6-12・コミー対ゴミー
魔法少女っぽい服で片足を挙げて、マジカルステッキを振り回しているコミーのフィギュア。
ミロクは挙げていた右足にガーゼ付き絆創膏を貼った。
「なんでこんな簡単なことに、最初から気づかなかったんだろうな」とミロクは言うけど、登場人物が知っていたことを読者に隠して「謎」とするのは、ミステリーとしてはアンフェアすぎるのだった。
*
学校の通常営業時間が終わって日暮れになると、クルミとコミー、と同じにしか見えないゴーレムのゴミーは庵に戻ってきた。
きみときみの家族は、えーと、モリワキ団に狙われていて、大変危険なので、しばらくここに隠れているように、とおれが言うと、なんだそれ、とゴミーは鼻で笑ったけど、まだゴーレムと本当のコミーとを会わせるわけにはいかないからしかたない。
わたしの部屋で一緒に寝ましょう、とクルミは言って、しょうがないなあ、とゴミーもそうすることにした。
クルミたちが寝床に改装した、薬草および雑草を乾かすための部屋はけっこう広くて、床が3つから4つになっても問題ないようだった。
*
翌日の昼休みにコミーが、ノックもせずに、がら、と庵の戸口をあけて怒鳴りこんできた。
まず、玄関で靴を脱いで、靴の向きをつま先が戸口を向くようにしてから、おれのほうに迫って、首を締め上げた。
「どういうつもりだこれは!」
ミナセはコミーが玄関であれこれやっている間に雲隠れしているし、女子の首を締め上げるわけにもいかないだろうから、おれが犠牲になってしまったのである。
見せられた画像は、クルミとその侍女たち、じゃなくて仲間たちが、ゴーレムのほうのゴミーと談笑している動画で、クルミは指紋認証に使われないよう指サックをしてVサインをしている。
きのうの放課後、撮られたもので、侍女A、つまりメイド子の知り合いに流通させたものらしいから、当然コミー本人のところにも届いているはずだ。
「わ、わげばばなずがら……おぢづいで……」
とりあえず、コミー本人を学校に呼ぶのには成功したから、いいということにしよう。
頭から怒りの湯気を出してるのを感じながら、おれは冷蔵庫からメロンジュースを取り出して差し出した。
「まずい!」と、コミーは紙コップに淹れたメロンジュースを庭に撒いた。
そうだろうね、ずいぶん前に買って、みんながワンカップに一口だけお試しに飲んだだけだから。
ワタルは、落ち着いて、とおれの肩を、ぽんぽん、と叩くけど、落ち着かせる相手は違っているだろう。
そうこうしているうちに、ミロクが連絡を取ってくれたようで、どだどたとクルミ、そしてゴーレムのほうのコミーがやってきた。
「あーっ!」とコミーとゴミーは同時に叫んで、「あたしのニセモノ!」と言った。
ふたりを見比べても、どちらが本物かはわからない。
ここはどちらも本物、ということにしておいてもいいだろう。
*
クルミとミドリの説明を聞いて、コミーは納得したようだった。
「要するに、あたしがゴーレムということなんだな」
「違います」と、クルミは混乱した。
「でも、悪かったよ、友だちでもないのに世話やかせちゃって」
「担任のヤマダは、友だちや教師だったらできないことが、わたしたちにはできるっておっしゃいました」
それはなんだろうな、魔法を使った嫌がらせかな。
しかし、入学後の2週間ぐらいは、友だち関係を構築するのに大切な時期だと思うけれども、それはもっと、ほどほどに緩さと厳しさがある学校のことだろう。
うちの学校は、学業に関してのほうが、いろいろ厳しいのだ。
「このまま最初の試験もサボると、夏休みは補習授業だなあ」
試験だけは学校に来ないといけないんだっけ。
それでも生徒の1/3ぐらいは無視してるから、気にしすぎることはないと言えばない。
「事情について聞く必要はあるのね。何だったら、こっちのゴミーのほうにしばらく通ってもらってもいいよ」と、ミドリは正しくゴーレムのほうを指さした。
あたしがかよ、とゴミーは正しく驚いた。
コミーはしぶしぶながらも語りはじめた。




