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ドヤ顔が得意な女剣士は勘違い病が凄まじい  作者: 凪雨
ロイヤルクラウン編
12/57

稀少種

 

 『母様ー!』


 『・・・』


 『母様?』


 『・・・』


 『か・・・』


 『ほほほっ。 早う此方へこぬか』





 「うああっ!!」


 私はガバッと起き上がり、荒い呼吸を続けた。 汗が噴き出る、だけど身体は恐ろしい程冷たい。 暫く一点を見つめ、先程の夢を思い出す。


 母様がなんで、誰なのよあの人。 でも見たことがある気がする。 だけど思い出したくない気もする。 思い出したら心が壊れてしまう気がする。 全部予感にすぎないけどそう思ってしまうわ。


 動機が収まり始め、私はようやく辺りを見渡し始める。


 「何処、ここ」


 広い空間の真ん中に私のいるベッドが一つ置いてあり、周囲は壁に覆われ出入口である木の扉が不自然な雰囲気を出している部屋だった。


 医務室? それにしては変な所。 私確かダリアと模擬戦闘してて、それで負けてて、その時誰かの声を聞いた気がするんだけど思い出せない。 何にせよ負けた私を誰かがここまで運んだのね。


 ボスッとベットに身体を預けると、私は悔しさで唇を噛み締める。


 「ごめんエマ。 勝てなかったわ。 ごめん」


 後悔を感じていると扉が開き、見知った顔が入ってくる。 私は上半身だけを起こすとそちらに顔を向けた。


 「起きたか。悪いがお前の事を調べさせてもらった」


 「ロザリーさん。 私の事ですか?」


 「出身はダロだそうだな。 歳は十九。 間違いではないな?」


 「はい。 間違いありません」


 「いつからだ」


 「え?」


 「いつから旅をしている」


 「村を出たのは二年前です。 色々な土地を旅してロイヤルクラウンを目指したのが一月前になります」


 「間違いないな?」


 「はい」


 私がハッキリそう答えると、ロザリーさんは少し考えこんだ後、私を見つめて口を開いた。


 「そうか。 暫く寝ていろ。 まずは身体を癒せ。 それと、許可が出るまではここから出られん。 食事は三回。 手洗いは入口にいる者に声をかけろ。 連れ添う手筈になっている」


 「えっ、あ、はい」


 早口で要件だけ告げるとロザリーさんは踵を返して扉に向かって行った。 そのままノブを掴むと、此方を振り返り口を開いた。


 「左腕は何ともないか?」


 「え? 別になんとも」


 言われて左腕を動かして見せる私を見て、ロザリーさんは険しい顔つきになった。


 何? 私の腕がどうかしたのかしら?


 「・・・そうか」


 それだけ言うとロザリーさんは部屋を出て行った。 


 医務室にしてはおかしいと思っていたけどこれじゃ独房みたいなものじゃない。 負けた奴は用済みで身体を治したらロイヤルクラウンから出ていけって訳? 厳しいわねほんと。 それにしてもさっきから身体が怠い。 考えるのは後にして少し休もう。


 私は目を瞑ると直ぐに深い眠りについた。






 「あいつをここから出すな。 手洗いの時は部隊兵を付き添わせろ。 食事を運ぶ時は十分に用心しろ」


 「「はい」」


 入口にいる黒服のメイドと黄服のメイドにそう伝えるとロザリーは早足に上階へと向かった。


 ロザリーが上階に入ると、黒い絨毯が廊下を張っており、自然と身が引き締まる思いがした。 長い廊下を歩き、一つの部屋の前に立ち止まると一度大きく深呼吸し、ノックを行った。


 「どうぞ」


 中から女性の声が聞こえると、ロザリーは扉を開き頭を下げ中に入って行った。





 

 「ドヤ顔ちゃん大丈夫かな~?」


 「分からないわ。 ロザリー様の話によると命に別状はないという事だし」


 「ダリアも良かったよね~意識も戻ってるし」


 「ええ。 本当に殺されると思ったわ」


 ノーティスとエマは黒メイドから調書を取られ自室に帰されていた。 調書といっても二人は先日あったばかりの人物の事はよく分からず、何か新たな情報を得られる訳でもなかった。


 「ノーティスちゃん。 ドヤ顔ちゃん凄く強かったよね~」


 「強いというよりあれは人が変わったように見えたわ。 凄い空気だったし」


 「なんか震える空気だったよね~」


 「どう言っていいか分からないけど一つだけハッキリ分かったのは、凄い冷たい空気だった」


 「私は先見眼はあまり強くないからよく分からないけど~でも凄い怖かったよ・・・」


 「ええ。 寒気がしたわ」


 二人で先程の件を話していたが、部屋の扉のノックにノーティスが対応した。 扉を開けると立っていたのはフレデリカだった。


 「よろしいですか?」


 「ええ。 どうしたの? ダリアも意識は戻ったんでしょう?」


 「はい。 連絡です。 今日の模擬戦闘は中止に。 一日待機となりました。 後、少しお話があります」


 「わかったわ。 取り合えず入って? お茶を淹れるから」


 「失礼します」


 フレデリカを中に入れ、ノーティスがお茶を淹れる。 フレデリカが備え付けられた椅子に腰を掛けるとエマは口を開いた。


 「何かあったの~?」


 「ダリア様の件でお話が」


 「ダリア~? もしかして体調が悪化したとか~?」


 「いえ、そちらの方は大丈夫です」


 「良かった~」


 「それで、ダリアが何なの?」


 ノーティスがお茶をフレデリカの前に置くと、自分のベッドに腰掛ける。


 「ありがとうございます。 ダリア様がお会いしたいと」


 「あの娘に?」


 「はい。 会って話がしたいと」


 「あの娘は今、特別医療室よ。 面会もできないわ」


 「分かっています。 戻られてからで良いのです」


 「戻って来ない可能性もあるわよ」


 ノーティスの言葉にエマもフレデリカも黙って俯いた。 自分の意思ではないにせよ模擬戦闘相手を殺しかけ、ロザリーの手を煩わせる程の事をしたのだ。 運が良くて追放。 悪ければそのまま独房暮らしだ。


 「折角ファンにしてくれたのにな~」


 「ファン? ファンとは?」


 エマの独り言にフレデリカが首を傾げながらエマに振り向いた。


 「ああ、あの子の夢らしいわよ。 世界中を自分のファンにするって。 子供の夢ね」


 「私はその一号なんだよ~いいでしょ~」


 「確かに子供が言う夢かもしれませんが素敵ですね」


 「フレデリカ。 あなたはまともだと思いたかったわ」


 頭を軽く抑えるノーティスを見ながらフレデリカは続けた。


 「夢があるのは素敵ですよ。 何にせよです」


 「うんうん~私も頑張らなきゃ~ってなるよね~」


 「悪い子じゃないけどね。 自信過剰の馬鹿な所がちょっとね。 まぁダリアの件は分かったわ。 もし戻ったら伝えておくわ」


 「よろしくお願いします。 しかし、やはりここは問題児部屋ですね」


 フレデリカの言葉にエマが苦笑いしながら答えた。


 「本当だよね~ノーティスちゃんに話しかける子いないもんね~雰囲気が悪いのかな~?」


 「あなたが言う? あなた武器は作れるけど戦闘は全然じゃない」


 「あはは~ダリアがイライラするのも分かるかも~」


 「ダリア様がお二人によく突っかかるのは羨ましいんだと思います」


 フレデリカの言葉に二人共目が点になった。 何をどう思ってノーティスとエマが羨ましいのか、二人共心底分からない顔をしていた。 


 「う、羨ましい? どうしてそうなるのよ。 良家の娘で容姿端麗。 戦闘もできるダリアの方が羨ましいわ」


 「うんうん~ダリアのが羨ましいよ~」


 「ダリア様には友達がいませんでした。 今でもあまり良く思っていない人も多いでしょう」


 「話が本当なら羨ましいから突っかかる性格だもの。 それはそうじゃない?」


 「ノーティスちゃんも友達は私とドヤ顔ちゃんくらいしかいないよ~?」


 「五月蠅いわよ、エマ」


 「確かにダリア様は性格に難があると思います。 ですが今回の件で何か変わるかもしれません」


 「何故? 最後は確かに豹変したあの娘に負けたかもしれないけど」


 「ダリア様がどうしても会って話をしたいと。 ここまで言うのは初めてです」


 そう言うとフレデリカは一口お茶を飲むと軽く息をついた。


 「もしかしたら直接触れていたダリア様だけ何かを感じたのかもしれません」


 「何を感じたっていうのかしらね」


 「分かりません。 それを確認されたいのでしょう」


 その後は三人でたわいもない話を続け、お茶を飲み終わったフレデリカは席を立った。


 「ご馳走様でした。 それでは明日また」


 「ええ。 お疲れ様」


 「フレデリカちゃんまた明日ね~」


 扉を閉めるとフレデリカは医務室のダリアの元に向かった。 何であれ、ダリアが誰かに興味を持つのは珍しい事だ。 それが嬉しいのか、フレデリカの口元は少しだけ緩んでいた。




 sideロザリー

  

 「最近ハーブティーに凝っているの」


 「私などにありがとうございます」


 「それで、どうだったの?」


 私の前にハーブティーの入ったカップを置き、目の間のソファーに座り、自身が淹れたハーブティーを口にしながら微笑む女性を見つめながら口を開いた。

 

 「アンナ様の言う通りでした。 記憶を無くしています」


 「そう。 研鑽場で見た時妙な空気をしていたからイリーナに頼んで調べて貰ったの。 オリガも探りを入れていたみたいだけど」


 「その件ですが、オリガにしろクロウにしろ責任問題ではないですか?」


 「あの二人を責める事はできないわ。 あの子の空気は私でも見た事なかったし。 現にオリガと同じ階級のあなたも初見で分からなかったんでしょう?」


 「それはそうですが・・・」


 「それに先見眼はあなたよりオリガの方が強い。 そのオリガが見極められなかったとなると二人の件は不問にするのが当然ね。 問題はあの子の処遇をどうするかよ」


 アンナはそう言うと再度カップに口を付け満足気に微笑んでいる。


 分かっている。 アンナ様やオリガですら見極められなかったという事は私では当然見極められない。 しかし、あの娘は危険だ。 直に打ち合った私には分かる。 あの娘はいつかロイヤルクラウンに厄災をもたらす危険性がある。


 「殺気が漏れてるわね。 気持ちは分かるけど恐らく総督案件になるわ」


 「申し訳ありません。 東からの密偵という可能性はありませんか?」


 アンナは手にしたハーブティーの中に映る自身を見つめながら口を開いた。


 「密偵にしては暴れすぎ。 それに余りにも人間臭い」


 「へし折った腕が既に回復を。 ダブルの可能性はありますか?」


 「ダブルは稀少種。 確かに怪我の回復は早い、可能性は高いわ。 ただ、ダブルの空気では無いのだけれどね。 一応その系統に強い者を呼びましょうか」


 「“あの方”をですか? 何処にいるかも分からないのではないですか?」


 「イリーナに頼んでみましょう。 後は私から各幹部に連絡するわ」


 「よろしくお願いします」


 アンナ様が城内に居られて良かった。 私の中で幹部の部隊長の中で常識ある方。 そもそも五人の幹部部隊長の中でも話に出た一人は好き勝手やられる方、一人は地下に引き籠り続け、残りのクイーン様は現在城内に居られず。 最後の一人に至っては好戦的すぎる。 何が起こるか分からないからな。


 私はあの娘との会話でどうしても聞いて起きたい事があり、再度口を開いた。


 「二年前です。 ダロの村から旅立ったのは」


 「嘘。 という可能性は?」


 「ありません。 余りにも自然な対応でした」


 「二年。 その前の事は?」


 「まだそこまでは。 一先ず報告をと思いましたので」


 「良い判断ね。 何が原因で記憶が蘇るか分からないから迂闊には入り込めないわね」


 「ご存じでしょうがダロは十年も前に滅んでいます」

 

 「凄惨だったそうね」


 「当時の報告書によるものですが小さいといえ村人は全滅。 一人を除いて全員外傷が無かったにもかかわらず、心臓を引き抜かれています。 恐らくは口から直接・・・」


 「そんな事が出来る魔族や魔物はいない」


 「はい。 そしてただ一人夥しい血痕に包まれ息絶えていたのがいます」


 「名前は確か・・・」


 「エスター。 付近の村の者から情報を提供してもらったと報告書にあります」


 「かなり腕の立つ者だったそうね」


 「付近の魔族を狩っていたと」


 「ボルム山脈に蔓延る魔族は強い。 ここでいう部隊兵レベルはあると考えていい。 幸いあそこに住む魔族は己の領土から外に出たがらないけど」


 「そんな奴らを楽に狩っていたとなると、我がロイヤルクラウンの幹部部隊長にも匹敵する可能性もあります」


 「そうね。 兎に角やるべき事はあるわ。 あの子の空白の八年を調べ上げる事。 ダブルの可能性がある為、彼女を探し此処に連れてくる事。 後は私が総督及び各幹部に報告する事。 この三つ」


 「暴れ始めたらどうしましょうか」


 「私を呼びなさい。直接見てみたいから。 出来るだけ先見眼を使って見ているけど不意の時もあるわ」


 「分かりました」


 私はそう言うと、アンナ様が淹れてくださったハーブティーに口を付けた。 一口飲んだ途端私の眉間に皺が寄るのが分かる。 それを見てアンナ様は首を傾げた。


 「ハーブティーに砂糖を淹れるのはなんとか分かります。 ですが、入れすぎです。 別の何かになっています」


 「失礼ね。 私甘党だから」


 やはりこの方も常識外れだ。



挿絵(By みてみん)





ハーメルン様UA1500突破記念


オリガさんイディスさんの休日


挿絵(By みてみん)

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