5-11・キャラ設定の闇語り
おれとミナセがどのような出会いをしたかを語る「過去編」は存在しない。
だってそんなのつまらないだろ、読者のみなさんも。
ここらへん、非リアルに振り切って強く言いたいんだけど、子どものころにこういうことがあってこういう性格になった、って設定多すぎ。
おまけにそれは「親に捨てられた」か「親を殺された」のふたつしかないし、友と出会うのは病院の屋上か夜の公園ばっか。
アドラーだって「トラウマなどというものはない」と言っているのに、なんで過去と現在が関係あって、明るい・暗い性格になってしまう主人公およびレギュラーがいるんだろうか。
おれの想像なんだけど、編集者がそういうの聞きたがるんだよね、たぶん、なんでこのキャラはそういう性格なの、って。
編集者のいないウェブ小説だと、異世界転生という設定が多いせいか、主人公の過去、つまり現世のトラウマ、あまり語られてないし、少年漫画でもなんでそんなにサッカーやバレーやバスケが好きで得意なのかは普通重要なことではない。
親父のせいで野球やらされることになる『巨人の星』の星飛雄馬ぐらいなもんだろ。
おれは「過去設定の闇語り」となづけて、そういうのが出てこない話、じゃないな、リアルっぽいリアルを求めてみたいのだ。
いかがだろうか、読者のみなさん。
「……いったいどこ向いて熱く語ってんの?」と、ミドリに聞かれたので、おれとミナセの過去に関して話せ、はおれの琴線に触れるのだ、と言ったら、それは逆鱗、と訂正された。
アニメになったときも「琴線」と「金銭」じゃ紛らわしいしな。
とか考えていると、昨夜の夜の湿り気がまだ残っている街路樹の影に、全裸で四つん這いの男が目に入った。
おまけに顔には白いホッケーマスクをつけていて、片手にバールのようなものを持っておれたちに襲いかかろうとしている。
この男は、どう考えても……。
ぶち。
ミドリが瞬殺して、真紅のつぶつぶになって消えた。
「もうひとつの質問は……あんた、友だちいないの?」
「いるよ! いまさっきお前がぷち殺したモリタとか!」
「あのモリタ? クルミの組にいる……」
「それはモリタ一号。おれの友だちはモリタ二号だ。モリタァァァ! なんで死んだ!」
「まぁまぁ、興奮しないで。モリタニみたいな雑魚モンスターならすぐ自力で復活できるから、定ポジションで」
「モリタ「ニ」じゃなくて「モリタ「二」号だけどな。ほかにもいるんだけど、話が先に進まないし、モンスター狩りに来たわけじゃないから」
*
駅に面した建物はショッピングセンターになっていて、最上階はシネコンだったんだけど、駅から5分ほどのところには別の、独立系の映画館がほそぼそと、ではないな、堂々と映画を上映していた。
ミニシアターみたいな感じで、シネコンだったら2週間で「とりあえず劇場公開しました」という実績だけ残すために上映する映画も、延々と流し続けるらしい。
「え、え、えー? 『タクシードライバー』やるの? おまけにフィルム上映!」と、ミロクは映画館のポスターで興奮していた。
「えーっ! 『映画大好きポンポさん』も! これもフィルム上映!」と、おれも驚いた。
『タクシードライバー』はタクシードライバーの話で、『映画大好きポンポさん』は映画が大好きなポンポさんの話、正確には新人監督のジーンくんの話である。
なんでもかんでもデジタル上映の映画館ばかりなところに、未だにフィルム。ポンポさんは映画好きな人のために、2021年、わざわざフィルム作ったので有名なのだった。
ではこれから、午前10時半の映画祭です、とミナセは言った。
「これって、部活の活動費扱いなの?」と、おれはミロクに小声で聞いたら、もちろん、だそうである。
「ただし『ポンポさん』は自腹な」
それでもいい!




