10-4・秘宝と世界と物語
じゃあまずセットするね、と、モリワキであるルーク8号はよろよろと階段を降りはじめた。
あのー、さかさまメガネかけたままだと危ないんじゃ、とおれが言うと、ルーク8号は、あっそうか、といってメガネをはずし、覆面的なものをかぶった。
はじめは前後さかさまの覆面だったんで、コントかと思ったけど、単にそそっかしいだけのヒトらしい。
広間の一角には、白い大きなスクリーンが用意されていた。
「まず手前に光源を用意するのね。これはレイチェルが貸してくれた光源妖精だけど、どう、まぶしいだろ」
光の方向が狭い光源はとてもまぶしくて、ヒトに向けてはいけないものなんじゃないかと思う。
次にどれがホンモノかわからない「踊る黄金像」が3つ。
「ミロクに教えてもらったんだけど、問題は像のほうじゃなくて台座なんだって。ほら」とルーク8号は台座の裏を見せた。
もとから貼ってあった台座の底部の紙ははがされて、内側の刻印が見える。
昭和の年号と21世紀の西暦の年号ふたつで、そのうちのひとつはごく最近のものだ。
「この昭和の台座に、どれでもいいから像を固定して、と」
ねじ式の、「踊る黄金像」の片足を固定する。
あげている片手を下げると、もう片方の手が上がる。
あれ、と言いながら同じことを数回繰り返し、力を入れて両方とも下にさげると、びょん、と両手が上にあがり、頭の上でなにかを捧げているような感じになり、これでよし、とルーク8号は言った。
そしてさらに、部室の段ボール箱から見つけて手に入れた聖剣を黄金像の前に、切っ先を下にして立てる。
聖剣にはちゃんと鍔と柄も揃っているけど、柄には透明な宝石のようなものが埋まっている。
「あれは岩塩の結晶なのね。水晶より熱で溶ける温度は低いんだけど、魔力を封じて持ち運んだり、加工するのは簡単だからよく使われるのね」と、ミドリは説明した。
「じゃあ最後に、クルミが首飾りで持ち運んでいる「紺珠」を貸して」とルーク8号は、壁際でこっそり、見つからないようにしていたクルミの壁をドンして言った。
「逃げるなよ」
ここはそういう場面ではないのだけれど、クルミはすこし赤くなりながらも首飾りを差し出した。
ルーク8号は確認すると、像の両手の間に紺珠を置き、すべてが一直線に並ぶように配置を確認した。
妖精の光源。
踊る黄金像と、その手の中の紺珠。
柄に岩塩の結晶が埋め込まれた聖剣。
「どういうことなんでしょう?」とクルミは聞いたけど、普通に考えれば……。
「映画だな。あるいは私たちのほうが映画なのかもしれないけれど」と、ミロクは言った。
光源とフィルム代わりの「世界」、そしてレンズによってスクリーンに写ったものは。
「あ、ごめん、配置がさかさまだった」と、ルーク8号は言って、紺珠の上下を入れ替えた。
王城と城下町、遊ぶ子どもと訓練をしている兵士、空を飛ぶドラゴン。
神秘的な青と氷の湖、それを囲む濃緑の森と、とがった耳を持つ一族。
玉座に座る王とその側に立つ王妃、王子・王女、列席する貴族。
「これですこれです! わたしのいた世界。魔女も、ニンジャも、おかん女神もいる!」
ニンジャはともかく、おかん女神は堪忍してほしいところだ。
「これで満足してくれたかな。きみたちがいた世界は確かに存在しているし、存在し続けるんだ、たとえエタってしまった物語と、その物語の作者の脳内だけだとしても」と、ルーク8号は言った。
「納得はいかないけど、満足はしてる」と、ワタルは言った。
*
これで、この物語は、もし非リアルで物語だったとしたらおしまいである。
つまり、エタることなく完結したことになる。
続きがあるとしても、たぶんスピンオフになるんじゃないかな。
茶道 探偵部(仮)ではなくて、茶道 物語部(仮)のメンバー、つまり今の1年生が2年生になったときの話として。
そしてスクリーンが巻き上げられると、クロキが、カーテンコールの挨拶と宴会場はこっちだよ、って言ってる。
やれやれ。
ほぼ予定通り、一応完結しました。もうこれでおしまいです。ここから先は何もありませんから。掃除のおばちゃんが来るだけですから。ただし別の新作は、明日! から予定しています。




