表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/93

6-10・カラスの呪い

 春はあけぼの、と言いたくなるくらいの春で、まだ暑くなりきらない太陽が、地上から上がりきらないトワイライト・タイムに、すこし寒さを感じながらも、おれとワタルは、クロキから仕入れた情報をもとに早朝の探索をすることにした。


 コミーは夜明けまで、学校の課題をせっせと片づけたあと、ちょっとした散歩にでかける、とクロキは教えてくれたのだった。


 闇が東の空から徐々に濃い青に、そして暗い赤に染まるころが東雲~曙で、一年のうちでは春がいい、とされている。


 おれはワタルと待ち合わせして、ふたりでコミーの早朝の散歩を尾行した。


 コミーは片手にバドミントンのラケット、もう片手に複数のシャトルが入った大きめの網を持っている。


 夜半からワタルが仕掛けておいた「餌」の狙い通りに、カラスが生ゴミを漁っていて、コミーは物陰から手にしていた武器を取り出した。


 高め、中くらい、ななめ横に、シャトルを上げると、ばし、と素早くカラスに当てる。


 バドミントンのシャトルは世界一速い初速を持つ飛び道具で、時速500キロぐらいは出るらしい。


 減速度も早いけど、数羽のカラスは、何が起こったかもわからないうちに狙い撃ちされて倒れてた。


 殺されるほどではないけど、ほどほどに痛いらしい。


 さて次、と打ち込むシャトルを、ワタルは1メートルぐらいの距離から素手で受け止めた。


「カラスをいじめてはいけない」と、ワタルは言った。


 カラスがいつもより集まって生ゴミを荒らしていたのは、ワタルが部室からあちこちのゴミ収集所に、ネコを助手にしてばらまいておいたミカンの皮のせいだった。


 ミカンじゃなくて日向夏という柑橘類の皮で、学校図書室の謎を解決したお礼に、図書委員のミカンちゃんからもらったものを、漢方系の薬材になるから、と干しておいたのだ。


 カラスはなぜか、柑橘系の皮が好きなのである。


 本当はもっとオレンジ油が残っているものがいいらしいけど、カラスは生ゴミの肉、特に脂身と同じようにがさごそ、カラスよけネットをくぐって、選んで食べていた。


「いじめちゃいねぇよ、害鳥駆除だっつーの」と、コミーは答えた。


 コミーは口を聞かないで立ってると、特にモデル立ちをしていると、周辺10メートル以内の男子はみんな、はっ、という感じで呆然とするんだろうけど「あぁ、何見てんだこら」と、その口からアルトの江戸弁が出るのだった。


「きみは知ってる、噛みちゃまのワタルだっけ。で、一緒にいるやつは誰だよ」


 前日会っただけなのに名前と特技を覚えている、つまりコミーは友だちが少ない子なのかもしれない。


 別にワタルがキョドるのは、歌のときだけだけれども。


「部下」と、ワタルは答えた。


 子分、と言ったクルミよりもひどい扱いだけど、コミーはなぜか納得している。


「コラ、おまえたち、ゴミをあさっちゃダメだろ! あとでいいもんあげるから!」と、ワタルはカラスたちに呼びかけた。


 ゴミ漁りを積極的にしていたのはワタルのせいだろう。


「物陰からこっそり撃っても、カラスは驚くだけだ。「コラ」「ダメ」をしっかり言い続けると、顔と声を認識して、すばやく逃げるようになる。言うことをきかない不良系のカラスを退治するには、このようなものを使う」


 そう言ってワタルは、特攻服みたいなつなぎの右ポケットからパチンコ玉、右上ポケットからスリングショットを出した。


「まず、殺傷力のないもので見本をお目にかける」と、ワタルは左のポケットから煎り大豆を出し、スリングショットをおれに渡した。


「あの木の上で、クッククー、とうるさいドバトがいるだろ、あれに当ててみよう」


 ひゅん。


 ひゅん。


 ひゅん。


 間をおいて、もうひとつ、ひゅん、と指弾。


「ハトは気配を感じて飛び立つから、その飛ぶ方向を察知して2発打つ。まさか最初に止まっていたところに玉が来ないだろう、と考えてるところに、ほら」


 ハトは、ななななんじゃこりゃ、みたいな感じで、木の枝に止まったまま逆さにぶらさがった。


 豆鉄砲をくらったハトだな。


「アメリカの潜水艦が日本の輸送船を沈めたみたいにやるんだ。魚雷回避して、同じコースをたどる魚雷はもうないだろう、と思ってるところに、どかーん」


 ゲームだと、ヒトの家のタンスとか引き出しとかツボとか勝手に中身のぞいて、ひととおり見た結果なんにもないので引き上げようと思っても、実はもう一度ツボを覗くとお宝があったりする、という隠しパターンで、攻略サイトとか見ておくとその手の知識もつくのだった。


 これでわかったのは、コミーは「早朝はバドミントンの練習をしている」ということだった。


 昼休みが終わったら部室に行くから、と、ミナセを含むほかの部員には連絡して、おれは自宅に帰って寝ることにした。


 しかし、やはり気になることが……。


 コミーは引き続き、ワタルの説明を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ