第11話;試練と試験
どうもです。
最近非常に体調が悪いです。頭痛が酷くて酷くて……(泣)
ゲーム開始宣言から初めての朝。殺し合いが始まったというのにも関わらずいつもと同じ静かな朝だった。まぁ開始宣言から七時間程しか経っていない上に、人数も25人と少ないので当たり前と言えば当たり前なのだが。
「………」
そんな代わり映えのしないいつも通りの朝をいつも通り迎えた遼牙であったのだが、思わぬ問題に直面していた。
「落ち着け俺……落ち着け……」
ヒントはお風呂
「これは俺の身体であって何もやましい事はないんだ……」
簡素な脱衣所の鏡の前で立ちつくし、ブツブツと鏡に映る自分に呼び掛けている少女の姿はまるで、何かにとり憑かれたようであった。
「目を瞑れば平気だ目を瞑れば……」
結局遼牙がシャワーを浴び始めたのは十分後の話だった
「はぁ……非常に疲れた。ん?なんだこれ?」
風呂から速攻で出てぶかぶかのズボンと、昨日買ったばかりの白地のシャツを着て(下着はちゃんと女物のを着けている)ふと鏡を見てみると、左肩に見覚えの無い刺青が刻まれていた
「あー、そういや刻印だかなんだか言ってたな。えーっと俺はたしか―」
『砂時計だぜ譲ちゃん』
「うぉ!急に声出すなよ!びっくりすんだろ!」
遼牙は突如響いた声の主に非難の声をあげる
『わりぃわりぃ。あまりにも暇過ぎてな』
かっはっはっと豪快な笑い声をあげる
「うるせぇよ、笑うのは良いがもうちょいボリューム落とせ。えーっと」
『おっと、そういや名前を言ってなかったな。俺の名前はフラウロス、ナンバーは8で悪魔だ。よろしくな。』
「おう、よろしくなフラウロス」
遼牙は鏡に映る自分に向かってそう言うと、脱衣所を後にする
「おいフラウロス、そういやさっきナンバーがどうのこうの言ってたけど、あれは何だったんだ?」
遼牙は腰に黒いホルスターを巻きながらフラウロスに尋ねる
『あー、簡単に言うとナンバーってのは名前とかと同じようなもんで、それだけでそいつ
を特定出来る情報のことだ』
「へぇー。それって悪魔だけじゃなくて天使にもあるのか?」
『ああ、勿論』
「んじゃ、ラファエルにもあんのか?」
棚に引っ掛けてあった真っ黒の上着に袖を通しながら遼牙が問う
『あー多分あんじゃね?』
「なんだその曖昧な答え。本人に聞けばいいじゃん」
『あいつ今寝てっから無理』
「寝てんのかよ!」
『まぁ夕方には起きるだろうから起きたら聞け』
「わーったよ」
遼牙はいつもよりも長くなった髪を後ろで一本に纏め、ゴツイブーツを穿き、仕事場へと続くドアを開く
「休みぃ?」
遼牙は自分の席に座り頬杖をつきながら愕きの声をあげる。結局遼牙は脱衣所での葛藤のせいで遅刻したのだが事務所には泰月と瀬奈しかいなく、二人について泰月から聞いたところ休みだと聞かされた
「ああ、洸太は用事、シャイナは連絡がないんだ」
「それにしてもシャイナと洸太が休みねぇ……」
遼牙は大きな欠伸を一つしながら、休みの二人のことを考える
―洸太さんはまぁ何度かいなくなったりするからいいとして、あの真面目なシャイナが何
の連絡もなしに休むなんて……。なんかあったのか?
遼牙は自分の隣の空席を見つめる
「あれれ?そんなにシャイナのことが心配なの?」
そんな遼牙を瀬奈がニヤニヤ笑いながらからかう
「ああ、そりゃなんの連絡もなしに休んだら少しは心配にはなるだろ」
「………相変わらず面白くないな。もうちょっと良いリアクションを期待していたんだけど」
「何だよ……リアクションって」
遼牙は大きく肩を落とし目に見えて落胆する瀬奈をジト目で睨む
「だから、「っ!ばっ馬鹿!ちげぇよ!……ただちょっと気になっただけだ……」とか」
瀬奈が恥ずかしがりながら低めの声で遼牙に言う
「……その反応を俺にしろと?」
「うん、ものすごく面白そうなので是非とも」
瀬奈は机から身を乗り出して遼牙に頼み込む
「絶対に嫌だ―って瀬奈、手どうかしたのか?」
遼牙は机に置いてある瀬奈の左手に包帯が巻かれていることに気付いた
「っ!あ、あー何でもない!」
瀬奈は焦りを浮かべ慌てて自分の席に戻ってしまう
―………随分と分かりやすい反応だな、おい
「まぁ何があったか知らんが、誤魔化すならもっと上手くやれ」
「………善処する」
瀬奈はそっぽ向きながらそう返す
「おい遼牙、そろそろ支度しろよ」
相変わらず散かっている所長席で、書類とにらめっこをしていた泰月が遼牙に声をかける。
「あ、もうこんな時間ですか」
遼牙は傷だらけの携帯を開き時間を確認する
「それじゃあ行きますか」
遼牙は携帯を再びポケットに仕舞い椅子から立ち上がる
「あ、そうだ遼牙。これ持ってけ」
泰月はデスクの書類の山から一枚の小さな紙を取り出し、差し出す
「………」
紙を差し出した状態のまま停止する泰月
「………取りに来いと?」
こくっ
無言で頷く
「……はぁ」
動く気ゼロの泰月に大きく溜め息をつきながら、遼牙は散らかった書類を出来るだけ踏まないように泰月の元へ向かった
「……ここか」
遼牙は携帯の地図アプリを起動させながら目の前のビルを見上げる。今遼牙は事務所から徒歩ニ十分程のところにある四階建のビルに来ている。ここが一昨日受諾した依頼の集合場所であるのだが
「こりゃスゲーな……」
ビルの見た目としては所々外装が剥げ、窓ガラスにはひびが入り、壁には蔦が絡みついている、今にも倒壊しそうなザ・廃ビルである。しかしそれはあくまで見た目の話であり、実際にそうであるとは限らない。現にこのビルは全体に防音や耐熱、衝撃吸収などの能力強化が念入りに施されているため、そこらの新設のビルなどとは比べ物にならない程のスペックを誇るのだ。言ってみれば他のビル群とは一線を置く超廃ビル様なのだ。
―スゲーはスゲーけど、ここまでする必要あんのか?まぁいいや、とりあえず中にっと
遼牙はビルの入り口に歩みを向けると、入口には黒服の強面の男が立っていた。そして向こうは遼牙に気づいたらしく声をかけてきた
「お譲ちゃん、迷子かな?でも、ここは危ないから近付いちゃ駄目だよ」
―………なんか切ないな……こうしてただの迷子として扱われるの……
極力怖がらせないように声色を優しくした男の気遣いがなんとも言えなかった
「本日護衛の依頼を受けた銀野相談事務所の者ですが、場所はここで間違いありませんよね?」
遼牙は行きがけに宗志から受け取った紙をポケットから取り出し男に見せる。それを見た男は一瞬呆気にとられていたが、すぐに平静を取り戻し真剣な仕事の顔になった
「申し訳ありませんでした。改めて銀野相談事務所の方ですね」
「はい」
男は左腕のパーソナルリングを操作し始める
「……すいませんが銀野様には光崎様を指定したはずですが、光崎様はどうなさったのでしょか?」
「光崎は所用で来る事が出来なくなってしまったので、代理として私が来ました。依頼主
にはすでに許可をとってあります」
「そうですか。では確認させていただきますので暫くお待ちください」
そういって男はその場で通話を開始。そして五分後
「確認が取れました。それではこれをお受け取りください」
男は懐からローマ数字で四と描かれたトランプ程の大きさのカードを差し出す
「これは?」
「詳しくはお教えすることはできませんが、必要な物ですので無くさずにお持ちください」
「そうですか、ありがとうございます」
遼牙は軽く一礼してカードを上着のポケットに仕舞う。
―ん、もう切れたか。早めに飲み過ぎたかな
遼牙は薬の効果が切れたことを感じ、ポケットからケースを取り出して白い錠剤を一つ口に放り込み、ビルの中に入る。
―……外と中の違い凄いな
外の残念な外装とは打って変って、内装は何処かのホテルのロビーのような立派なものであった。まず目につくのは、大理石でできた広いエントランスを照らす巨大なシャンデリア。そして正面にある石造りの巨大な鳥の彫刻と、その両サイドからアーチ状に伸びている豪奢な階段。視線を横に向けると休憩所のような一画があり、座り心地の良さそうな赤いソファーと観葉植物が設置されている
―ひぃ、ふぅ、みぃ………22人、俺含めて23人………か。
遼牙はエントランスに散らばっている同業者の数を数え、薬の恩恵で得た戦力の情報を分析する
―気のせいか?なんかスゲー視線感じるんだけど。まさかもうバレたか?いや、泰月さんの話だと死んだことになっているし、事務所の奴等も気づかなかったんだからそうそうバレる訳ないし
などと思考を巡らせていると一人の男が叫ぶ
「おいそこの譲ちゃん、ここはガキが来る場所じゃねぇんだよ。さっさとママのとこに帰んな」
ガッハッハッハ
フロアの中央部にいた青髪の二十代前半とみられる男が、下品な笑い声をあげながら歩み寄ってくる。周りで見ている奴等も同感なのか遠巻きで笑っている
―ふむ、成程な。正体がバレたんじゃなくて、単純に今の俺の姿がこの場に相応しくないということか。まぁ理由は分かった………が、気に入らないな……これは
「忠告ありがとうございます。ですが私は貴方みたいに弱くないので心配無用ですよ。寧ろ貴方みたいな雑魚はてめぇの身の心配だけしてればいいんだよ」
シーン
先まで笑い声が木霊していたフロア内が水をかけたように静かになった
―やっべ、地が出た
「おいてめぇ、俺様が誰か知らねえのか?」
青髪の男が額に血管を浮かべさせながら、低いドスのきいた声を出す
「知らねぇよ、てめぇみてぇな雑魚」
「っ!……いいだろう、知らねえってなら教えてやるよ。俺様はゴンザレス=アタッシュ、あの悪名高き殲滅者光崎遼牙を殺った最強の男だ!」
ざわざわ
「おっおい、殲滅者って言ったらあの化け物の」
「裏じゃ専ら死んだって噂だが、まさか本当に」
「あの野郎が殲滅者を殺ったてのが事実なら、相当ヤバいぞ」
ゴンザレスと名乗る男の大々的な告白により、静まったフロアにざわめきが走る。そんな
中遼牙は呆れ顔で溜め息をついていた
―はぁ……俺がこんなにカスに負けるわけねぇだろ。つーかこれなら飲む必要なかったか?
「はいはい、俺――っじゃなくて光崎がこんなカスに負けるわけないだろ」
「ってめぇ!ガキだから手出されねぇと思って調子乗ってんじゃねぇよ!」
とうとう堪忍袋の緒が切れたゴンザレスが遼牙に殴りかかる
パシッ
「女の子に手をあげるなんて最低だね」
しかし、その拳は遼牙に届くことなく突然の闖入者の手によって止められる
「誰だてめぇは!!」
「君みたいな人に名乗る名前はないね」
遼牙が振り返ると高校生ぐらいの白髪の青年が立っていた
「んだと!!」
パンパンッ
ゴンザレスが青年の胸倉を掴んだところで、手を叩く乾いた音がフロアに響く
「今から色々と説明したいと思いますので、お静かにお願いします」
階段の中央にいる強面の男が低い声で告げる
「……ちっ、覚えてろよ」
ゴンザレスアはバツの悪そうな顔をして、捨て台詞と共にどこかに行ってしまう
「大丈夫かい?」
「ん、ああ、全然平気」
―……窒素装甲。さっきいなかった人だな。それに大分強いな
「それは良かった。それより君は一人でここにきたの?」
「ええ、まぁ」
「……悪い事は言わない、君は返った方がいい。ここは危険だ」
「その気遣いはありがたく受け取りますが、正直余計な御世話だ」
遼牙はその青年に殺気の籠った睨みをきかせる
―警戒するに越したことはないな
「っ!!……君は…一体」
「静かにしろって言ってんだろうが!言葉発した奴片っ端から失格にするぞ!」
なかなか静まらないフロアに痺れを切らした男が怒鳴る
シーン
静まり返ったフロアに納得がいったのか、男は満足そうに頷く
―さて、下準備といきますか
遼牙は気配を消し、すっと人混みの中に混じり込む
「それではまず今から行う事について説明させていただきます。ご存じの方もいると思い
ますが、これより行うのはより優れた者を選抜するための試験です。試験内容はこのビル全体を使ってでのサバイバルですが、こちらの事情によりいくつかルールを設けさせていただきます。では、皆さん入口で配布されたカードをご覧ください。そのカードは一から十二までの数字が書かれており、それぞれ二枚ずつ、合計二十四枚あります。そしてそのカードに書かれた数字が同じ者同士でペアを組んでいただきます。ペアとはもう一人の自分、要は運命共同体です。よってペアのどちらかが戦闘不能になった時点で、相方も失格となります。これが一つ目のルールです。そして二つ目は試験中、このビルから出ることを禁じます。出た者は理由問わずに失格としますのでご注意ください。制限時間は三十分。失格の基準としては気絶、死亡、若しくはこちらが戦闘不能と見なされた場合とし、失格になった者はこちらで回収します。他に縛りはありませんので思う存分戦ってください。後、心配な方もいると思いますので一応言っておきますが、このビルには防音や強化が施されているので、多少派手にやっても外にはなんら影響はありません。そのため地形を使っても、能力を使っても、武器を使っても、勿論人を殺しても大いに結構です。それでは五分後に試験を開始しますので、その間にペアの方を探してください。では、ご健闘をお祈りします」
強面の男はニヤリと笑いながらフェードアウトしていき、最終的にその姿を消した
「きっ消えた!」
「っていうかサバイバルってどういうことだよ!!聞いてねぇぞ!!」
「どういうことだよ!!」
会場が怒号と喧騒に包まれる。ある者は慌て、ある者は事前の説明との食い違いに怒鳴り、ある者はか弱そうに見えた少女の心配をした。
「あのことは本当だったのか。君は逃げたほうが―ってあの子はどこだ?」
白髪の青年は隣を見ると、そこにいたはず少女がいなくなっていたことに気付き、辺りを見渡す
「よっ青年。呼んだかい?」
そんな青年の後ろから少女―遼牙が肩を叩く
「っ!っと驚かさないでくれよ」
「ごめんごめん。それで俺を呼んでいたようだけど何か用かい?」
「ああ、これから始まるのはルールの無い殺し合いだ。だから君は早くここから」
「なんだ、そんなことか。今はそんなくだらないことを話している暇は無い。君は何番だ?」
遼牙は有無を言わせない面持ちで青年に問いかける
「っ……4番だよ」
「4か!まさかこんな早く見つかるとはな」
「え?」
戸惑いを露わにしている青年に、ポケットから取り出したカードをつきつける
―今日は運がいいな。探す手間が省けたし、この人と戦わずに済んだ。あ、折角仕掛けたのに無駄になっちまったな
「まっいいか」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない。それよりも周りがもたついている隙にさっさと行こう。」
遼牙は青年の手を引いて階段を駆け上がり、長い回廊に入る
「ねっねぇ!今何処に向かっているの?」
「ん?………拠点?」
ある一室の前で止まり青年の質問に答える。そして重たいドアを開きその部屋に入ってい
く。




