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8-6・やったぜ、あんきも!

 映画ならクランクアップで、出演者が集まって打ち上げするところなんだけど、おれは家に帰って、ミドリが渡してくれたマジック加速シートを広げ、翌日の朝までに音楽フェスティバルの動画を編集しなければならないのだった。


 おれはクラウドにアップロードされている、トータル数十ギガの動画データと、その半分程度の音響データを見て、腕を組み、手を組んでぼきぼきとしてから、さあやるか、と頬を叩いて気合を入れた。


 妖精たちは常時60匹ほどがカメラを回していて、フェスティバルはリハーサルも含めると8時間ぐらいだから、トータルで480時間。


 これを15分程度にまとめなければいけないんだけど……できるのか。


 シートの目盛りを慎重に10倍速にして、妖精王のレイチェルと隣人部、うちの生徒会と部員で用意した60機の携帯端末に接続し、シートの奥にモニターを置いて、60台のキーボードで編集する。


 そして、モニターの映像を1/10倍速で確認しながら編集する。


 ……なんてことはできるわけはないだろ、それに近いことはやったけど。


 真夜中すこしすぎくらいに、おじゃまするのよね、とミドリが、ミナセに連れられてやってきてくれたときには、映像は半分編集が終わっていて、トータル8+240時間ぐらいになっていた。


 音声はぼくのほうがあとで合わせるから、がりがり編集してね、と言って、ミナセはお風呂場に行ってしまい、ミドリはおれに、加速魔法には必要なマジカル・ビーンズの追加を渡して、隣にすわって、これもこれもこれもこれもカットなのね、と再編集しながら追加映像を入れてくれる。


 頑張らないと4時間のフェスティバル映像が12時間になってしまい、そんなの誰が見るんだよ、ということになるのだった。


 3分割とか6分割して、明け方までには3時間の、ほぼ全映像版の編集が終わり、「仮」ということで関係者にクラウドのファイルフォルダの場所を連絡しておき。


「うーん、ここにはできれば観客の顔とか、あっ、できれば会場全体の空撮とか欲しいんだけど、撮ってないんだよなー、それに個人情報の映像は使用許可が面倒くさい……」


「それに関しては、あやかし系が協力して、別ファイルにまとめてあるのよね。空を飛べる系もいるし、あやかしは基本顔出しオーケーだし」


 そうなの?


 結局、1時間以内にはまとまらなかったんだけど、ミドリはこれで大丈夫なのね、と言ってくれた。


「4倍速でアップして、ちゃんと視聴したいヒトは0.25倍速で見ればいいのよ」


 その手があったのか。


 ただ、一般的に知られてしまうと、学校の授業なんかは4倍の早さで進められそうで嫌な気がする。


     *


 動画の再生回数は、参加者みんなの宣伝もあって、作業後で寝ている間に10万viewいってて、その日の夜中には50万ぐらいになってた。


 やったぜ、あんきも!


 連休の間にはいろいろなことがあった。


 あやかしたちのところに行って、おいしいコーヒーをいただいたり、おいしいいなり寿司を食べたり、コスパのいいうな重を食べたりしながら異文化交流を深めて、クルミのあやかし憎悪も、うまいこと食い物でごまかせたらしく、エタってなくてもいいあやかしはいる、ってことがわかってもらえてよかった。


 先を急ぎすぎたのですこし話を戻して。


 編集作業が終わって夕方まで寝たその日、学校は休みだったけど、ミロクから報酬をもらったので来るように、という指令があったので、おれとミナセ、それにミドリは部室に行ったけど……この報酬とこのオチはひどいんじゃないかと思う。


 ミナセは五色豆の大袋をおれたちに渡してこう言った。


「はい、あや菓子」

という、ひどいオチがついたところで、ほとんどのみなさんは忘れていると思うけど、最初のエピソードを読んでみてください。この物語は、実はこのフェスティバルが終わって、みんなで五色豆を食べているところからはじまるのです。

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