3-5・本職の探偵と会話をする
黒い服を社会人のように着こなしているふたりのうち、大きいほうはクロキと名乗り、ネコをひざの上に乗せていた、やや小さいほうはクロサと名乗って、お見知りおきを、と挨拶をした。
大きいほうはふちがある帽子をかぶっていて、それを取ると丁寧に頭を下げ、小さいほうは、どうも、と軽く言った。
「おれたちは、そのキジネコを探してたんです……多分」
あまり自信を持って言えなかったのは、実はそのネコは、おれたちが画像で認識していたものより、ややふっくらしていたからである。
にゃー、と、道案内をしてくれたクロネコは、キジネコに声をかけ、キジネコも、にゃー、と返事をした。
ベンチの廃材の、一番高いところにいた、近所のボスと思われるミケネコは、にゃ? と鳴き、にゃにゃにゃーの、と、クロネコは身振りを交えながら語った。
さっぱりわからないけど、ネコ探偵であるワタルがうなずいているところを見ると、ちゃんとネコ同士では会話が成立しているらしい。
「兄さん!」と、探偵部長のミロクは、クロキのほうの顔を見ると、驚いたように言った。
「え、本当にミロクの兄さんなの?」とおれはマジになって聞き返した。
「なんでミロクの幼なじみのおれが、この人のこと知らないわけよ」
「実は、幼いころに生き別れだったのだよ。ウルフと自分が知り合う前の話で……というのは嘘だけどな。だから、驚いたように見えたら成功」と、ミロクは言った。
そうなんでも、みんな昔から関係があった人ばかりでは、出来損ないの歌舞伎の脚本みたいである。
ふたりは、職業として、つまりプロとしてやっている探偵だそうである。
おれたちが事情を説明すると、あー、そうだったんだ、だったらあげるよ、と、クロキは言って、ネコを抱える正しい所作で、クロサからネコを受け取り、ワタルに渡した。
「え、いいんですか。多分その飼い主のところに行けば、謝礼がもらえるんじゃ…」と、おれは言った。
「んー、別にネコを探してたわけじゃなくて、ネコに探してもらいたいものがあって、ここに来てたんだよ。あと、生き別れの妹にも会えるかもしれないし」と、クロキは言った。
どういう意味かさっぱりわからない。
あと、クロキはけっこう、その場のノリで話を作ってそうな感じがする。
それから、しばらくして、大変、お待たせ、いた、しま、した、と、キジネコの飼い主のところに行っていたクルミが合流してきた。
句点が多めなのは、息を切らしている描写だと思いねえ。
手にはちゃんと、キジネコの遊び道具だったらしい、使い古された、というか、噛み古された、ネズミのぬいぐるみを持っていた。
ワタルとクロネコは、その匂いを確認すると、よし、という感じでうなずいた。
「僕の相棒によると、この、緑っぽい子には並外れた魔力を感じるらしいんだよね」と、クロキはミドリのほうを、帽子を持った手で示した。
「その力を使って、協力してもらいたいことがあるんだ」
新一年生の3人が異世界人であることは、ある程度業界では有名のようである。
魔獣狩りとかですか、んー、明日入学式なので、手短に片付けられることなら喜んで、と、ミドリは答えた。




