第4話 形のない贈り物1-4
昨日はいい行いをした。
武器屋のオレがいい行いをするなんて、頭がイカれていると笑わそうだが
それりも独身のオレが幼女の面倒を見るなんてありえるか?
ギルド長は何を考えているんだ!
弟が変な気を起こしたらギルド長の座なんてお終いだろうが。
なぜだ。
それよりも 子供の世話なんてどうすりゃいいんだぁ!!
頭をかきむしるアイビーは子供が嫌いだ。
嫌いと言うより付き合い方がわからない。
店の中は武器のように鋭い物ばかりが置かれているし、それに比べて丸っこくて可愛くておさげで黒と白の可愛いドレスを着た女の子との接し方を強化できる方法があるなら教えてほしいとさえ思っている。
一夜を隣の部屋で眠っていただけなのにそれでもアイビーは睡眠が出来ないほどに考え込んだ。
結果は 愛はLOVEって事なのだがもしも。
真夜中に一匹の可愛い猫か犬が迷い込んできたとしたら?
朝起きて1羽の鳥が部屋の中に舞い込んできたとしたら?
アイビーの気持ちは子犬を抱っこした少年が瞼の裏を何度も駆け抜けていったのだ。
おかけで寝不足・・。
それでも 職人魂で早起きをして思いつく限りの準備をした。
さてさて どうなる事やら・・。
「おはよう」
リコリスが眠い眼をこすりながら部屋から出てきた。
アイビーは寝そべってウォーアックスをプッシュアップするトレーニングをしながらぶっきらぼうに「おはよう」と返す。
「ほら 桶に水が入ってるだろ。そこで顔を洗え」
「うぁぁ お水で顔を洗ってもいいの? あんがとね」
すでに仕上がっている魔導ガンを磨きながら少しハニカム、アイビーはリコリスが移動中のキャラバンでは水を節約していたことを知る。
大切に水を使おうとするあまりに水をこぼしてしまう仕草は心臓がドキっとした。
「ほら そこに布があるだろ? ちゃんと拭くんだぞ」
「あんがとう」
どうすればこの子がいい武器屋になってくれるのか考えているがわからない。
「礼なんていい。痒くなるだろ。
それより黒猫を助けるなんてことは、もう やっちゃいけねぇ。いいか?約束できるか?」
「あい。ごめん」
「よし! いい返事だ。じゃぁ今度はいい話だ。
いいことをしたことは神様がちゃんと見ていたぞ。
覚えて置け。 いい事はいつか自分に帰ってくるんだ。
ママねーちゃんは ギルドの掲示板に尋ね人の依頼として張り出されるし、リコリスはこの武器屋の見習いとしてずっとここにいていいぞ」
「あい、、ママねーちゃん会える?リコ、嬉しいぃ!!」
「そうか。でも、もっといいことがあるぞ オレが朝食を用意しておいた。
オレは朝の冒険者どもの相手をしてから遅い朝食をとることになるだろうから。
先に食べてろ」
「リコぉ~ お腹空いたぁ~ ご飯♪ ご飯♪ ごはんなぁにぃ~?」
「へへぇ ベーコンエッグだぁ! 俺はそれしか作れねぇ
でもなぁ、、、 まあ 武器屋のベーコンエッグは最高のはずだから食べてみろ あははは」
「あい」
オレはリコリスを置いて武器屋のカウンターに着いた。
鍾乳洞屈探索の朝は早い。
なぜなら 早く潜ったほうが夕方の少しでも明かりがさしているうちに街まで戻ることが出来るので
その分だけ酒が飲めるというわけだ。
ギルドの酒場では「くぅ~この一杯のためにキメラを倒してきたぜ」なんて言っている奴らがいるから間違いない。
バカをやるために命を懸けるバカばっかりよぉ。
「おい アイビー!俺様のアづけた武器は仕上がってるか?あん?」
「ああできてるぜ。最高の一品。スチールアックス+26だ。
ついに シルバーアックスの攻撃力を超えたぞ あははは」
「がははは ついに超えたかぁ。こいつはオレの相棒だからよぉ」
「相棒?バァ~カ!鍛え過ぎだ。シルバーアックスなら三本は買えるぞ あははは」
「なに言ってんだ。+26までノーミスで強化をしやがったサイコ野郎がぁ がははは」
武器屋の仕事はゆかいな客が多い。
これから命がけの探索をするというのに大丈夫なのか?
「それはそうと、このアックスにアンデットを倒せる力を付与することはできるか?」
「ああ だがそれなら聖なるナイフでも買ったほうがよっぽどいいぞ
いいや、待て!聖なるナイフを持っている知り合いに連絡してやる」
「いや 買うからいい」
「バカから金なんてとれねぇ~って言ってんの。ジョセフ紹介してやるよ」
「やめろ。ただでさへ、マニアックな知り合いが増えすぎて頭がいっぱいだ」
「そうぅかぁ?」
「それよりも砦の街ではゴーストやゾンビが大量に湧いているらしい。
敵国のここのギルドにまで依頼書が張り出されるんだから、どんな殺され方をしたのかは知らねぇが
相当な怨念がたまっているんだろうよ。
でも まあいいさ。
オレは 鍾乳洞屈で育ったマテリアル結晶を集めて一杯やってるほうが性に合ってらぁ~ がははは」
仕事を終えると俺はリコリスのいる食卓へ向かった。
今日の朝ごはんはベーコンエッグ。
それは家庭料理だ。
平凡で一般的。
だが、それを武器屋が作るとなると話は別だ。
ベーコンはカリカリに。
卵の黄身は濃厚になるまで確りと焼き上げた一品をテーブルの上に置いてきた。
リコリスは今頃、美味しさのあまりにお皿までなめているかもしれなかった・・・。
「まずい・・」
「今なんて言った?」
「まずいんだもん! 食べられないんだもん!」
食卓に戻るとベーコンエッグはお皿の上に置かれていた。
リコリスがてっきり俺の帰りを待っていたのかと思って涙がでそうになったのに。
オレの感動を返せ!
「何が気に入らないんだ?
焼く前に軽くオニオンをフライパンに塗り付けた事が気に入らないのか?
甘味が出てるだろ? 香りもいいだろ?」
「違うもん。ママねーちゃんのハムエッグはフワフワでとろとろだもん。
こんな硬いのリコ。食べられないもん!!」
「硬いじゃない。カリカリって言うんだ。
旨いから食ってみろ!」
「バーカ バーカ リコは硬いの食べられないもん!」
「はぁ?バカって言うやつがバカなんだ。そんなもんゆっくり噛めば食べられるだろ?もういいぃぃぃぃ!!!」
オレは全力で作業台のある部屋に入るとドアの扉をしめてカギを掛けた。
普段はカギなんてかけないけど イライラするからかけた。
オレの渾身の一品をバカにされたんだ。
感情がウネウネと体の中をはい回っていた。