3-3・助けてくれそうなネコが来る
迷い猫調査隊は、ぼく、別の用事があるので、と言ったミナセを除いた部員の5名でおこなうことになった。
さあ、うでがなるな、とはりきる部長のミロクは、本当に腕をぶんぶん回していた。
さて、準備をしよう、と、ワタルは、異世界人3人の寝室兼薬草室に行って、おれとミロク用に、薄汚れた灰色の、使い捨てレインコート的なものを渡した。
「ネコによっては、ヒトの匂いを嫌うのもいるのだ」
そして、ワタルは眼帯を外して赤い目を見せた。
「こっちの目は夜間観察・偵察用のものだ。直視するとヒトには危ないから気をつけろ」
ワタルはうすぼんやりと暗くなった地面に目を向けると、たしかに赤い点のようなものが見えた。
どうやらレーザー光のような仕組みになっているらしく、ワタルは光の強さを調節していき、もう大丈夫、とおれに顔を向けた。
「出力をあげれば、電子機器をぶち壊すこともできるのだが、ヒトは水分が多いからあまり兵器としては使いにくいのだ」というのがワタルの説明である。
まず、手助けになりそうなネコを呼ぼう、と、ワタルは言った。
あの泉のところまで行かなければいけないの、か、と、おれは聞いた。
呼ぼう、って言ったであろう。500円玉を出せ。もし可能なら、10万円金貨でもいい。
おれの代わりにミロクが差し出した硬貨を受け取ると、ワタルはそれをすこし高く放り上げて、庭の縁石に当てた。
がちゃりーんという音がして、しばらくするとぐわさぐわさと、草むらをかきわけて、白い米粒のようなものが出てきた。
鼻の頭が白い、毛並みのよさそうなクロネコだ。
「知ってのとおり、ネコは耳がいい。100メートル離れた硬貨の落ちる音でも、それが100円玉か500円玉か聞き分けることができる」と、ワタルは説明した。
「慶長一分判とか投げたら、近所のネコが数匹、すごい勢いでやってくるぞ」とのことである。
ワタルは携帯端末のキジネコ画像をいくつか見せながら、クロネコと会話をした。
にゃーにゃ? にゃなー。
にゃーん。
にゃにゃにゃ。にゃんにゃ?
にゃーん。
にゃ、にゃにゃんす。
にゃーん。
どうやら話がまとまったようだけど、ワタルはがっかりしている。
見覚えはないけど、匂いみたいなものがわからないかな、とクロネコは聞いている、と、ワタルは言った。
そうだよ。
ネコだったらネコに探してもらうのが一番いいんだけど、画像だけではだめなんだ。
ネコは、耳と鼻はよくても、視力はヒトよりやや悪いぐらいなのである。
「わたしが飼い主さんのところに行ってなにかもらって来ます! 交渉には自信があります!」
確かに、部員の中ではクルミはそういうのに一番向いてる気がする。
しかし、なんでも自信があるんだな、この子。
「とりあえず、うちらのたまり場のひとつに案内してあげよう、と言っている。ひょっとしたらいるかもしれない、とか。行く?」
おれはすばやく、ミロクはゆっくりと首を縦に振った。
テレビで見たネコ探偵(ネコ探し探偵)によると「依頼人に感謝されるのが仕事としてやりがいがある」的なことを言ってて納得。素行調査だとそういうことはあまりないですからね。




