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9-3・時間になったので立食パーティ

 広い校長室の家具はおおかた部屋のすみに片づけられて、真ん中には来客用のテーブルと、上に置かれたふたつの金庫があった。


 金庫は金色と銀色で、ひとつは最初から校長室にあったもの、もうひとつは生徒会室から持ってきたもので、中には同じような「踊る黄金像」が入っている。


 そのまわりを、警戒のための生徒会委員たちがぐるりと囲んでいる。


 ふむ、とミロクはふたつの像を取り出し、磨いて、とミドリに渡したので、汚れ具合で多少の違いがあったものはそっくり同じになったため、ミロクはミドリと相談して、片方を霊的な神々しさ、っぽいもので満たした。


「これをホンモノ、ということにして、だ」と、ミロクは金・銀それぞれの金庫にふたつの像をしまった。


 まず、ふたつの金庫の扉を閉める。


 そして、金の金庫を開けると、入れたはずの像が消えている。


 あわてるなー、と動揺しているみんなに言ったミロクは、金の扉を閉め、銀の扉を開けるけど、やはり中の像は消えている。


 納得しながらミロクは、銀の扉を閉めると、金の扉を開ける。


 するとそこには、ホンモノということにしておいた像が入っている。


 これはどういうことなんでしょう、と、クルミは質問した。


「つまり、最初の壺に隠れた貴公子が、別の壺を調べただけで帰っていく悪党どもが行ってしまうのを見て、別の壺に移るわけね。そうすると悪党は、やっぱもう一つの壺も調べないといけないんじゃないの、と言いながら戻ってくる。するとそこにもなにもないから、貴公子は助かった、という中国の故事に基づいた手だな」と、ミロクは言った。


「つまり、一度調べたところは二度は調べない、というのは嘘なんだな。RPGをやってた者なら、『全部調べたあとに、もう一度最初の壺を調べるとお宝がある』ということね」と、おれも言った。


 ミロクは両方の扉を開け、両方閉めて開けると、どちらの金庫からも像は消えている。


 ふたたび開けて閉めると、どちらにも像はある。


 ふふん、という感じでミロクは一同を見回した。


「シュレディンガーの金庫、つまり『踊る黄金像』は、扉を閉めると「あるのかないのか不確定になる」んだ、というのは嘘だけどな」


 ミロクは、銀の金庫の奥、内壁と思われる部分に手を伸ばすと、手首よりすこし深いぐらいにまでミロクの手は闇に隠れ、ニセモンと仮設定しておいた像が取り出された。


「マジック、つまり手品では鏡を使って隠すんだけど、今回は本当の魔法使い、ミドリがいるから、闇の偽内壁を出したり消したりして、像を見えたり見えなかったりしてたんだ。さて、ホンモノのほうは」と、ミロクは金の金庫の奥を調べた。


「ない! こっちの像は金庫の中から本当に消えてる!」


 いつの間にか、おれたちの仲間のミナセと、顔を隠した生徒会長のルークの姿は消え、おれの携帯端末も含めて、その場にいた者の数名からさまざまなブザー音がした。


 時間は18時、予定どおりだった。


「えーと、動かないでください、わたしたちはモリワキ団です」と、生徒会長に代わって覆面をしている女子高生が言ったけど、どう考えても音楽フェスティバルで面識のあったアヤコである。


 生徒会のみなさん、と思っていたうちの2/3ぐらいが、すばやく覆面をしたので、おれたちもかねて用意しておいた覆面と腕章を身につけたので、モリワキ団のメンバーは驚いたようだった。


 数日前、パーティグッズ専門店に特注の覆面と腕章をメイコが頼んでいたので、ついでにおれたちの分も用意できないかな、とお願いしておいたのである。


「えーと、それはなんか意味はあるんですか?」


「いや、特にないんだけどね。仲間だと思われたら縛られたりしないんじゃないかと」


 別にもう、秘宝は手に入れたので、あとはここで残念お疲れの立食パーティをするだけなのです、と、覆面のアヤコは言った。


 窓をどんどん、と叩く音と、ぶるぶる、と大型扇風機のような音がする。


 無視して校長室のみんなは飲食物を、広げたテーブルクロスの上に広げて、敵味方関係なく談笑しはじめてるけど、それでは申し訳ない、ということで、クルミが窓を開けて、えっ、と驚く役ね、とおれはささやいた。


「ははははは、残念だったな名探偵諸君、秘宝はすでにわれわれモリワキ団のものになっている」と、裏ボスの、明らかにルークだけど派手なマントとシルクハットを身に着けた怪盗は言った。


「えええええええええーっっっっ!!!!」


 それは驚きすぎだよ、クルミ。


「残念だったな怪盗、それはニセモンだ」とミロクは残っていた像を手にして言った。


「ホンモノは、ほら、上げている足の裏に傷があるんだ」


 だったら、私のだって、と怪盗は、ポケットを探ってコインを出し、像の足を削りはじめた。


「これでこっちもホンモノ!」


 こんな安易な方法で、ホンモノが簡単に作れていいものなんだろうか。


 しょせん、もとは東南アジアのおみやげ屋で手に入れただけのグッズなんだけれども。

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