※
「飲食店の店員に対する暴行、及びその関係者への暴行未遂により男六人が逮捕されました。現在余罪を調べています」
「さような話は、ファレノ、貴女に任せると言っているでしょう」
寝台の上で、月に煌めく銀髪を梳かしながら、少女は返した。
「分かりました。――では本日の適性審査の話ですが」
「……父上には申し訳なく思っています。明日は、こうならないよう努力するから」
「残りの受験者には、後ろ倒しの通告を済ませています」ファレノは手元の名簿に目を落とす。バツ印が三つ。「今日はもうお寝み下さい」
「ええ」少女は櫛を枕元に投げる。ファレノが部屋履きを差し出すと、少女はそれに足を通した。片足ずつ床に接地し、華奢な身体を脚がすっと支える。
「それから――姫が好みそうな話題も。先程挙げた店員の関係者ですが、その者は店員が暴行を加えられた際、すぐに助けに入ったとの証言があります」
「……特定は?」
「お望みならば」
「いえ、する必要はないけれど――ああ、さような者であれば、わたしは喜んで合格を出すのに」少女は窓際に寄り、市街を眺める。「――今日来た者たちの中に一人、酒臭い奴がいた」しばらくして、そう呟いた。
「はい。酔ってはいないようでしたが」
少女は振り向き、赤い瞳を歪ませる。
「わたし、あの人、嫌い」