心弦 2/2
床に散らばる屍は、セイを追う男たち、だったものである。
匿っていた少女たちは全員始末され、残るはセイのみという状況――そこに現れたのが、ネーフェだ。追っての男たちをまとめて相手取り、勝利を収め――今、彼はそんな言葉を彼女にかける。
セイはその言葉を頭の中で五回ほど繰り返し、結局意味が分からず、「……どういうことですか」と問う。
「なに、お前があの娘たちを護ろうとしたように、オレがお前を護ろうという訳だ」
「……分かりません」セイは言う。「わたしを護っても、貴方に利益などないし、むしろこれ以上の相手を敵に回すかも知れない」
「オレは負けねえさ」
ネーフェは持っていた槍を床に立て、それに摑まりながらその場にしゃがむ。
「それに、利益云々を、見返りなく娘たちを救ったお前が言うのかよ」
「…………」
それは、そうだとは思いつつ。
「わたしは、結果的にあの子たちを護れなかった」
彼は何も言わない。
「何もできなくて――見殺しにして。それで事が収まったら、自分だけ護られてぬくぬく暮らして。そんなことが――」
「オレもかつて護れなかったんだ。何度も何度も」
「…………」
「だが、今のオレには力がある」言って彼は、少女に槍を渡す。穂が三つに分かれているそれは思ったよりも重く、セイは蹌踉めく――ネーフェが、腕を出してその身体を支える。「護るってのは、負うってことだ。護りきれなかったぶん、これから俺が護ってみせるさ」
少女は槍の重さを感じながらその言葉を聞いている。しばらく黙っていたが、槍を杖代わりに立ち上がり、ネーフェに向き直る。
「ではわたしは、貴方を護ります」
彼女は言った。
「今はまだ、不完全ですが、このスキルを使いこなせるようになった暁には、わたしにも護らせて下さい。負うのは――お互い様ですよ」
ネーフェは、少女の笑顔を、その時初めて目にした。




