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甘酸っぱい想い

「梨菜?どうかした?」

「別に……何でもないよ」


 最近なんだか


「今日は駅前にできたパフェ食べに行かない?2人で」

「──っ!い、い、行か……ない」


 なんだか──




「あたしの可愛い彼女の様子がおかしい!!」


 そう言い風夏は勢いよく音を立てて椅子から立ち上がった。が、次の瞬間向かい側に座っていた少女に腕を捕まれ強制的に椅子に座らされる。


「ふふふ、すみません騒がしくして。すぐに大人しくさせますので」

「ちょ、痛いっ真鈴、いたい!」


 穏やかな口調の割に力が強い。風夏はやっと開放された自分の腕を撫で、ジト目で真鈴の方を見るが、真鈴は気にせずパフェを口にしている。もし腕に跡が残ったらこいつのせいだ。


「それでさっきの話ですけど、風夏ちゃんの彼女……梨菜さんの様子がおかしいと」

「そう。なんだか対応が素っ気ない気がするんだよね。今日だってパフェに誘ったのに断られたし」

「そうらったんれすね。……あ、いちご発掘」


 こっちは真面目な話をしているつもりなのだが、話を聞きながらパフェを頬張る真鈴にはあまりその緊張感は伝わっていないようだ。


「てかさっきから食べすぎだろ……太るぞ」

「風夏ちゃん」

「あっはい」

「梨菜さんの様子がおかしいって話もう少し詳しく聞かせてください。興味が湧いてきたので」


 楽しそうな真鈴が観察対象を見る目をして微笑んだ。


「顔にチョコついてんぞ」

「!?!」




 ここ最近の梨菜の様子をひと通り話し終えた風夏は真鈴探偵の結論が出るのをソワソワ待っていた。と、真鈴が俯きになっていた顔をゆっくりと上げた。どうやら結論が出たようだ。


「風夏ちゃん──梨菜さんに何したんですか?もしくは浮気とかですか」

「あたしが原因かよ」

「だってそのぐらいしか考えられないんです。あの温厚な梨菜さんがストレスとか女の子の日のイライラで人に当たるなんて思えませんし」

「そうなのそうなの!あたしのかのピはマジ天使なんだよね、おっとり系の皮かぶったすぐ手が出る女子とは違ってね……痛あっ」

「あなたはいつも一言多いですよ」


 茶番をいつまでもやっていても話が進まない。ふと窓の外を見ると来店時には青一色だった空が、今紫から橙にかけてのグラデーションを演出しており、真面目に時間がないことをお知らせしている。


「風夏ちゃんはどうしたいんです?」


 小首を傾げてそう聞いてくる真鈴に風夏は伝える。


「あたし、明日梨菜にちゃんと話をしてみる。それでもし梨菜があたしのこと嫌ってて話もしたくないって言うんならその気持ちを優先できるから」


 真鈴に宣言した、というよりかは風夏自身に言い聞かせた感覚だった。その声は不安で震えていたかもしれない。でも、もう後には下がらない。


「そう。頑張ってくださいね」

「ん」


 風夏は真鈴の前にチャリン、と小銭を置くと早足で店から出ていく。早くしなければ電車に乗り遅れてしまう。


「……そうは言ってもさ、梨菜に嫌われちゃったら………辛いなあ」


 つい先程、頼れる友達の前でカッコつけて梨菜の気持ちを優先する、なんて言っていたくせに。


「あたし、女々しいなぁ」


 頬を静かに濡らす涙が憎たらしかった。




 同刻、人気のパフェ専門店にて。


 周りからの視線を感じても動じない美少女が一人。艶のある黒髪を三つ編みにまとめ、何やら物憂げな表情で窓の外を見ている。


「あの子も不器用ですよね。……というか好きな人のことになったらあんなに情緒不安定になるなんて」


 新たな友人の情報を知れて今日は満足だ。さて、と帰ろうとしたところであることに気づいた。


「話聞いてもらったお礼にパフェ代置いて行ったのかと思ってましたよ、風夏ちゃん」


 机の上には、一円玉が十枚、置いてあった。


「チャリン、ってなんの音だったんですか」




続きまーす

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