの……今の、僕たちのことじゃないですか?」
『発動まで二秒前……一……』
「ぜってぇに殺してや―」
『零(起爆)』
ドゴォォォン!!
凄まじい爆発音がビル全域に響き渡る
『お聞きになられたでしょうか?これが皆様にお贈りさせていただいたプレゼントです。さて、それでは条件の方を説明させていただきますね。先程も言いましたが一度しか言わないので、粉々になりたくなかったらしっかりと聞いてくださいね』
クスッと可愛らしい笑い声の後、条件が放送された
遼牙が提示した条件は二つ。自分たちのいる一階に近づかないことと、遠距離からの危害を加えないことの二つだ。先程の凄まじい爆発音が効果を見せているのか、この二つの条件を破ろうとするものはいなかった
「一体なにしたんだ?」
「起爆」
白髪の青年の問いに素っ気なく答える
「爆弾かなにか?」
「まぁそんなとこかな」
「ふーん…っていつ仕掛けたの!?そんなの仕掛けてるとこ見てないんだけど!」
「あー、最初の時にちょろっとね」
遼牙は軽い調子で答え、部屋の奥に進んでいく
「それにしても君は一体何者なんだ?」
「んー、普通の女の子だよ」
―まぁ元男だけど
ドアに寄り掛かかっている青年にそう返しながら、部屋の中を物色し始める。今遼牙達がいるのは一階にある放送室だ。この放送室は意外と広く、大の大人が二十人以上余裕で入れそうな程の大きさがある。更にこの放送室には放送器具や延長コードなどに加え、ノート程の大きさのモニターが取り付けられている人一人が入れそうなカプセルや、手榴弾がこれでもかと言うほど詰まった段ボール、何か良く分からない紫色のスライムが入っているビニール袋などが辺りに散らばっていた。このビルの持ち主は一体何をしていたのかが、非常に気になるところだ。
「あ、食い物みっけ」
遼牙はガサゴソ漁っていた段ボールの中から、二つの缶詰を取り出す
「一つどうですか?」
そして一つをドアに寄り掛かっている白髪の青年に差しだす
「ありがと」
青年は青色の缶詰を受け取り、何の缶詰なのか見るためにラベルを見る
「……【新鮮!イタリア風おでん】?」
青年の受け取った缶詰のラベルにはゴシック体の文字で確かにそう書かれていた。
―……イタリア風?
「はい、缶切りないから代わりに使って」
遼牙は上着の中に手を入れ取り出した、一本の小さなナイフを手渡す
「あ、ありがと」
「いいよいいよ、チームだからさ。それにまだナイフならあるし」
そういって遼牙は別のナイフを取り出し、持っていたもう一つの缶詰【厳選!中華風サバミソ】をあけて食べ始める。この缶詰の製作会社は【~!…風】というフレーズが好きな
のだろうか
「あ、そういえばまだ名前聞いてなかったね」
遼牙はナイフを使い、缶の蓋で簡単なスプーン作りながら言う
「ああ、そう言えば。僕の名前はアイザック・シュナイダー。能力は窒素装甲(オフェン
スアーマー)でそれなりに武術の心得もあるから戦闘には自信があるよ」
白髪の青年ことアイザックが、グッと力こぶしを作るように腕を曲げる
「えーっと、俺の名前はこう―っ!!」
「こう?」
―あっぶねぇ!そういや俺死んでいる事になっていたんだ!
遼牙は焦って軽く混乱した頭を必死に回転させる
「ひっ光崎遼子です」
「光崎遼子ちゃんね」
―字殆どそのままじゃねぇかよ!まっまぁ疑われてないようだし、とりあえずこのまま通すしかないか
「能力は爆弾で戦闘は……まぁ、そこそこです」
「爆弾?遼牙さんと同じ能力だ……」
「へ?」
―まさか俺の能力を知ってたのか!?
「ああ、ごめんごめん。僕の命の恩人と能力が同じだから気になっただけだよ」
「命の恩人?」
―はて、俺はこんな白髪の青年助けた記憶がないんだが
遼牙は腕を組みながら記憶を探ってみるが、全く心当たりがなかった
「うん。二年前、僕が地上でエクシオンに襲われた時助けてくれたんだ」
「地上にいたんですか?」
―地上っていうとアイツの家の近くか?ていうか今まで地上でアイツ以外の人間に会ったことねぇぞ
遼牙は「地上で」ということを妙に思いながらも、結局何も思い出せないので、諦めて缶詰をつつき始める
「僕が行っていた道場の免許皆伝試験で、一週間地上で過ごしその間にエクシオンを一体
狩ってこなきゃいけなくてね」
「随分と無茶な免許皆伝試験だね」
遼牙はサバミソを頬張りながら呆れたように言う
「まぁ普通の門下生は受けないんだけどね」
「でしょうね。そんなの受けるなんて命を捨ててるようなものだから」
「御尤もだよ」
アイザックは溜め息をつきながら肩をすくめる。
「……そもそもアイザックはそんなの受けたんだ?」
「受けたんじゃない。受けさせられたんだよ。親父に」
「……随分厳しい親父さんだね」
「全くだよ」
アイザックは再び大きく溜め息をつき、缶詰めに手をつける。そしてイタリア風おでんが意外と美味しかったことは全くの余談である
「さて、そろそろ僕たちも行こう」
缶詰めを食べ終えたアイザックが立ち上がり、部屋のガラクタを絶賛物色中の遼牙に声をかける。そのアイザックの声や表情から若干の焦りの色が窺えた。それもそのはず、ただでさえ三十分と短い時間の内、十分程をこの部屋で無駄に過ごしてしまったのだ。しかし
「どこに?」
遼牙はガラクタ達を漁る手を止めず呑気に聞き返す。
「どこってそりゃこの外さ」
「なんのために?」
「なんのためって、そりゃ敵を減らすために決まってるじゃないか。だから行こう」
「パス1。俺はもっとこのガラクタ共を物色してたい。あ、ちなみにパスは三回までね」
勝手にパスを造った上に非常にどうでもいい理由でパスを行使する遼牙。
「え?もう制限時間の半分ぐらいしかないんだよ?」
予想外の遼牙の言動に動揺し、焦りを見せるアイザック
「まだ半分もある。それに俺たちが出ていかなくても、勝手に潰し合ってくれるから問題ないよ」
「確かにそうだけど、こうして引きこもっているよりも積極的に戦いに参加した方が依頼主に好印象なんじゃないかな」
「………」
「………」
両者の言い分は尤もである。そのため二人とも押し黙り沈黙が流れる。
「はぁ、分かったよ」
沈黙を先に破ったのは遼牙だ。遼牙は持っていた掌サイズの立方体の箱をポケットにしまい、頭を掻きながら立ち上がる。
「確認。俺たちが戦いに参加して敵が減ればいいんだよね?」
「え?あ、うん」
「分かった」
そう言うと遼牙は静かに目を閉じてその場に立ちつくす。
「……えっと、どうしたの?」
「……いや、ただ確認してただけだ。それよりも」
遼牙は再び目を開き、親指を立てた左腕を前に突き出してアイザックに一つ問う
「俺たちが戦いに参加して尚且つ敵が減れば、ここを出る必要は無いってことだよね?」
実に楽しそうに口元を歪めながら




