9-1・下校時間までに間に合う犯行予告
そして連休明けの現在。
エタってしまった世界から来た3人の一年生は、五色豆を食べながらコスプレをして勉強している、という、一番最初の話に戻るのだった。
3人はそれぞれ、ウサギ、キツネ、ネコのように見える、いや、クルミはバニーガールで、ワタルはいつも通りの格好かな、それはともかく、3種の動物のつけ耳をつけて、それをときどきぴくぴく動かしながら学習を進めている。
なんでコスプレしてんの、と聞いたら、あやかしの気持ちがわかってもらえるように、と、あやかしさんたちにもらったのです、とクルミは言った。
バニーガールのあやかしっていたんだっけ。
「で、クルミはウサギ、で、ミドリはキツネ……」
「ちがーう、のよね。これはギンギツネなのね。ほら、ウサギ、ギンキツネ、ネコの順番やん」
意味があるのかどうかは不明だけど順番的にはそうだな。
「だとすると、ミロクはコブタで、ミナセはタヌキ……「き」ではじまって「う」ではじまる動物っていたかなあ」
「誰がコブタだ」と声がするほうを見ると、ミロクが戦国武将の本多忠勝みたいな、シカの角がついている兜をかぶっていた。
「私は、見ればわかるとおり、コジカだ」
いやそれ、大鹿でしょ。
「ぼくは、加山雄三」と、ミナセは、毛が薄いヒトがそれを隠しているようなカツラをかぶっていた。
カツラうんぬんはともかく、そもそも加山雄三って動物なのか。
「ウサギ、ぴょんぴょん」と言ってクルミは、はい、と次のミドリを指す。
「ギンギツネ、こんこん」、とミドリ、以下同。
「ネコ、にゃーお」
「コジカ、しかしか」
「加山雄三、幸せだなあ」
ウサギとコジカは鳴き声ではないけど、加山雄三は……審査中……。
しかし、もしこれが物語の中の話なら、作者は連休後の部員にコスプレをさせて五色豆を食べさせるため、だけに16万字のテキストを作ったことになる。
*
「音楽フェスティバルでは、モリワキ団の妨害工作は入りませんでしたよね」と、おれは一粒100キロカロリーはある五色豆を用心しながら食べつつ言った。
ちなみに、ネット配信での宣伝効果があって、郷土納税の返礼品として五色豆は、参加してもらったきょうだい自治体の希望額3位になったらしい。
1位は不動の「乙女かよ稲荷寿司」、2位は急上昇の「ヒュドラ鰻の蒲焼」だそうだ。
「ひょっとして、町内会長がモリワキなのでは?」とクルミは言った。
「誰がモリワキなのか、またモリワキ団というものは本当に存在するのか、という話は置いておいて」と、ワタルは言い、おもむろに自分の携帯端末の画面をおれたちに見せた。
『今夜18時、校内に保存してある秘宝『踊る黄金像』をいただきます モリワキ&モリワキ団』
「ふーん」と、ミロクは犯行予告を読みながら言った。
「一般生徒の下校時間までには来てくれるんだな。一応、届け出をすれば22時まで大丈夫なはずなんだけど」
「盗みのため、なんてのは理由になりませんからね、うんうん」とクルミは、ウサギ耳を前後に動かしながらうなずいた。
「だけど、そんな秘宝なんて聞いたことないよ。秘宝というより珍宝なのでは」と、ミナセは言った。
「ちんぽう」じゃなくて「ちんほう」と自粛した発音ではあったけど。
確かにおれもそんなのがあるとは知らなかった。
「なぜ『踊る黄金像』のような珍しいものがわが校にあるかに関しては、由来から話さないといけないだろう」
そして、ミロクが語りはじめた内容は、われわれを戦慄させるに十分なものだった。




