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8-5・終わらない/なーななー

 音楽フェスティバルの時間は夕方から夜の8時まで、約4時間ぐらいだろうか。


 町おこしのための地元自治体のイベントでも、今はネットというものがあるから、しょぼい内輪うけのものでも全世界に発信・配信することができるため、どこもそれなりにしっかりしてきている、はずである。


 それにしても、あやかしっぽいのが結構参加しているのは気にはなるけど、地域ときょうだい自治体に住んでいるのはヒトに限らないから、半分ぐらいはそうなるんだろうな。


 タヌキ、キツネ、ネコ、みたいな感じで。


     *


 おれたち茶道 探偵部(仮)のみんなは、出番のないところでも裏方として、生徒会委員のキタロー子じゃなくてアヤコの指示に従ってセッティングその他で動いていた。


 えーと、こんな重たいの、大丈夫なの、とおれたちの女子メンバーを心配してくれたりするけど、一番力がなさそうなクルミだって本気出せばおれの倍ぐらいのものは運べるのである。


 さらにミドリは、万能の魔力使いなので、チートにひょいひょい、と、楽器を使わないヒトたちの裏で次のステージを用意できてしまう。


 やっぱそういうの丸見えなのは演出上まずいので、黒くて重い、鉛のような狭霧で隠してもいいかな、とミドリが聞くので、いいんじゃないの、どうせ誰も黒死館殺人事件なんて読んでないだろうし、読んでても著作権切れだから、とおれは答えた。


 ほぼ満月の月が東の空にぼんやりと、そしてしだいにくっきりと見えるころには、汗ばんでた体も適度に冷えてきたので、おれたちの前のグループの演奏を鑑賞するときには、ミドリはどこからか七輪と炭を用意した。


 メンバーは全員70代という高齢者ロックバンド「老人ぐ・素うどんず」で、立てば松葉杖座れば車椅子、歩く姿はロックスター、というヒトたちである。


 ここぞとばかり、ミドリは七輪に例の、放射性物質なみに危険な黄色い粉をくべると、ぱたぱたと扇子であおいだので、黄色い煙がステージに向かって舞った。


「アイ・キャン、ゲ、ゲ、ゲ、ふわーっくしょん、サティ……ファ、ファ、ファ、ふぁっくしょん、ふぁっくしょい、くしょいん、くしょ、くしょ、くしょん」


 ボーカルのヒトは涙と鼻水ずりずりである。


「コショウとトウガラシがないから、スギ花粉~~」とミドリは、落語「くしゃみ講釈」と同じようなオチをつけた。


 高齢者ロックバンドの歌は「さてぃすふぁっくしょん」というやつだったらしい。


 それ以外にも無理やり、黄色い煙をステージ演出ぐらいに感じるぐらいの勢いで、防塵サングラスとマスクをつけて何曲かやってくれたけど、ボーカルのヒトは舞台から降りて、ミドリが持っていたスギ花粉が入っていた缶を奪ってばらまきはじめた。


 ウォー、キラー、客席ファイティングマンである。


     *


 こういうのはいつまで続けていてもいいんだけど、全然話が先に進まないのでショートカットする。


 異世界エタり人の女子3人によるユニット「キャリーズ」の歌は、まずミドリによる「ビリー・ジーン」のソロで、とてもうまい。


 続いて「スリラー」、バックダンサーは、部室のそばにある池のまわりで育てた、ゾンビじゃなくてゴーレムたち。


 オリジナルがルックスと体型では定評のある合唱バドミントン部のコミーなので、腐りかけみたいには見えるけど雰囲気出てる。


 最後には頭からブタの血、みたいに見えるけどたぶん違ってますよね、を浴びたメンバーが血まみれになってゾンビスタイルで、残っていた客に襲いかかるもんだから阿鼻叫喚。


 なお、ブタの血みたいなのはやはり魔術的演出なので、ヒトの服に触れたりすると自動的に、赤い狭霧のようなものになって蒸発するから汚れない。


 そして、だいぶおれたちの悪ふざけにつきあわせて申し訳ない、と思いながらも、最後はあいつらですよ。


 キーボード、クロサ、びよよーん。


 ドラム、ミロク、ずだだだん。


 ギター、ミドリ、ぎゅぎゅぎゅーん。


 最後に、ベース、クロキ、ぼぼばぼん。


 まず演奏する曲は、10分ぐらいかかるドリーム・シアターの「ダンス・オブ・エターニティ」。


 ドリーム・シアター、通称どり虫に関しては説明が難しいので、バントと曲に興味を持ったらウィキペディアとYouTubeで確認してくれればいい。


 要するにプログレッシヴ・メタルというジャンルに属するグループで、キーボードは全盛期のキース・エマーソンが世界一のキーボード奏者だったときに2位だったジョーダン・ルーデスの超絶技法を、クロサは的確に再現してる。


 ミロクも、まったくのど素人だったドラムを、3倍速の加速魔法を使ってなんだけど、全然負けていない。


 演奏しているうちに、逃げていた客や、快適な騒音が気になって集まりはじめたヒトたちで客席がほぼ一杯になった。


 そのあと2曲ほど超絶な演奏をしたあと、最後はU2の「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー」、日本では映画「SING/ネクスト・ステージ」の中の「終わりなき旅」という名で知られてる、ゴスペルっぽい曲である。


 映画と同じように、ワタルがステージに立って歌いはじめ、ギターのミドリ、ベースのクロキ、そしてヘトヘトになったミロクの代わりにクロサがドラムを叩いて、ステージに出てきたのは……ボノ、じゃなくてライオン、でもなくて狼男。


 あれはうちの喫茶のマスターの友だちで、ミチガミっていうんだよ、マジ狼男、と、となりにいたクロネコの女子中学生が小声で教えてくれた。


 はい、それではみんな一緒に。


 終わらない/なーななー/ななななー。


 JASRACの関係で歌詞は一部省略なのである。


 いい動画がたくさん撮れたなー、じゃあ撤収だ、と立ちあがりかけたおれの肩に、ミロクは手を当てた。


「お前の、本当の、仕事は、これからだ」


 すこし息を切らしてる。


 確かにそうなんだよなー。

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