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4-2・図書室の謎の先輩

 うちの高校にも学校図書館、というのが正式名称らしいけど、図書室というものがあって、学習用の本が置いてある。


 場所は別棟の、いわゆる特別学習室がある棟の4階にあり、あまり人がいない。


 自宅以外で勉強したい人は、1階に一蘭形式の、っていうのかな、とにかく集中して学習できるひとりずつの仕切りがある学習室があり、朝の6時から夜の10時まで利用できるし、各有名大学の過去問集とか、資格試験の参考書も置いてある。


 それに対し図書室は、もっぱら生徒の自主管理に任せられていて、予算もあまりないらしい。


 学習室ができる前は、それなりに利用者もいたとのことではあるけど。


「わあ!」と、クルミは本棚を見て言った。


「古い本ばかりですね!」


「ライトノベルは、前田珠子・若木未生……朝日ソノラマ文庫の夢枕獏に、悪霊シリーズの小野不由美か。どこのアビコ市民図書館だよ」


「この百科事典なんかすごいですよ。ぼくの生まれる前までのオリンピックしか載ってない」と、ミナセは言った。


「そんなに悪口ばかり言うなよ。小沼丹全集とか、源氏鶏太全集とか、久保田万太郎全集とか、ブンキョウ区のホンゴウ図書館なみに揃ってるぞ」と、ミロクは言った。


「学校図書館の決まりとして、規定の冊数以上ないと、文部科学省があれこれ口を出すので……」と、申し訳なさそうに、依頼人である図書委員長であるミカンちゃんは言った。


 あと、ライトノベル系は今はみんな、ネットで買って電子書籍で読んじゃうらしい。


 そういうのの補助金は、自治体と学校で出るから、とのことである。


 委員長は、こういうキャラ設定にありがちな、おしゃれっぽくないメガネをかけた隠れ巨乳で、わたしのことはミカンちゃんと呼んでください、と、メルヴィル『白鯨』の登場人物みたいなことを言った。


「ミカン?」


「ミカンちゃん、です」


 うちの学校は、原則としてスクールネーム、つまり学校内だけで使われる、ネットのハンドルみたいなもので呼び合い、さん、とか、ちゃん、とか、先輩、なんてものはつけないのである。


「ミカン先輩なん?」と、ミドリは聞き返した。


 いやだから、ミカンちゃん、です。


 つまり「ちゃん」までがスクールネームらしい。


 図書の閲覧スペースには、ベルリン侵攻作戦の地図が広げそうな、連合軍の統合参謀本部にありそうな大きさの机と、それほどではない4人がけ・2人がけの机などがあり、いつまで無駄話をしていてもあまり人が来ない。


 とはいえ、こんなところでお話と依頼をするのも何なので、と、ミカンちゃんは我々6人を、図書準備室に案内して、冷蔵庫からみかんゼリーと2リットルのペットボトルのお茶、それに紙コップで接待してくれた。


 どうも数が半ダースしかないので、と、ミカンちゃんはさらに3個のチョコゼリーも出してくれた。


 そのうちの1個は当然のことのようにクルミが追加で取り、1個はミカンちゃんが取り、ほかのおれたちが躊躇しているのを見て、冷蔵庫に戻した。


 戻す前に、「ミカンちゃん専用」と筆記用具で容器に書き込むのを、おれは見逃さなかった。


 事件というほどのものではないんですけど、先日来うちの図書室の本に、妙ないたずらがされているようなので。


「わかりました。犯人は美術部です!」と、クルミは力強く、お茶を一杯飲んでから断言した。


 なんか、こいつらの物語がエタったの、わかる気がするな。


 作者なんにも考えてないんだから。

ということで、米澤穂信さんとそのファンにはごめんなさい、と生きているかたには謝っておきます。坂口安吾はもう亡くなっているので謝らないけど、好きな人がいたら、それはそのときに考える。

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