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国々の内情

 

 sideリース


「ただいまっと」


 アタシは閉じられたドアを足で器用に開けると、両手に抱えた荷物をテーブルに置いた。 置いた衝撃で紙袋から果物が転がり落ちていく。 それを拾うと、黒衣の袖で拭い、齧りつく。 思ったより酸味が強い、アタシは自然に渋い顔になりながらも食べ進めて行く。


「・・・」


 アタシは果実を食べながらベットで眠る娘を見下ろした。 あの激闘から三日が経った。 アタシとドヤ顔は意識を失った後、レイメイに連れられ、付近の街の宿で休息を取っている。 アタシは半日程で意識を取り戻したが、この娘はまだ意識を取り戻していない。


「何の夢見てたんだか」


 眠る娘の目から頬に涙が伝っていた。 アタシはそれを指で優しく拭っていく。 


「守ってやれなくて、ごめんね」


 眠るドヤ顔の横に腰かけ、小さな声で呟く。 あの時、守ってくれたのはレイメイであって自分ではなかった。 そのレイメイもアタシが意識を取り戻した後、直ぐにロイヤルクラウンへ戻って行った。 ウィンクドレス、奴の身体の“ネタ”を伝える為に。


 アタシは自分が手に持っている食べかけの果実を見ながら先の戦闘の事を考えた。



 “ダブルを使いこなせていない出来損ない”


 ウィンクドレスの言葉があれからずっと頭の中で響いている。 ウィンクドレス。 三美凶の次女。 三美凶の中でも異質な存在。 化け物だとは分かっていたけど、あれ程の者とは思ってなかったね。 随分前に戦ったオルベルスでもあれ程の強さじゃなかった。


 ダブルを使いこなせていない、か。 このアタシが? 自分で言うのもなんだけど、これでも暴走したダブルを何人も仕留めてきた。 アタシは暴走もせずダブルの力をコントロールできるし、実力にも少しは自信がある。 そのアタシがウィンクドレスにはまるで赤子扱い。 


「笑えないね」


 アタシは眠るドヤ顔を見つめると、ドヤ顔の髪を一撫でし、持っていた果実をゴミ箱へ放り込んだ。


「・・・クソッ」


 アタシは苛立ちを隠せないまま、部屋を後にした。 部屋ではまだ熟していない果実が暗闇の箱の中で転がっていた。










「御母様の御言葉まで無視するなんて、どういうおつもりですか?」


「うるさい」


「はぁ・・・ドレスお姉様、身勝手な行動は止めてくださいと何度も言っているではないですか」


「ふん。 それにしても相変わらず辛気臭い所」


 ウィンクドレスとプラムベティが次元を超え、現れたのは東の大陸のある国だった所。 魔女が支配する闇の国。 常に雲に覆われ、陽の光も無く、異形の魔物や霊体が飛び惑う地だった。


「あんな陽の光が当たる場所に好んで行くお姉様がおかしいのです。 それより、いつまでその姿でおられるのですか?」


「好きにさせろ」


 ウィンクドレスの言葉を聞き、プラムベティはやれやれと頭を振った。


 いつもそうだ。 ドレスお姉様が勝手な行動ばかりするせいで自分がオルベルスお姉様から小言を言われる。 嫌味の一つくらい言いたくなる。 しかし、私はそれをグッと堪え、黙って歩く。 言った所で一緒だ。 ドレスお姉様は私の言葉なんかでは止まる筈もない。 意味のない事はしたくない。


 二人は城内へ入り、薄暗い通路を魔女の間まで歩いて行く。 先程以降、会話は無い。 黙々と歩く二人の目の前に、女性が歩いてくる。 ウィンクドレスが足を止め、続いてプラムベティも足を止める。 女性も足を止め、完全に対峙する形となっている。 


「死臭臭い死人使いか。 道を開けろ」


 先に口を開いたのはウィンクドレスだった。 明らかな嫌悪感を抱いた言葉に、女性、ヴァレリアーナは無表情で答えた。


「ごめんなさい。 でも、私も貴方も対等な筈。 通りたければ横からどうぞ」


「対等? ついに脳みそまで腐ったか?」


「腐る脳が無い貴方よりマシ。 これは失言、ね。 ごめんなさい」


「いい度胸だ。 死ね」


「ドレスお姉様!」


 ウィンクドレスがヴァレリアーナに掴みかかるその寸前、先も見えぬ暗闇の通路から声が響いてくる。


「ドレス。 今まで何処にいたの?」


 暗闇から姿を現したのはオルベルスネーシアだった。 その妖艶な美女は徐々に近づいてくると、直ぐに状況を理解したのか、軽く溜息を付きながら口を開いた。


「ヴァレリアーナ。 貴方の用は済んだでしょう?」


「ごめんなさい。 では、私はこれで」


「逃がすと思うか? 腐った死人が。 二度と生き返れない様にしてやる」


「ドレス、止めなさい」


 ヴァレリアーナは暫くウィンクドレスの瞳を見つめていたが、何も言わず、横を通り抜けて暗闇に消えていった。


「何故止めた。 貴様も殺されたいか?」


「今はそんな事している場合ではないわ。 御母様がお呼びよ」


「あんな女、知った事か」


「ドレス」


 オルベルスネーシアの威圧する言葉と瞳を向けられたウィンクドレスはそれでも尚、オルベルスネーシアに噛みつかんとする程の瞳を向けた。 そんな二人を見ながらプラムベティは又、やれやれと頭を振った。


 どれ程睨み合いが経ったか、ウィンクドレスが目を逸らす。 それを見たオルベルスネーシアは口を開いた。


「ドレス。 良いわね?」


「終わったら直ぐ出る。 いいな」


「ええ、構わないわ。 それから御母様に会う前に、着替えた方がいいわ」


「・・・ちっ」


 小さく舌打ちしたウィンクドレスは一人、先の暗闇に身を溶かした。 溶ける寸前、真の姿から元の姿に戻りながら。 残されたオルベルスネーシアとプラムベティは黙ってウィンクドレスの後を歩いて行く。 プラムベティはその時、薄暗い通路の中であってもウィンクドレスが向かった方向へ血痕が続いているのを見逃さなかった。









 sideロイヤルクラウン


「状況は分かりました。 三人共命があって何よりです」


「あのまま戦っていたら危なかったヨ。 プラムベティが来て助かったネ」


「敵の増援が来て助かった、なんて言うものではありませんわ」


「状況が状況よ。 リースにしろドヤ顔にしろ亡くしていたらかなりの戦力ダウンだわ」


 ロイヤルクラウンの会議室ではレイメイが各部隊長と総督のアルテアに報告を行っていた。 


「それから、最後に一つ重要な事ヨ。 ウィンクドレスの身体、というより技の“ネタ”が分かったかもしれないヨ」


「本当? だとしたらレイメイもリースもドヤ顔もかなりの御手柄ね」


 レイメイの言葉にアンナが嬉しそうな表情で答えた。 


「そうヨ。 リースが言うには“ウィンクドレスは攻撃される瞬間に全ての攻撃を防ぐ防護壁を身体に纏っている”そうヨ」


 レイメイの言葉にアンナもアルテアも何か思案する姿を見せた。 そんな中、クイーンがレイメイに問いただす。


「全ての攻撃を防ぐ防護壁? じゃあ、ウィンクドレスにダメージを与える事はできないと?」


「それもそうじゃないみたいヨ。 少なくても私の万里千拳は当たったヨ。 あの手ごたえは防護壁が張られている感じじゃなかったヨ」


「どういう事? 全ての攻撃を防ぐ筈なのにレイメイの一撃は当たったなんて」


 クイーン、レイメイ、アンナが三人で悩んでいると、思案していたアルテアが口を開いた。


「予期せぬ攻撃・・・ですか?」


「予期せぬ?」


「レイメイ、貴方は先程、一撃を当てたと仰いましたが、その時の状況はどうでしたか?」


 アルテアに問われ、レイメイは当時の状況を詳しく説明した。 説明している内にレイメイも合点が合ってきたのか、険しい顔つきになり始める。


「成程? つまり、ウィンクドレスはレイメイの完全に空気を消せる状態で予期せぬ状態で密着された」


「そして、防護壁を張る前に一撃を放たれた、という訳ですわね」


「間に合わなかったという事ですね」


「状況から考えるとそうなるネ。 そうか、だからリースの攻撃は全て防がれて私の一撃が入ったのカ・・・」


「でも、そうなるとウィンクドレスとまともに戦りあえるのはレイメイくらいしかいません」


 アンナの言葉にアルテアは目を瞑り再度思案する。 そんなアルテアを三人は黙って見つめていた。 暫くした後、アルテアが目を開いた。


「レイメイ、ウィンクドレスの方は貴方に任せます。 彼女の事です、暫くしたらまた、姿を現すでしょう。 その際はリースと二人で対応を。 ですが、深追いは厳禁です」


「分かったよ。 私は此処でリースからと諜報部からの連絡を待つヨ」


 レイメイを指示を出したアルテアは、次はアンナへと顔を向けて口を開いた。


「アンナ、申し訳ないのですが、イリーナに頼み事はできますか?」


「構いません。 イリーナ」


 アンナが名前を呼ぶと、初めからそこにいたかのようにイリーナが姿を現した。 その姿を確認したアルテアはイリーナへと指示を出した。


「イリーナ、貴方に頼みたいことがあります」


「はい」


「ブルデンバウム王国に向かってください。 この書状を国王に渡せば話は通ります」


「はい。 では、直ぐに」


 アルテアは一つの書状をイリーナに手渡した。 受け取ったイリーナは大事そうに書状を懐に仕舞うと、その場から静かに消えてしまった。 指示を出したアルテアにクイーンが言葉を掛ける。


「アルテア様、もしや“彼女”を?」


「はい。 北の国最大の王国、ブルデンバウム。 そんな国で最強と名高い彼女をお借りします」


「やはり・・・。 よくブルデンバウム王が許可しましたわね」


「国王とは昔少し・・・。 それに、平和の為ならと快く快諾してくれるでしょう。 幸い、あの王国は彼女以外にも手練れがいます。 長くは無理でしょうが、暫くなら彼女を受け入れられるでしょう」


「クイーン、イリーナならブルデンバウムには十日あればつくわ。 受け入れは任せるわよ?」


「分かってますわ。 失礼が無い様にしますわ」




「彼女なら必ずこの国、いえ、この世界の平和の為、力を尽くしてくれるでしょう。 そう、ソフィアなら」






挿絵(By みてみん)

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