第10話;悲劇が産声をあげ回り始める歯車
どうもです。
諸事情により更新が遅くなってしまいました。本当に申し訳ありません
瀬奈のご機嫌が戻った後、泰月のおすすめの店で昼食をとり再び買い物をしようとしていた矢先、洸太に着信が入り、用事が入ったとのことで洸太が「また戻って来る」と言い残し一時離脱。しかし疑似太陽が沈む頃まで洸太は戻ってくることなく結局四人で買い物は終了した。
「にしても、女物の衣類って高いな」
帰りの車の中で遼牙が、今日買った買い物袋を摘むように持ちあげぼやく。
「まぁ仕方ありませんよ」
シャイナが頬笑みながら諭すように言い、遼牙の頭を優しく撫でる
「シャイナ!それ止めろって言ったろ!」
「あっ、すいません。つい」
慌てて手を引っ込め、はははっと笑って誤魔化すシャイナ。
「全く。まぁ一番めんどくさい二人がいないだけマシか」
遼牙は深く溜め息をつく。ちなみにうるさい二人というのは洸太と瀬奈の事で、洸太はど
っか行ってしまって帰ってきていなく、瀬奈は車の中で爆睡中である。
「今日の瀬奈ちゃん、凄いはしゃいでいましたしね。」
「そういえば……たしかにそうかもな」
シャイナの言葉を聞いた遼牙が顎に手をやりながら、記憶を辿る
「おーい、もうじき着くからそろそろ瀬奈を起こしてやってくれ」
しかし、運転席の泰月の声に思考を中断させられる。
「うぃーす」
遼牙はやる気なさげな返事をし、瀬奈を起こしにかかる。余談だが、なかなか起きない瀬奈に痺れを切らした遼牙が頭を引っ叩いて起こしたところ、思いっきり頬を殴られた。理不尽だろ
瀬奈、シャイナ、遼牙の順で泰月が家まで送り届け解散となった。
「いやー、完全に忘れてたな」
事務所の来客用のソファーに座りながら茶封筒を掲げる。これは遼牙をここまで送った時に手渡されたもので、燃えカスとなってしまった明日の依頼の詳細が書かれた書類が入っている。
「さっさと目通すか」
遼牙は十分程で書類に目を通し終えると自室に戻り、髪を解いてシャワーを浴びようとしたが、今の自分の身体の状態を思い出し、自分のHPを考慮してそのまま寝ることにした。
「今日は色々あったな」
遼牙はぼすっとマットの上に倒れこむと、すぐに規則正しい寝息をかき始め眠りに落ちていった
「またここか」
遼牙は黒い革張りのチェアから体を起こし静かに溜め息をつく。遼牙の正面にある正方形のガラスのテーブルと今遼牙が座っているものと同種の無人のチェア以外何もない部屋で、辺りはただ先の見えない暗闇の空間が広がっているだけだった。
―ここは俺が力を得た場所……そして
「おーおー久しいね。今は譲ちゃんか」
虚空から声がしたと思った瞬間、ポンッと気味の良い音と共に目の前のガラスのテーブルの上空に手の平サイズの女の子が現れた。パッチリとした大きな目と、腰辺りまで伸びた艶やかな長い黒髪が特徴的な可愛らしい女の子で、全身を包む程の大きな古ぼけた黒いローブを身に纏い、ふわふわ空中に胡坐をかいている
「この声……。俺をここに呼んだのはお前か」
「はっはっは!随分肝の据わった譲ちゃんになったな!」
鎌の少女は可愛らしい見た目とは打って変わって、男気溢れる豪快な性格の持ち主らしい。
「なんのために俺をここに呼んだ」
「いや~十年で人は変わるもんだな!」
「おい、話聞いてるのか?」
「そういや十年前って言えば―」
―……話が噛み合わねぇ
遼牙は一向に話を聞く素振りを見せない鎌の少女に対して小さく溜め息をつく
「さて、そろそろ無駄話も止めて本題に入るとしますか」
鎌の少女は先程までの男口調ではなく、柔らかな声の女口調になった
「ん?誰だお前?」
「すいません。時間が限られていますので、先に説明の方をさせてもらいます。」
「随分勝手だな。人を無理矢理呼んでおいて」
遼牙は腕を組みながら眉間に薄く皺を寄せ、不機嫌そうに言う。
「すいません。」
少女は顔を俯かせて、すまなそうに謝罪の言葉を口にする
「まぁいい。とりあえず時間が限られてるんだろ?だったら早くその説明とやらをしてくれ」
「あ、はい!おほんっ。えー、まず貴方をここにお呼びしたのは、第六回『D-GAME』の参加者を対象とした、ゲームのルール説明をするためです」
「『D-GAME』?」
遼牙は初めて聞く単語を復唱しながら首を傾げる
「はい、『D-GAME』というのは、13体ずつの悪魔と天使を宿した25人の人間たちが最後の一人になるまで殺し合うサバイバルゲームのことです。ちなみに数の方はこれで合ってるので気にしないでください」
「ふーん。……成程な。これがお前の言っていた祭り(・・)ってやつか?」
遼牙は少女に問いかける
「その通り。よく覚えてたな譲ちゃん」
再び男の声に戻った鎌の少女は、ガラスのテーブルの上で胡坐をかいて座る。
―見た目少女なのに声がおっさんって奇妙な絵だな
「ふーん。お前らの目的はなんだ」
「目的ねぇ。んー……ラファの方は知らんが、俺は楽しみたいってだけさ。それにこの
『D-GAME』は譲ちゃんにもちゃんとメリットがあるんだぜ」
「メリット?」
「ああ………っと譲ちゃん、ここからはラファにバトンタッチだ」
「ラファってあの女の声の奴か?」
「はい、私のことです。」
「もう代わったのか」
「はい、身体の支配権を受け渡しするだけなら簡単なことですから。それでこのゲームでの貴方のメリットでしたね。それは優勝者に与えられる賞品です。」
「賞品?なんかいいもんでも貰えるのか?」
「『D-GAME』の優勝者に与えられる賞品は、どんな願いも一つだけなら叶えてくれる器です」
「なんでも……ね」
「あー、そういえば一つだけ制限があって、このゲームに関係する願いは叶えることがで
きない事になっています」
「他に制限はないのか?」
「はい、ありません」
「……オッケー、とりあえずその『D-GAME』とやらの詳しことを聞かせてくれ」
遼牙の言葉に鎌の少女はニヤリと楽しそうに笑う
「まぁ最初から貴方に拒否権なんて存在しないんですけどね。それではゲームの説明に戻りますので静かに聞いてください」
「分かった」
「まずは基本的なことから説明します。『D-GAME』の参加者は大きく分けて三つに分けられ、悪魔、天使、ジョーカーの三つのクラスに分類されます。クラスの見分け方は体のどこかに刻まれているクラス固有の刻印によって出来ます。刻印は悪魔が髑髏、天使は十字架、ジョーカーは砂時計となっています。参加者は自分に宿っている悪魔や天使の持つ力、若しくはその力から派生した別の力を使うことができますが、能力の使用には天使、悪魔から供給される魔力を使い、使い過ぎると最悪死にますので注意してください。まぁ能力に関してはまた後ほど説明いたします。そして先程も話したように、参加者が最後の一人になった時点でゲーム終了となり、勝者は願いを叶えることができます。とりあえず此処までで何か質問はありますか?」
鎌の少女は再びフワリと浮かび、遼牙の顔の前でちょこんと首を傾げる
「んー……あ、そういや俺はどのクラスに分類されるんだ?」
遼牙は自分の事であるにも関わらずどうでもよさそうな雰囲気で、一応聞いておいたという感じだ。
「貴方、光崎遼牙はクラスジョーカーに分類されます。まぁ頑張ってください」
「? ああ」
遼牙は鎌の少女が最後に付けた言葉に何かを感じたが、よく分からなかった上にこれ以上探るのも面倒なので深く考えるのをやめた
「他に質問はありますか?」
「いや、特にないかな」
「そうですか。それではこのゲームのルールの説明に移ります。ゲームのルールとしては全部で五つしかありませんが、一度でも破れば強制失格になりますので注意して聞いてください。一つ目はゲームのシステムに反することを禁じる、二つ目はどちらか一方の同クラスの者が半数になるまで同クラスの参加者との殺し合いは認められない、三つ目は参加者や発現者以外の普通の一般人に能力での危害を加えてはならない、四つ目は勝者は必ず望みを叶えなければならない、そして最後は主催者側から出されるイベントの条件を満たしている者は必ずイベントに参加しなくてはならないというものです。これでゲームのルール説明は終わりですが、何か質問等ありますか?」
鎌の少女は再び説明を切り質疑応答をする。
「ああ、さっきのルールの二つ目がよく分からなかったんだが、もう一度説明してくれないか?あとシステムとイベントっていうのも」
「わかりました。それではまず数が多いと分かり辛いので、このゲームの全体が天使と悪
魔が四人ずつ、ジョーカーが一人の九人で構成されているとします。」
鎌の少女はそう言うと、ガラスのテーブルの上に黒と白の陶器の人形が四体ずつ、白黒の陶器の人形が一つ、色別に固まった状態で現れた。
「お前の力か?」
「いえ違いますが、これについては説明すると長くなるので今回は割愛します。それで話を戻しますが、この九体の人形は違うクラスの者しか殺すことができず、同じクラスの者を殺すことはできません」
鎌の少女がそう言うと陶器の人形が動きだし、同じ色の人形同士が向きあう形になる
「ですがこのように」
向き合っていた黒の人形が二体くるりと向きを変え、白い人形の塊に向かって動きだした。そして黒の人形が白い人形の目の前まで移動すると、目の前にあった二体の白い人形がパリンッというガラスの割れるような音と共に跡形もなく粉々になった
「悪魔が天使の二人を殺したとすると、天使の全体は4から2となります。そうすると天使は全体の半分以下になったということで、同じクラスの者を殺すことが可能になります」
そういうと同時に白の人形が先程と同じように、隣にいた白い人形を破壊した
「ちなみにこの場合、悪魔も同クラスの者を殺すことが可能になります」
黒い人形の片方が向きを変え隣の人形の方を向くと、黒い人形が砕け散る
「成程。ということはゲームの序盤はクラスごとの協力戦になるってことか――って、これじゃあジョーカーが圧倒的に不利じゃね?」
「はい、確かに仲間のいないジョーカーは不利です。それにジョーカーを倒した者に幾つかの特典がつくので、序盤から狙われるのは確実ですね」
やはり飛んでいるのは疲れるのか、鎌の少女は再びガラスのテーブルの上に舞い戻り、胡坐をかいて座る。そして周りの陶器の人形に目をやり、パチンっと指を鳴らすと人形たちがすっと消える
「……もしかしてジョーカーって、相当運悪いのか?」
「はい、大分悪いですね」
鎌の少女はきっぱりと言い遼牙は深く溜め息をつく
―こりゃまた面倒くさそうだな。
「それでは時間も勿体無いので次に移ります。えーとシステムとイベントについてでしたっけ?システムというのは簡単に言えばこのゲーム全てのルールのことです。イベントというのは主催者から出されるゲームのことで、条件を満たしている者はルール上絶対参加となります。イベントの発生と参加条件はランダムで決められ、決定次第参加者全員に連絡が回るようになっています。またイベントの中ではそれぞれ別のルールがあるので、イベント参加中は先程話した五つのルールは一つ目以外適応されないので注意してください。それとイベントによって景品の出るものがあるので、参加条件を満たしているようなら積極的にクリアを目指してください。イベントに関してはこれで説明は終了です。何か質問はありますか?」
―一つ目以外……ねぇ
「なぁ、さっきから特典とか景品とか言ってるけど、具体的に何が貰えるんだ?」
「残念ながら貰えるものはランダムで決定されるので、私には分かりません」
「ふーん」
「他に質問は?」
「ないな」
「分かりました。それではジョーカーのみに与えられる力と権限について説明します」
「ジョーカーのみ?そんなもんがあんのか?」
「はい、でなきゃジョーカーが圧倒的に不利な上に、特典を付けて狙われ易くする必要がありません」
「そりゃありがたいね」
「ジョーカーである貴女には他の参加者にはない二つの力と一つの権限が与えられます。それでは最初は力の方から説明させてもらいます。まずジョーカーというのは悪魔と天使の両方を宿した者を指します。そのためジョーカーは天使と悪魔の二つの能力を使う事が出来ます。これが与えられる一つ目の力です。」
「二つ?じゃあ反転能力は感染によるものじゃないのか」
「ええ、それは私の能力です。あなたの身の危険を感じたので勝手に使用しました」
「ふーん」
遼牙はラファの言葉を聞き、自分の身体を眺める
「そして二つ目は戦意喪失した参加者に救済を行う事が出来るというものです」
「救済?どういうことだ?」
「救済というのは、戦意喪失した者をこのゲームから退場させることが出来る力のことで、参加者の刻印に触れることによって使用可能です。ですが救済された参加者はその時点で意識を失います」
「その意識を失った奴等はその後どうなるんだ?」
「ジョーカーが願いを叶えた時のみ目を覚まします。それ以外の場合、一生目を覚ますこ
とはありません」
―要は俺が勝つまでが救済って訳か……
「他に質問はありますか?」
「いや……ないな」
「分かりました。それでは次は権限について説明します。ジョーカーに与えられる権限というのはジョーカーが最後まで生き残った時のみ使用可能な拒絶権というものです。」
「拒絶権?」
「はい、勝者に与えられる願いを叶える器の使用権を放棄する権限のことです」
「……それって意味あるのか?」
「さぁ?放棄した場合は次のジョーカーを選ぶことが出来るっていう特典付きなんですが、正直私もいらないと思うんですよね。この権限」
―次のジョーカーを選んで何になるんだ?
遼牙も鎌の少女もさっぱりと言ったような顔をしながら鎌をいじっている
「では最後に『ギルド』について説明します」
「ギルド?」
「はい、ギルドというのは参加者同士で作ることの出来るグループのことを指します。ギルドの利点としては、一つのギルドで一人扱いされることがあげられます」
「一つで一人扱いってことは、ギルド単位で勝者になれるってことか?」
「はい。ですがギルド単位で勝者となった場合、どんなに人がいようと叶えられる願いは一つです。更にギルドには必ず、ギルドの核とも呼べるギルドマスターが一人存在します。ギルドマスターは空間認識という、一定範囲内の空間を自由に視認できる能力が与えられるという利点もありますが、ギルドマスターが殺された瞬間、ギルドに属しているすべての者が死ぬというルールがあります。」
「ギルドとやる時はギルドマスターを殺せばいいって訳だろ?」
「まぁそうですね。あと、ギルドは本人とギルドマスターの同意があれば加入可能なので、悪魔と天使が混じったギルドも作成可能です」
「へぇ、面白そうだな」
「ちなみにジョーカーは加入不可です」
「おい!」
「まぁ取りあえずこれで一通り説明は終了ですが、なにか聞きたいことはありますか?」
「あー……特にねぇかな」
―あれ?なんか急に眠くなって……
「そうですか。まぁ私たちとはいつでも会話出来るので、何か聞きたいことができたら聞いてくださいね」
「わかった……」
「それじゃあゲーム頑張ってくださいね。あ、そういえば言い忘れてましたが、私の能力はまだ貴方の意思で発動することはできませんので…――」
―あー、なんか頭がぼーっとする
遼牙の意識は突如襲ってきた強い眠気で朦朧としていて、途中から鎌の少女の言葉を聞き取れなかった。
「俺を楽しませてくれよ。光崎」
朦朧とした意識の中、不思議なことにその言葉だけははっきりと聞き取れた。
「っ!!」
目を覚ますと見慣れたコンクリートむき出しの部屋が広がっていた
「夢……か?」
『3月26日、0;00ニナリマシタ!!タダイマヨリ、ダイ6カイ『D-GAME』ヲカイシシ
マス!ソレデハミナサン、ゲンキニコロシアッテクダサイ!』
突如頭の中に響く機械音のような声に、遼牙は先程の出来ごとが夢ではないことを確認させられる。
「…おい、今のはなんだ?」
遼牙は上体を起こしたまま誰もいない空間で尋ねる。しかし
『ラファエルです』
再び頭の中に声が響くが、先程の機械音のような声ではなく先程聞いた少女の声だった
「おい、今のはなんだって聞いたんだが」
『ラファエルです』
「おい『ラファエルです』……」
どうやら彼女は相当強情のようだ
「………ラファエル」
『はい、なんでしょうか?』
名前で呼ばないと絶対に動かないと判断した遼牙は簡単に折れた
「今の声はなんだ?」
『開始宣言ですね。ゲームの。』
「ふーん。特に深い意味はないのか?」
『無いです』
きっぱりと言い切るラファエル
「そっか」
遼牙はそう言うと二度寝するために再び布団に潜った




