6-2・公開されている情報とされていない情報
失踪した女子の名前は「コミー」というスクールネームだった。
きちんと整ったすこし長めの水茶色の髪に、照れくさそうな顔、はっきりくっきりとしたすみれ色の目は輝いていて、口角がすこし上がっているのは、証明用の画像にはあまり慣れていないせいだろうか。
これは入試のときに使った写真とは別に、合格が決まったあとで撮ったものだとわかる。きびしい緊張感がなくて、中学の制服じゃなくて、ゆるい緊張感がある。
自己紹介ファイルには、学生証用の画像以外にも、出身中学とか趣味とか、公開してもいいようなことも書いてある。
コミーの場合は、趣味・お菓子作りと散歩、という、いかにも無難なものだった。
もっとも、元・異世界人であるわが部の1年生も、そんなにすごいプロフィールをあげているわけではない。
「異世界から来ました。趣味は魔石集め」とか本当のこと書いても、たぶん変な子扱いされるだけなのである。
「コミーは自分の部屋で自撮りしてるのね。あかんなー、そんなことしちゃ」とミドリは言って、すみれ色の瞳を拡大した。
目の中に反射しているものは、通りをへだてた向かいの家、その先につらなる中・高層のマンション、遠くのショッピングモール、など。
「これらから位置情報を特定すると、んー、この家」
ミドリは壁に張ってあった「独自研究にもとづく学校周辺の地図」に向かって、魔法で形作ったマジックダートを投げた。
地図は学校を中心にした円形なので、的としては使い勝手がいいのだった。
「あれ?」と言ってミドリは、ダートの当たり場所を変えた。
「もうちょっと練習しないといかんのね。それはともかく! 自宅や自分の部屋で自撮りするのは危ないからやめよう、ってことなのね。魔法使わんでもバレちゃうから」
コミーの家は一戸建てで、部屋は2階、北と西に窓がある。
「なるほど、ヤマダから入手した情報と同じだな」と、おれは言った。
しょうがないなー、コミーの両親から許可もらって、君たち限定で教えてあげるよ、と、自宅の住所だけは教えてもらったのだった。
「情報源は複数あったほうが信頼できるから」と、おれは「なんで?」と解せないミドリをなぐさめた。
「ついでに、ミロクの1年生の証明画像を見せてよ」と、ミドリは言った。
別にいいけど、ちょっと待ってろ、と言ってミロクは、自分の携帯端末をがさがさと、じゃないな、過去画像を検索するときの適切な音はないもんだろうか、ともかく探って見せてくれた。
理由を聞かないのは、答を知っているからだろう。
きちんと整ったすこし長めの栗色の髪に、照れくさそうな顔、はっきりくっきりとした金色の目は輝いていて、口角がすこし上がっている……けれども。
「なんか邪悪そうだな」
「でも美少女と言えなくはない」
「人を殺せる笑顔ですね」
「むしろ、もうやりきった感があるのよね」
「…………」
言いたい放題だけど、初々しさと適度の恥じらいは感じられる、魅力的な顔だった。
おれがミロクと同じ年で、2年前に出会っていたら恋していたかもしれない。
それは言いすぎだけど、Amazonの段ボール箱のような、片方だけ口角つりあげてる、にやり、感はない。
「さて、いい素材が手に入ったので、コミーの画像を見た自分の違和感を明白にするよ」と、ミドリは言った。




