第3話 敬意の条件
……藍原が思っていたのはこういうのだったのだろう。
「お前、生意気なんだよ!!」
「ちっ! 先輩を敬えよ。1年坊が!!」
更衣室で胸倉をつかまれたが、バカと相手するのは時間の無駄だった。
「敬え? それなら、僕からボールを取ってから言ってくださいよ?」
その言葉を出した瞬間、拳が顔に飛んでくる。
見えていて、狙っているのはすぐわかって顔を逸らして避ける。
「は? 避けんな!?」
「できないから、暴力ですか。程度が知れますね?」
青筋を立てて、殴りかかる先輩の拳をすべて避けて、ため息を吐く。
ほんと、邪魔だな。
藍原もこんな気持ちだったんだろう。
ただただ、邪魔。
レギュラーとの紅白戦に、1年生ながら選ばれた。
だが、仲間はあの先輩方だった。
プレー上で、いがみ合いなんて必要はないし、それはただのノイズにしかならない。
「よろしくな。新田」
「ええ、全力で胸をお借りします」
試合開始して、前半終了まで、僕にパスが回ることはなかった。
点数は、1対3で負けている。
パスカットからドリブルして、1点を取ったはいいが、それ以外はすべてレギュラーチームに一方的に蹂躙されている。
「ははは、どうよ俺、結構いけてね?」
味方のはずの言葉が耳障りに感じる。
イケてるわけないだろ。3点も取られている。
一方的に負けて……悔しさはないのか?
……去年の僕もその気持ちはあったから。言う資格なんてない。
頭を振って、考える。
こいつらが、僕にパスを回さないのは理解できたし、
バカ共は無視でいい。
負けるために試合をするなんて、真剣にやっている以上する気はない。
……やるしかないか。
後半が始まった。
だが、この後半のプレーは僕にとっても最も不本意で、
僕にとって苦い思い出になった。




