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3-7・まずマンションのドアを開ける

 おれたち、つまりおれ・ミロク・クルミ組が、迷いネコを飼い主に渡して、金銭ではないお礼をもらって、別行動の組と合同したとき、そちらの事件もほぼ解決していた。


 つまり、ミドリ・ワタル・正規の探偵ふたりが受けた正規の依頼である。


 おれたちがこじゃれたマンションの、アカネという名の女性の部屋におじゃましたとき、探偵二人とミドリはリビングで座ってお茶を飲んでおり、ワタルは一緒にはいなかった。


 リビングにあった机は小さい長方形だったので、探偵二人に向き合う形でミドリとアカネが並んですわり、ミドリが携帯端末でやっていた高校数学の問題を、ここんとこはこうじゃないかなー、そうじゃなくて! と、アカネは真面目に教えていた。


 けっこう勉強できるんだな、アカネさん。幸薄そうだけど。


 どういうことが、おれたちと並行して起きてたのか、そしてワタルはなにをしているのかは、ミドリの視点に近いもので語っておこう。


     *


 ミドリたちは近くのイタリアン系レストランに入って、ざっくり話を聞いたあと、マンションの出入り口に行き、鍵がないため開けられないことになっている鍵の鍵穴を、まず調べた。


「ふーん……これだったら、クロキたちでもなんとかなるんじゃないの?」と、ミドリは言った。


「そりゃなんとかなるよ。壊れてなければ」


「……壊せば、じゃなくて?」


 そしてミドリは、さらに出入り口を、いつも持ち歩いているメジャーで測り始めた。


「それって、なんか意味あるんでしょうか」と、アカネは心配そうに聞いた。


「ん? この世界がリアルなのか確認するための儀式みたいなもんだから、気にしすぎることはないんよ。アニメや雑な漫画だと、場面が変わるたんびに鍵穴の形や場所が変わったりするやん。ちゃんとした作画監督が修正指示出してれば、非リアルでも問題ない程度にはごまかせるんだけど、まず、建築基準としてのマンションは……」


「わ、わかりました。そんなことより」


「そんなことじゃねーよ! リアルなめんな!」と、ミドリは怒った。


 リアルに関してはミドリは面倒くさい子なのである。


 ミドリが鍵穴に手をあてて、軽く魔力を放出すると、きしゃ、と音をたて、魔力の名残であるうす緑色の蛍光鱗粉を散りばめ飛ばしながら、出入り口は開いた。


「すごいです! どうやったんですか?」


 ミドリは部屋に入るとき、右足のほうを気にしながら熱く語った。


「鍵穴に合う鍵の形を脳内にイメージして、仮想空間の中で仮想三次元化するのね。装置を使わない、この世界の3Dプリンターみたいなものなんだけど、一度使うと再発動には数秒ほど時間がかかるから実用性は高くないかな。異世界では盗賊属性の固有技術と言われているけど、それは魔力が足りないものによる俗説で、真の盗賊属性は、透視・察知のほうにむしろ特化されていて……」


「もうそのへんにしておいてよ」と、今度はクロキのほうが言った。


 そうそう、行方不明の鍵を見つけなくちゃだね、と、ミドリも同意した。


 そして、勝手に部屋の中で探しものをしまわっていたワタルは、どうやらいいものを見つけたらしい。

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