5-10・違う組で歩くこと
育ちすぎた街路樹のある歩道は、並んで歩けば4人横列でらくらく歩けるくらいの幅なんだけど、それはつまり2人横列の人は無理しないですれ違えるぐらいの幅である。
それじゃ、と歩き出したミナセのあとをついていこうとしたミドリに、待った、とミロクは声をかけた。
「どうもうちら、いつも同じ組になりがちだろ、違う組で歩くこと」
幼稚園の先生みたいだ。
考えてみると、確かに言われたとおりなんだよね。
具体的には、ミロクとワタルはきょうだいのように、ミナセとミドリは友達のように、おれとクルミは、こ、こ、こ、恋人のように。
もとい。
おれとクルミは名探偵とその助手のように、並んで歩いて話をしていた気がする。
ミロクが決めた組み合わせは、こんな感じ。
行き先を知っているミナセが先頭で、ワタルと。
つぎがミロクとクルミ。
最後におれとミドリ。
確かに新鮮である。
先頭のふたりは、目的地への作戦行動に向かうレンジャーなみの早さで動きはじめたので、すぐにミロクは、ストップストップ、すとっぷぅ、と言った。
ふたりは10秒で30メートルぐらい進んでる。
時速11キロだから、競歩の世界記録の2/3ぐらいの早さだけど、普通に人が歩く早さの3倍だ。
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おれとクルミが歩くときは、クルミにおれが合わせてる感じだけど、ミドリの場合はおれに歩幅を合わせてる。
男女差や身長の違いで、男子はどうしても女子にしたがってペースを通常よりも遅くしなければならないんだけど、そしておれの通常の歩幅はけっこう大きいんだけど、ミドリはやや狭くしたおれの歩幅とペースに、無理なくついて来ている。
背筋をしっかり伸ばして歩くときの姿勢とか、たぶんいろいろと計算しながら進んでるんだろう。
「じつは、前からミドリには聞きたいことがあったんだ」と、おれは言った。
「ミナセとはどこまで進んでるの?」
もちろん、学校の勉強の進行具合ではない。
男女の仲、という露骨な例の奴である。
「えー? 教えてあげてもいいけど、そのかわり私の質問にも答えてね」
おれはうなずいた。
おれとクルミの関係についてなんだろうけど、それは自信をもって、手を握れるところまで、と答えることができる。
「私とミナセの関係は……行けるところまで」
それから数秒の沈黙があり、ふたりで声を合わせて言った。
「なーんちゃって」
なぜ人は、そのような質問の最後には、なーんちゃって、と言うことになっているんだろう。
世界がラブコメ世界だからで、登場人物がラブコメ脳だからなのかもしれない。
「こんど、ミナセの家に遊びに行ったら、ウルフはどっかに消えてってね」
「やなこった。それじゃおれに聞きたいことは」
「ふたつあるんだけどいいかな。まず、ウルフとミナセはどうして一緒に住むことになったの?」
「そういうの聞きたいのかよ。最初は病院の屋上でさ」
生活圏、つまり学校が違う子供が出会うのは公園か病院で、男子が女子高生に出会うのは夜の公園のブランコ、ということになっている。




