7-3・チェスタトンごっこ
朝日に照らされた銀色の港湾と、雲間に隠れて輝く緑色の帯とのあいだを、ジンベイザメのような飛行機はつぎつぎと空港につき、小魚のようなカーゴカーが着陸した飛行機のまわりに集まる。
おれたち茶道 探偵部(仮)のメンバー6人と、生徒会のお目付け役の男子、それにクルミと同じクラスで、理知的な風貌の男子の合わせて8人は、北海道から到着する朝一番の便を空港で待っていた。
予定では、四神剣のひとつである聖剣、その所在をを知っている新人生徒会委員のメイコが乗っているはずだった。
「いくら聞きだそうとしても、それは当日になったら、ってごまかされてたんだよねー」と、おれもよく知らない生徒会役員の男子は言った。
「そりゃそうだろ、秘密諜報員が生徒会にまぎれ込んでいる可能性は否定できないから」と、ミロクは高いレモンソーダを飲みながら話をしていた。
「ああ、ぼくが一緒に旅行に行ってたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに」と、メイコの友人で、かつクルミの下僕らしい男子、モウくんは言ったけど、男女二人で北海道旅行に行ったらもっと大変なことになったかかもしれないのだった。
モウくんは、「くん」も含めてスクールネームらしい。
本名は「タケシ」かな、いや、メイコがヒツジガメイコだとしたら、この男はコウシガモウだろうか。
国内線の到着ロビーと違って、国際・国内の両方の到着ロビーがあるフロアは、24時間営業の店もあるため、早朝からおれたちは、アンパンと牛乳じゃなくってドーナツとコーヒーなどを飲み食いしながら待っていた。
これは部費ではなくて生徒会の予備費から出てるとのことだけど、事件が解決したときのご褒美ということで、あまり高い食事はその後、ということになっている。
しかし、なにを頼んでも非リアル的に高い。
学校の近くのファーストフード店と比較すると5倍ぐらいの値段である。
ただ、諸外国は日本よりもインフレ気味なので、インバウンドのヒトたちはあまり気にしていないようだ。
これから、浅草と銀座と渋谷と原宿に行って、高いラーメンを食べて、京都の高い宿に泊まるんだろう。
空港は、どんなに小さい空港でも飛行機サイズでちょうどいいようにしてあるから、施設がだだっ広い。
おれたちは、手分けをしてメイが到着したあとの行動を探ることにした。
困ったな、とミドリは腕時計型のマジックスマートウォッチを見ながら言った。
その装置を使えば、聖剣が、えーと数十メートルぐらいにあると反応するのよね、とミドリは説明するけど……。
感度悪っ!
到着ロビーの横幅だけで数十メートルはあり、縦幅は数百メートルはあって、それも3層になっている。
聖剣のことなら私たちにまかせてくれたまえ、どん、と胸を叩いた部長のミロクのせいで、空港での捜索はおれたち茶道 探偵部(仮)にまかされてしまったのだった。
「問題は感度じゃなくて、このリアル世界がだんだん非リアルに侵食されてる気がするんよね」
「というと、おれたちもエタりワールドの登場人物になる可能性が?」
それは確かに困る。
別に非リアルになるのは、非リアル世界から来た異世界人のせいだろうから、あまりたいした問題ではないけど、エタるのはなー。
なんとか1月中に完結してくれ、と、おれはメタな気持ちになって、天、というか作者のいそうな方向に向けて頼んだ。
一日1回じゃなくて、3回ぐらい更新しろよ、毎日6000字だよ……。
とんとん、と肩をクルミに叩かれて、自我を取り戻したおれは、クルミが指さす方を見た。
吹き抜けになっている2層の、リッチフードの店からは到着ゲートがよく見える。
ぞろぞろと降りてきたのは、早朝の飛行機の搭乗客たちで、しかしメイコはマジ見つけにくい。
モブキャラに混じってしまうと、本当にモブキャラの女子生徒Aになってしまうくらいの、声優が古賀葵だったとしても目立たない子なのである。
だから、クルミが指さしたのは、違う人物だった。
正確には違う人物たち、つまりふたり。
黒くてダンディーで背が高いクロキと、その連れで控えめなクロサである。
クロサはおみやげと思われる袋をふたつ持っていて、クロキは小さくてスタイリッシュな薄い、大きめの携帯端末ぐらいしか入らないようなバッグを持っていた。
「あとをつけましょう!」とクルミは言うので、おれも首肯した。
あのヒトたちなら、たぶん聖剣のゆくえを探る手助けになるかもしれない。




