蛇足 不沈艦
理解しがたいことはいくらでも、起きた。
だからこそ、俺は胸の奥が滾り、絶望の中にあった。
新田圭介。
俺は、あいつに中学時代に負けた。
だからこそ、リベンジに燃えた。
じいちゃんに頼み込んで、武術もサッカーに取り入れた。
付き合ってた彼女にも、呆れられて別れた。
正直、努力の邪魔にしかなっていなかった。
だが、その努力は、1年。たった1年ですべて否定された。
決勝の前日だった。
新田に借りを返せる、たったそれだけの日。
そう思っていた矢先、奴は会場にこなかった。
逃げたのか?
俺は、その程度だと思われたのか。
怒りより、悲しさが浮かんだ。
あいつにリベンジするために、不断の努力を重ねた。
そのため、何もかもを捨てた。
だからこそ、ただただ、悲しかった。
数日たって、やっと理解できた。
アイツは、新田は。
交通事故でなくなってしまっていた。
友人をかばって、あのバカは、遠い世界に行っちまったらしい。
己を恥じた。
アイツが逃げるわけなんてなかった。
見下した表情ではあったが、アイツがそんな奴じゃないと、分かっていたはずなのに。
俺には、何もかもが悲しく思えた。
「新田の分まで俺がやる」
そう言っていた言葉が3年になった時、初めて聞こえた。
座間。
そういう苗字だけが聞こえた。
くだらなかった。
新田は、新田だ。
アイツの代わりなんて、どこにもいやしない。
アイツは、間違いなく天賦の才を持った、俺以上の天才だった。
だからこそ、その言葉が腹ただしかった。
分かり切っていた結末だった。
8対0。
座間という10番の選手は崩れ落ちていた。
どうでもよかった。
俺にはもう、プロの世界しか見えていなかった。
結局、俺はもう。
どうしようもなく、壊れてしまったのだろう。
「松田、絶対、お前には負けない!!」
なんど言われたか分からない言葉だった。
だが、この座間という奴には、炎が宿っていた。
……くだらないと切り捨てれなかった。
同時に、なぜか、
新田には、俺は映ってはなかったのだろうなーと、実感できてしまった。
ああ、ホント。
神の奇跡を、信じたかった。
新田のあのプレイを、もう一度だけ、見たかった。
――これにて勝つ義務。終了でございます。
さてはて。
気が向きましたら、このシリーズの最終章。
残響の語り部もよろしくお願いいたします




