1話 始まりの事故
ピピッ、ピピッ、ピピッ…少しうるさいアラームが鳴り響く。
「…ん、もう朝かあ…ふわあ…準備しなきゃ。」
僕の名前は真白水希。別にごく普通の高校生で、特別な事は何も無い。
転生系の主人公みたいな実は人間じゃないとか、そう言う事を妄想した事は沢山あるけど、それが本当になった事は一度も無い。
「おはよー。…まあ誰も居ないんだけどね」
僕の親は2人とも有名なアメリカの化粧品会社の社員で、母さんは開発員、父さんはそれのアシストをしてるって聞いた。それで色んな場所を飛び回っている。
そして高校生になってからは、2人は仕事に専念して貰っていた。
だから家の事は殆ど自分がやっていた。それのお陰で実技科目は結構良い成績を取ってた。
「よし、支度終わり!さあ、今日も頑張りますか!」
この時の僕は、今日も普通の1日、変わり映えのない日なんだろうと勝手に思っていた。
…僕がいつも妄想している夢物語の様な、あんな事が起きるまでは。
時は流れて、放課後の信号待ちをしていた。
別に普通の事だから、特に何も思わずにじっと待っていた。
目の前に女の子が居るけど、その人のことなんて分からない。
ちょっと肩を上げてたり、少し上下に動いていて機嫌が良さそうだから、音楽でも聴いてるんだろう。
「もう少し伸びないかなぁ…」
僕は目の前の女子を見ながら自分の身長が低いと思っていた。
……おっと、こういう思考は駄目だって父さんが言ってたな。というかこの人身長高すぎない?目測190cmはあるけど…モデルだったりするのかな?
あといま1人だけど、友達がいないわけじゃないからね?いや確かに少ないけど……
そんなことを考えていると信号が変わり、僕も女子も歩き出した。
ーゴオオオッ!
「ん…?」
僕は車の音が気になり、右側の車を見た。その車は明らかに異質だった。
もうすぐ僕が歩いている横断歩道に入るのに、全くスピードを落とさない。
運転席を見ると運転手は寝ているのか何なのか知らないけど、ハンドルを握らずに倒れ込んでいた。
「なっ⁉︎」
僕は異変に気がつき下がろうとしたが、前の女子はイヤホンをしてるのか気がついていない。
このままだと100%轢かれてしまうだろう。
というか今気がついてももう遅い。
「……ごめんね?」
「……え?」
その時僕は少し悪いと思いながら、前の女子を轢かれない場所まで突き飛ばした。
その後僕が車を見ると、目に映るあらゆる動きが遅く見えた。不思議と恐怖や焦りは無かった。
これがタキサイキア現象ってやつかな?なーんて呑気に考えていたら……
って、何で僕こんな呑気なんだ?いや、そうか……
前に1度だけ、自殺しようとしたからか……まあ、だからと言って死への恐怖心が無い訳じゃないけど…
ーガンッ!
車は僕に凄い勢いでぶつかり、僕は吹っ飛ばされた。
しかもその後運悪く別の車に後頭部をぶつけてしまい、その事を自覚した時に意識を失った
起きてから最初に見えたのは、黒色の天井だった。不思議と痛みは無い
「ん…あれ?ここどこ?」
体は……動くな。とりあえず僕は起き上がった。
体を見ると傷なんか一つも無かった
「えっと…あの後どうなったんだっけ?」
ちょっと思い出そうとしてみたが、中々思い出せなかった。別のことなら思い出せるかなと思ったから、とりあえず自分の事を思い出してみる
「僕は真白水希16歳…ちゃんと分かる。次は辺りを探索するか」
辺りを見渡して見ると、ここは廊下で扉が一枚あると分かった
「絶対怪しいから入りたく無いけど…行かなくちゃいけないみたいだ」
僕は少し身構えながら扉を開けた