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勝つ義務  作者: EternalSnow


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第5話 らしくない

「ユーカリーン!!」

「おっと、どしたの春香??」

 走り終えて、クールダウン中。

 私の親友、相沢春香は笑顔で抱き着いてくる。

 受け止めて、コロコロ笑う今の姿からは、中学時代の猫かぶりは消えていた。

 春香いわく、こっちのがらしいと思ったみたい。


「ねね、新田が試合に出るらしいんだー、面白そうだから観戦しにいこー」

 新田?

 中学の時に、県大会で負けて笑ってた……幼馴染の??

 1年生から試合に出れるって、すごいじゃん。

 ……言ったら自慢になるから言えないけど。


「ん。わかった。

 シャワー浴びたら行くよ。

 場所はどこ?」

「サッカーだから、第一グラウンドじゃない?

 全国に向けての試合だから、結構気合入ってるっしょー」

「んー? どうかな。新田ってどこか本気でやってる感じないし」

 正直、彼が本気になることはないんじゃないかな。

 小学生のある事件から、彼は本気を出さなくなった……。

 だから、なんとなく、そう思える。


「にひひ。それは見てからのお楽しみさー。

 座間に場所取らせてるから、ゆっくりで大丈夫だけど、

 ささ、ユカリンはシャワー浴びてきて?」

「……そっか。わかった。

 じゃあ先にいっててね。座間をパシリにしちゃダメだよ?」

「ひどいこと言うなー! パシリになんてしないよー」

 春香が言うってことは、久々に彼の本気が見られるのかもしれないね。

 

 小学生以来になるけど、どうなんだろう?

 十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人ってことわざもあるし。

 幼馴染たちの中で、一番すごかったのは新田だし、

 

 でもね、ジュースを買わせたり、購買でパンを買わせるのは、パシリっていうんだよ?






 試合を見て、私たちは言葉を発することはできなかった。

 彼を幼いころ、天才と呼んでいた人たちの記憶がよみがえる。

『手加減しなさい!

 新田くんみたいに、誰でもなんでもできるわけじゃないのよ!!』

 そう言われて、真面目にやることのなくなった新田の本気は、凄すぎた。


 10対0。

 8得点2アシストって言うらしい。

 サッカーは詳しくないけど、明確に相手はもうやる気を失っている。

 これは試合じゃない。ただの虐殺に近かった。


「きゃー素敵ー! 新田くーーーん!」

 女子たちの声援は聞こえても、アイツは全く見向きもしない。

 ただ、ただ全力にボールを追って、ゴールに叩き込み続けている。

 よくある、声援に応えた感じはない。

 無表情で、氷のように冷たかった。


「……どうして?」

 記憶の彼は、そこまでやる人ではなかった。

 空気を読まない人ではあったが、人の気持ちを理解できない人ではなかった。

 真剣勝負と言えば聞こえはいいが、戦意を喪失している相手に問答無用なほどボコるタイプでは、なかった。


「……私のせい、なのかな?」

「春香の? そんなことはないでしょ。

 試合をする以上、手加減は失礼ではあるから」

 呟くような春香の言葉を拾って、返す。

 おかしいといえばおかしいが、勝負をする以上、手加減なんて侮辱以外のなにものでもない。

 だけど、相手がやる気を失したのに容赦なく得点を重ねるのは、明らかに度が越していた。

 あまりにも、らしくない。


 ……後で、声をかけてみようかな。

 ちょっと気になるし。

 私は、あいつらに助けられたんだし、今度は私がおせっかいを焼いても、いいよね?

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