5-5 蘇生
その後の対応は大変だった。
というのも、俺の『蘇生』のスキルは月夜隊の人たちに明かさないと決めたからである。スキルを明かさないのに《部分即死》が隠れている場所を知っていると言える訳もなく、最終的には説明を省いて外に飛び出すという大変頭の悪い行動を取ることとなった。頭が悪くなかった点といえば、今回はきちんと肌を隠して出ていったことくらいか。
まあ結果的に《部分即死》は捕まえられたのだから、この際、手段の話はするまい。
○
すぐに目隠しをされ、ホルダーの男は連れていかれた。俺たちは改めてアジュさんと対面する。
「結果的に、結果的にですよ。死者を出さず彼を逮捕できたからよかったですが、あのような軽率な行動は慎むように!」
副隊長は手段の話をしたいらしい。まあそれは当然で手柄としては一級でも俺は一般人なのである。つまりは、月夜隊の保護対象。できるだけ民間人への被害を小さくしたいのであろう彼らにとって、俺のような言うことを聞かない者は厄介に違いない。
「それに、先ほどの疑念はまだ払えていませんからね」
そして忘れられていなかった。俺がスキルをこの身に受けつつ生きている理由。
「論理的かつ常識的な範囲で推量するなら、《蘇生》のスキルを持っていて、《即死》スキルを喰らっても生き返ることができる、というところでしょうが」
そして――バレている? のか?
「しかし今まで、《蘇生》スキルなど確認されていません」
――ん?
「月夜隊は、《即死》スキルのみを蒐集するのではありません。全てのスキルが対象で、その集計は二百年ほど前から為されています」彼女は続けた。「私が資料に目を通した限りでは、該当しそうなのは他者を蘇生する《他者蘇生》というスキルくらいですね。ちなみにこのスキルでは蘇生が不完全な上、冒涜的であるため判明次第抹消されます」
何やら怖い言葉が聞こえてきたが――自身が生き返るスキルは、存在しない?
「それは、どのくらいのスキルを網羅しているのですか?」
カイリィさんが訊いた。副隊長は、「それは彼が何らかのスキルを持っているということですか」と尋ねるが彼女は「いえ、それとは関係なく、です」といなす。
「そうですね、まず前提として、唯一無二のスキルはありません。どれも記録に残っている範囲で三人以上のホルダーが確認されています。その上で考えると――九割と五、六分といったところでしょうか。数にして約六千。東のほうにもここ数十年で進出できていますから、ほとんど網羅できていると言ってよいでしょう」
約六千――その数より、それに全て目を通したと言っている彼女もそれなりにすごいことを言っているが。
とりあえず、一つ訊いてみよう。「じゃあ、《夜目》というスキルは知っていますか」
「知っています、記録されているのは三十九人。というかこの街に来ている隊員にいますよ。会いますか?」
意外と珍しくもないスキルだったか。それなら。
「じゃあ《強制起臥》は?」
「知っています。記録されているのは五人。最新のホルダーは、そちらの“震源”の手の者から報告がありましたね」アジュさんは言って――カイリィさんを見る。
最新のホルダー――それは当然、クライズさんのことだ。オイラスでの審査の受付でスキルを聞かれたが、あれは報告するためだったのか。審査に加味するとのことだったからよほどのことがない限り自分から言うだろう。ちなみに俺はその時はまだ自分のスキルに気づいていなかったため、ないと答えた。
「あれは――そういう決まりというか、要求がありましたから。隊、もとい教会の影響力は貴方が思っている以上に大きいんですよ」後半は小声になりながら、カイリィさんが弁明した。まあ、まだ月夜隊のこともいまいちよく分かっていないし、今のところは不問としておこう。
「それで、結局《蘇生》のスキルはない、と」
俺はアジュさんに向き直って言う。
「はい。漏れている可能性は否定できませんが、《即死》スキルを受けても生き返ることができるスキルとなれば、何らかの伝承、最低でも噂程度にはなっているはずでしょう」
それはそうだ。俺は《即死》スキルを喰らっても平気なのである。カイリィさんは別の意味で平気だが、そちらは恐らく既に記載されているだろう。では俺のスキルは――結局、何なのか。副隊長が言っているのは、自らを生き返らせることができるスキルがない、ということで――つまり、俺のスキルは一体何なのだ? 生き返らせている訳ではない? しかし蘇生は現実である。ユイという客観的な証言者もいる。――どういうことなのだか。
そういえば、先ほどのユイの言葉。あれの真偽を確かめるには、アジュさんに訊くのでは駄目だろうか。ホルダーの選り好みなのか、スキルの特性なのか、もしくは別の何かか。
「副隊長さん」
俺は言う。
「何でしょう」
「《部分即死》のホルダーに会わせて下さい」
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