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5-4 一つと二つと三つ


 結局その日は、月夜(ゲツヨ )隊の宿舎に泊まることになった。脱走者の捜索が難航しているらしい。まあ日が暮れてからの捜索だったため見つけるのは容易ではないだろう。その反面、相手からも肌が見えないはずなので拮抗している、のか。隊としては《即死》スキルホルダーから民間人を護る、というのが方針であるようで、俺たちもそのうちに含まれるとして外出を禁じられた。

 アジュさんが持ってきたパンと干し肉とで簡易的な夕食。欲を言えばというか、この街ではよく食べてよく眠ることが目的だったので、気分がどうも上がらない。ここでの滞在期間をいたずらに伸ばす訳にもいかないので月夜隊の人たちにはがんばってほしい――あるいは。


 俺みずから、捕まえればいいのでは。



     ○



 という俺の考えには、カイリィさんも、ユイも、乗ってくれた。カイリィさんは、そう()に頼まれたから、と言って。ユイは、自分がいなければ何かあった時に困るだろう、と言って。そう、相手は肌を見せた瞬間負けの《部分即死》、用意はし過ぎてなおあまりある――あるいは。

 全く用意をしない、というのはアリだろうか。

 つまり、敢えて首や腕、脚などを露出した状態で出歩き、相手のスキル使用を誘うのである。俺が死んだ場所をユイが記憶してくれれば、その辺りを重点的に、月夜隊の人に捜索してもらえばいい。そう――月夜隊を頼るのは、俺がスキルを喰らってからだ。それまではこっそり動かなければならない。幸い俺たちは、厳重に監視されている訳ではないらしい。隊長と副隊長にはかなり疑いの目で見られていたが、『死に戻り(それ)』と《部分即死(これ)》とは話が違うらしい。囚人の捜索に人手を割いた方がいいというのは、まあ正しいことだろう。俺は別に何も悪いことはしていないし。恐らく、月夜隊の基準でも。



()()()()

 ()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()。』



 そういう訳で、俺たち三人は夜の街を歩く。

 首を出す。手首を出す。足首を出す。今夜は思ったよりも月が光を放っている。意外と視界は見通せるようである。相手さんは気づいてくれるだろう。人がまばらなところで無防備な者たちが歩いているのである。このような粗末な命の使い方はしたくはないし、すべきではないが――街の人々に被害が及ばないようにすることを考えると、俺が命を張るのが一番いい策であるように思った。

 相手が俺たちに気づいたところで、スキルを使わないということは、まああり得る。スキルを使えば痕跡(死体)が残り、折角脱走したのにすぐ摑まる恐れがあるからだ。()()()()()()()()()()()()()()()()。それは万が一のことを想定して、というのもあるだろうが、()()()と言っていたように、民間人が標的になり得るから、そういう行動を取る目算が高いから、わざわざ外出禁止としたのではないか。あるいは、考えたくないが――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、というスキルである可能性は否定できない。相手がみずからと同性であるというだけでスキル対象を選出する《同性即死》がある以上、《部分即死》の凶悪性を買い被って構わないだろう。

 月夜隊に見つからないように、彼らの使っている明かりの筋が見えたらこそこそと移動する。隊にスキルホルダーがいるのかどうかは分からないが、これだけ捜索に時間がかかっているということは、探知に利用できるようなスキル持ちはいないのではないだろうか。隊員としてはいるかも知れないが、そもそも囚人の脱走は不測の事態である。本来は必要ないスキルだから今回の人員からは外されていることは考えられる――とにかく、俺たちは夜の街を歩いていく。

「虫かな? りーんりーんって」

 ユイは緊張感なく言った。とはいえ、そこら中から虫の音が聞こえるのは事実であった。少しうるさいくらいであるが、もしかしたらこれが、多少俺たちの足音を消してくれているのではないかという気もする。

「もう秋ですからね。死ぬ前に子孫を残さんとしているんですよ」

 カイリィさんが答えた。詳しいのだろうか。

「この啼き声は、私も聞いたことがない種ですね。セイドンでは――」

 興が乗ったのかカイリィさんは詳しい――話を、



()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()

 ()()()()。』



「リド!」

 ユイが俺を呼んだ。

「大丈夫、分かってる。カイリィさん、死んできました」俺は外を窺っていたカイリィさんに言う。彼女は頷いて扉を一旦閉めた。

「それでユイ、どこだった?」

 俺は尋ねた――彼女は、なぜかそわそわしている。何か気になることがあったのか。

「ユイ?」

「えっとね、あたしもなんでだか分からないんだけど――」

 彼女はそう前置いて。



「あたしたちは三人共、首と手首と足首を出して歩いてた。でも――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



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