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1-1・やれやれ、またトノのご退屈がはじまった

「あー、退屈だ退屈だ」と、部室の片隅に置いてあるソファの上で、ミロクはごろごろ~ごろごろ~、ごろごろごろごろしながら言った。


「やれやれ、またトノのご退屈がはじまった」と、おれは言った。旗本退屈姫、それがミロクの別名である。姫ではなくて部長ですけどね。つまりここは退屈部、ではなくて、「茶道 探偵部(仮)」である。


 季節はゴールデンウィークが終わって初夏の真っ最中。県民の日というローカルな休日がある以外は、夏休みになるまで勉強をし続けなければならない、面倒くさい時期である。


 おれたちの部室は、正規校舎・特別棟よりもすこし離れた別邸で、ちゃんとした茶室も一角に設けられていたり、掘りごたつがあったり、冷蔵庫や扇風機もある(クーラーはない)こじんまりした秘密基地として存在している。学校内で存在を知るものは多くない。


 泉とそこから流れる小川、かなり広めの庭、そして部室を囲む竹林には小鳥が集まり、季節によっては早朝からやかましい。ただ、一般の生徒にはおれたちの部室の存在は知られていない。異世界魔法を使える本物の魔術師がゆるい結界を張っているため、「茶道 探偵部(仮)」、略して茶探部の存在を知っているヒトしかこの場所にはたどり着くことはできないのである。


 結界を通して見上げると、空の色はほんのすこし緑の紗がかかっている。


 しかし太陽の日差しはぎらぎらで、庭の樹木や草も新緑が美しい。


 夏休みが終わるまで部長である予定のミロクは三年生の先輩で、汚れが目立ちそうな黒系統の服を普段は着ている。以前はツインテールができそうなぐらい長かった黒髪は、今はやや短めである。総合型選抜のための写真に使えるぐらいばっさりやって、と、雑に美容師に頼んだら、本当にばっさりやられたという話である。


「いろいろ活動実績積んだじゃないですか。迷いネコ見つけたり、登校拒否の生徒を助けたり、町内会のゴミ掃除やったり、商店街の町おこしイベント手伝ったり」


「それはラノベ、具体的にはガガガ文庫がやっていることだ。あー、老中の陰謀とか、隠し地下通路とか、南蛮密貿易みたいなのが欲しい~」と、ミロクは引き続きダダをこねまくっている。しかしそれは佐伯泰英の物語だろう。

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