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4-4・図書室と謎の天井

 古い本には独特の匂いがあって、古本屋とか図書館・図書室に行くとわかるんだけど、一度かびた食物が乾燥しきった匂いだったり、十分に乾いた木材の匂いみたいな感じで、一冊一冊を手に取ってもはっきりしないのに、店・館・室にその空気が残る。


 おれたちは手分けして、図書室の本を確認した。


 確かに、蔵書の一部が上下逆さまになっており、それは古い本ばかりで、おいしそうにも感じられる匂いがした。


「まず百科事典、それに自然科学・言語・美術、その他だいたい諸文化の全集だね」と、ミロクは言った。


「日本文学全集は大丈夫なんですか」と、ミナセは聞いた。


「文学関係には、特にこの犯人は興味がないようだな」と、おれはメンバーで情報共有した携帯端末内のメモを見ながら言った。


 図書室は原則として撮影禁止なので、なかなか面倒くさい。


 大テーブルは使い勝手が悪いので、図書委員のミカンちゃんもいれておれたち7人は4人がけのテーブルをくっつけて座った。


「いくつか質問があるんだけど」と、おれは聞いてみた。


「まず、天井にある、あの冒涜的な、手とか足の一部が抽象画っぽく描かれてる、あれはなに?」


「あっ、それはわたしが知ってます、前世の王宮にそのような部屋がありました」と、クルミは言った。


 前世って。


「つまり、血天井の間ですよ」


 血天井というのは、城が攻め落とされて、城主とその家臣が全員切腹した天守閣に残された血染めの板を、武運長久と死者を悼むために天井として使ったものであり、はらわたとか鎧、手足の跡とかがそのまま残っていて、今となってはかなりグロいものである。


 もっとも、床と天井というのは板の素材がそもそも違うので、単なる物語上の創作物とか、寺院が自分のところの宣伝素材としてでっち上げられたもの、という説もある。


 さすがに残酷ファーストの戦国大名でも、自分の寝室とかには血天井は使わないものだけれど、クルミに聞いたら武具とかの置き場にその板を使ってたらしい。


 戦国大名より普通に血まみれに慣れている、それが異世界の王である。


「あー、あれですかー、去年の学園祭で、サバイバル調理美術部がリアル・スプラトゥーンをデモンストレーションでやったんですけど」


「なにそれ? そんなイベントあったなんて知らなかったよ」


「教師が無理やり、30秒でやめさせました」


「3分続かなかったのかー、どうりで」


 そう言えば、イカ焼きの屋台は出てたの思い出した。


 醤油じゃなくて、赤いケチャップと黄色いマスタードをつけてお召し上がりください、ってやってたね。


 意外といけるかと思ったけど、普通にまずかった。


「ぼくには犯人がわかりました」と、ミナセは自信満々に言った。


「犯人は戦国武将です」


 なわけあるかよ。


「サバイバル調理美術部というのはなにをする部なのだ」と、ワタルは聞いた。


「んー、野山に行って、キノコで絵を描いたり、タケノコの銃弾で撃ち合ったりするんだったかな。ちょうどこの別棟に関係者がいるから、犯人かどうか聞いてみよう」と、ミロクは言った。


 よーし、だいぶ事件の真相と犯人に近づいてきたな。


「あの、手形とか足形とか、体の一部に見えるところは、血とかケチャップで描いたわけじゃないのよね」と、ミドリは聞いた。


「赤い絵の具が余ってたから、部員によるボディペイント祭りに企画変更したんです」と、ミカンちゃんは言った。


 水着の男女高校生がぐしゃぐしゃ遊んで、飛び入り勝手次第、ただし着替えは用意してというイベントで、けっこう好評だったらしい。


 まず、犯人がどういう目的で、図書室の本の一部を上下逆さまにしたのか、ミカンちゃんはそれが知りたい、とのことである。


 つまり犯人はどうでもいいんだな。

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