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4-7・犯人はすでに死んでいる

『世界裸体美術全集・全裸編』


 そんな本が高校の図書室にあっていいものかどうかは不明だけれど、美術・芸術と思えば問題ないんだろう。


 しかし、なんでクルミがその本を手にしてえづいてしまったのかはわからない。


 エロ耐性、普通にあるもんだろう、異世界の姫なら、と思いながら、おれは本を念入りに調べ、本文の上部部分に赤茶けたシミのようなものがあるのに気がついた。


 うつらうつらしていたワタルの頭をその本で、こつ、と叩くと、角で叩かなくても、平面で叩けばいいだろう、と、『赤毛のアン』でアン・シャーリーに石板で叩かれたギルバートのことを言いながら協力してくれた。


「これは、血だ、それも獣系の」と、ワタルは言った。


「姫は魔獣とか高貴な血には慣れてるんだけど、淫獣系には弱いのよね」と、ミドリは言った。


 さらにくわしく、ワタルが本を調べていると、その数か所に指のあとのあるのも確認でき、ワタルは血天井を指さして、あそこに同じ指紋がある、と教えてくれた。


「よしわかった、犯人は男で、これは鼻血のあとだな」と、おれはすこし力弱く断定してみた。


「ちょっと待ってくださいよ、ウルフ」と、案の定ミナセがツッコミを入れてきた。


「近世ならともかく、古代・中世だと全裸の絵は男子のほうが多いじゃないですか。おまけに現代絵画でも、ピカソの絵で興奮できますか?」


 ごもっともである。


 ピカソの『アビニヨンの娘たち』は全裸の女性複数が描かれている名画だけれど、あの絵で興奮する人間は多くないだろう。


 ミナセは、図書室の隅にあったホワイトボードを持ち出し(おれも手伝わされた)、以下のようなテキストを書いた。


1・ 犯人は女性の裸体が好きな男性

2・    女性       女性

3・    男性       男性

4・    男性       女性


「なにをたわけたことを言っているのだ」と、先輩のミロクからもっと鋭い指摘があった。


「エロ絵画で興奮して鼻血出すようなキャラは、漫画その他の創作物のだけだ」


「そうなん? じゃ、おれたち創作物の中の登場人物?」と、おれは確認してみた。


「でも、放射線浴びて鼻血を出す人はいますよね?」と、ミナセも言った。


「だ・か・ら! 人の話を聞けよ! あと、放射線を鼻血が出るくらい浴びた人は、全身から体液を垂れ流して死ぬ」


「じゃ、犯人もう死んでるの?」と、聞いたおれに、ミロクは優しく頭をなで、それからチョップをくらわした。


 これは、鼻血じゃなくて、本のページをめくったときに手を切ったんだな、というのがミロクの説明であり、ミロク自身もまれに、新しい本で紙が薄くないやつではやるらしい。


「紙で手を切るとなー、痛いし治りにくいぞ」


「あ、あのー」と、おずおずと図書委員であるミカンちゃんが口をはさんだ。


「私は、犯人はどうでもいいんで、どうしてそんなことをしたか、だけが知りたいんで……」


 素人は黙ってろ、と、異世界人以外の名探偵部3人は声を揃えて言った。

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