表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/111

9-4・あいつはニセモノ

 怪盗と名探偵がお互い、自分が持ってる「踊る黄金像」のほうがホンモノだ、と言い合いながら像の足の裏に傷つけ合っている。


 どちらも、傷が多いほうがホンモノ、ということにしたいらしい。


 トランプのババ抜きで、ジョーカーに傷つけたのがバレて、ほかのカードも傷つけてるうちに、いちばん傷がついたのがジョーカーということになる、という、よくあるパターンである。


 結局怪盗のほうが、今日はこのくらいにしておこう、と、傷だらけの像をドローンに結びつけ、かねて用意のアドバルーン+モリワキラダーにつかまって去ることになり、おれとクルミは、揚げ物とウーロン茶の多い立食仲良しパーティの料理を、ミロクのために取り分けていた。


 両手に唐揚げがいっぱいの紙皿を持ったクルミは、これ以上持てません、というけど、ひとつをテーブルの上に置けばいいと思う。


「アドバルーンに乗って逃げられるわけないだろ、いくら怪盗でも。ダミーぶら下げて当人は屋上から非常階段を、変装を解いてすたすた、生徒会メンバーのふりをして逃走するんだよな」と、ミロクは言った。


 月の光が乏しく、街の明かりに照らされていた、ぶんぶんうるさいドローンは、屋上に待機していた狙撃班、つまりワタルが赤い光線、「目からビーム」によって落とされ、黒い煙と紅の炎を出しながら校庭外に落下していった。


 それの回収はミナセの仕事なので、ミナセとワタルの分も取り分けてやらなければなー、と3枚の紙皿と3つの紙コップに料理をセットしたところで、どたどたと廊下を走ってくる者たちの足音がした。


「え、なに? これってつまり、もう、えーっと、怪盗は、なんていうか、仕事し終えたの、本当に?」と、先頭を走っていた女子は言った。


 リアル寄りの黒めの髪に、黒っぽい虹彩、そしてリアルっぽいしゃべりかたと、リアルよりはだいぶ嘘寄りの体型で、足がすらっと長くてスカートが短い、それはおれも知っている子だった。


「まったくもう、なんでそんなに、ええ、だまされるのかなあ、本当に。つまりそれは、なんていうか、偽の生徒会長? みたいな、ですよね、本当に」


 しゃべり方が古今亭志ん朝なみにうざいその子は、真・生徒会長のルーク8号で、偽・生徒会長兼怪盗で覆面の男子、たぶんイケメンなキャラは「ルーク様」というのがスクールネームのようだった。


「あーっ」と、クルミは声をあげた。


「このこのこの、この子。お、お、覚えてますか、わ、わたしが学校の図書館の、その、「さかさま」の本? を調べてたときに、女子トイレに? 行きましたよね、その、そのときに会ったヒト? たぶん、そうかな、うん、たぶんそう」


 このようにリアル寄りの語りをそのままテキストにすると、ウザすぎるのでやめることにして。


「あたしんところにきた犯行予告は「今夜8時」って書いてあったのに、なんで早く来ちゃうんだよ、怪盗!」


 さすがモリワキ団っぽい犯行予告であるけど、おれは真相を知っている。


 いるとするなら、読者もたぶん知っている。


 さて、と、おれは手をたたき、みんなの注目を集めて言った。


「犯人はこの中に…………いるかいないかわからない!」


 おそらく校長なんじゃないかな、いやいるよ、どう考えてもルーク8号だろ、むしろ茶道 探偵部(仮)の誰かに決まってる、とにぎやかになった。


     *


 余興として、また嘘とリアルの違いを語ろう、とおれは言った。


 金の金庫の横にミロク、銀の金庫の横にはルーク8号に立ってもらい、その間におれが立つ。


「おれは嘘かリアルかわからないヒト。そしてふたりのうちどちらかが嘘で、どちらかがリアル。おれにリアルはどちらか聞きたいときはどうすればいい?」


 これは簡単やね、と、ミドリは言った。


「あなたはこのヒトの仲間ですか、とどちらか適当なヒトを指してウルフに聞く。ウルフが嘘で、指されたヒトがリアルの場合、「はい」と言い、嘘の場合は「いいえ」と言う。ウルフがリアルで、指されたヒトがリアルの場合も、「はい」と言い、嘘の場合も「いいえ」と答える」


「つまりその質問だと、おれが嘘かリアルか、というのは問題にならないけど、リアルと嘘は「はい」「いいえ」の答でわかる、ということね」


 この場にミナセとホワイトボードがあればもうすこしうまく説明できるとは思う。


 しかし、おれはミロクの仲間でリアルだから、ミロクが指された場合、「はい」と答えるはずなんだけど……おれたちが「嘘」グループだとしたらどうなんだろう。


     *


 その夜、おれはミナセに、冷たくなった唐揚げ・春巻きなどの揚げ物類の残りと、生ぬるくなったペットボトルのウーロン茶の残りを渡した。


「それがねえ、聞いてよウルフ。落ちたドローンと像を回収して戻ろうと思ったら、モリワキ団と思う集団に襲われちゃって……持って来れなかったんだよ」と、ミナセは言った。


 しかし、それが本当なのか嘘なのかは不明である。


 なにしろ、おれは自分が直接体験したこと以外は伝聞情報になるし、強奪された現場にはいなかったのだから。


 そのとおりミロクに報告すると、ミロクから返信が来た。


『別にいいんだよ、あいつはニセモノだから』


 意味がよくわからないので再度聞いてみた。


『あれ、じゃなくてあいつ。ニセモンじゃなくてニセモノ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ