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第八話 最期の真珠


咆哮が、洞窟を引き裂いた。


空気が震え、岩が砕ける。


それは現れた。


八つの首。

八つの眼。

八つの“意思”。


神話の中でしか語られないはずの災厄――

ヤマタノオロチ。


「……嘘だろ」


トシノリの喉が、ひりつく。


逃げ場はない。


ルルの声が、背後から静かに届く。


「トシノリ」


「それを使えば、勝てる」


わずかな間。


「でも――これが最後」


トシノリは、手の中の真珠を見る。


微かに脈打っている。

まるで、誰かの鼓動みたいに。


「……誰なんだ」


思わず、零れた言葉。


ルルは答えない。

ただ、目を伏せた。


その沈黙が、すべてだった。


オロチの首が、一斉に持ち上がる。


視線が、突き刺さる。


「――どうやって戦う?」


声が重なる。

笑っている。


トシノリは、目を閉じた。


――戻れる。

――やり直せる。


でも。


「……これで最後なら」


ゆっくりと、目を開く。


「前に進む」


真珠を、強く握りしめた。


光が、弾ける。


世界が、きしむ。


時間が――


巻き戻らない。


「……違う?」


その瞬間。


真珠は――砕けた。


音は、なかった。


ただ、確かに“何か”が終わった。


オロチの動きが、止まる。


世界が、凍りつく。


そして――


トシノリの手の中に、残されたもの。


それは、もう“真珠”ではなかった。


細長く、鋭く、光を帯びた――


一振りの剣。


ルルが、息を呑む。


「それは……」


声が、震えている。


「“三つのうちの一つ”」


トシノリは、それを握る。


理由は分からない。


だが、理解していた。


これは――


戻るための力じゃない。


前に進むための力だ。


ルルが、静かに告げた。


「草薙の剣」


その名が、空気を震わせる。


次の瞬間――


トシノリは、踏み込んだ。

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