6-6・音声データを切り分ける
「コミーの中学時代のスクールネームはコミネ。で、昔の画像と音声データを友だちから譲り受けました」と、部室というか庵に戻ったクルミは、夜に備えて眠っているワタルとミロク以外のメンバーに報告した。
「でも、友だちの情報を許可なく渡すのは……」と戸惑っていたメイド子さんあるいは少女Aに対して、クルミは「わたしとあなたは友だちだろ! 友だちの友だちは友だち!」と強奪してきたのである。
「なかなか目の保養になりそうな画像がけっこうあるね」と、ミナセは言いながら、クルミの携帯端末の画像をのぞき込んでいた。
「なるほど、スクールネームは小さそうだけど、ミネだからそれなりのボリューム……」
クルミ以外はコミーの友だちの友だちではないから、簡単にデータをもらえないのである。
「ただ気になることがあるんだよね」と、おれは言った。
「そうそう、このフィギュアよくできてるけど、ここんところがねー、ってメイド子も言ってました」
本当のスクールネームはメイコなんだけど、この先話に出てくるかどうか不明だから、メイド子のほうが覚えやすくていい。
あと「どこんところ」かは秘密ね、ミステリーだから。
「自分とミナセは、教室から講堂・体育館までの距離を測ったのね」と、ミドリは報告した。
測っただけかよ。
「本当はクラブ活動の部員に聞き取り調査する予定だったんだけど、所属部員はあまりコミーのこと知らないみたいなんだ」と、ミナセも言った。
「現在はコミーは合唱部、じゃなくて合唱バドミントン部、か。共通点あるのか……さて、合唱バドミントン部と言えば誰?」と、おれはクルミを指さして聞いた。
「えーと…………島崎信長?」
正解である。
「音声データ、あることはあるんだけど、画像と比べると少なすぎるのよね」と、ミドリは言った。
普通、友だちの画像は撮っても、音声データは残したりしない。
「そういえば、今日は何年の何月何日だったっけ?」というようなやりとりが音声データとして残ってたとしたら、それは法廷で使われる可能性がある場合だ。
ジミ・ヘンドリックスの昔のライブテープから、ギター・歌・その他のパートを切り分けるみたいな感じで、ミドリはモニター上に表示されている音を分離した。
ミドリはコミーの友だちの友だち、つまりクルミの友だちだから問題ないのである。
『あぁ?』『何それ』『受ける』『ないって』『やめろよ』などなど。
これは、海で撮った動画に添付されていた音声データから、コミーのものだけを拾い上げたものだ。
「さて、この声からわかることは?」と、おれは再びクルミに聞いた。
「…………佐藤利奈?」
ぱしぱしぱし、とおれは容赦なく、普段ミロクに叩かれてる強さの半分ぐらいの力で叩いたので、クルミは涙目になった。
「思ったより声が低いのよね。アルトパートなところは佐藤利奈と同じかな」
「それは、胸が大きいから?」
「それは関係ないよ。中学時代の部活、バドミントン部のせいじゃないかと思うのよね。あるいは友だち同士の役割分担かな」
くだらない、ツッコミ待ちのミナセに対して、無表情で答えるミドリだった。
しかし、運動系の部活なら、女子バスケとかバレーボールでもいい気がするんだけど、なんでだろう。
あるいは、女子サッカーとか野球とか。
どすん、と立って歩きながら考えているおれに、クルミは体をぶつけてきたので、油断していたおれは転倒した。
なんだよ、怒られたあとに仕返しをするネコかよ。
「いぇーい!」と言いながらクルミは、ほかのメンバーふたりとハイタッチした。
「これでわかったでしょう! コミーはヒトにさわられるのがきらいなネコなんですよ!」
ネコではないと思うけど、言いたいことはわかった。
バスケなんて、ぶつかり合い系すぎるスポーツだし。
*
その夜、おれとミナセは近くの公衆浴場に行って、頭にタオルを置き、浴槽の中で、なんでおれたちまでこんなことを、とぶちぶち言うことになった。
「ああ、広い浴槽気持ちいいなー。あとで背中流しっこしようよ」と、ミナセは言った。
アニメならそろそろ、このあたりで温泉回か水着回、という感じだろうか。




