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「見ろ! “爆心地”ユイッサ・サーターだ!」
「噂通り可愛い……」
「止せ、お前の畑が更地になる」
「“忠臣殺し”エノク・インテグラル様も来たよ!」
「エノク様ーっ」
「近寄るな、何が気に障られるか分からん」
「おい、月夜隊隊長のアジュまでいるぞ!」
「和解は本当だったか」
「この三人が揃って一体何を……あれ、もう一人いるな。誰だ?」
「さあ」
「知らないが、あの三人と一緒にいるってことは相当な大物だろ!」
「それにしてはショボい服にショボい顔だ」
「な、泣かないでリド」
「ほら、ショボいとさ」
「無視して歩きなさい。約束に遅れてしまいます」
三人は俺に声を掛ける。俺たちはこの国の存亡の危機に馳せ参じたのだが、それを知る者は誰もいない。俺のことを知る者もまた、誰もいない。俺のスキルは、直接的かつ客観的な功績を上げるのにはあまりにも向いていないのだ。
「……うん、行こうか」
それでも俺は、時に自力で、時に仲間を頼って、進み続ける。
自分の、そして皆の大切なものを護る為に。
連載開始です。
よろしくお願いします。