第1話 伝説の武器屋、お城へのぼる
「お前もお城に呼ばれている日だろ?行こうぜアイビー」
声の主は幼馴染のリードだ。
同じ商人だがリードは商会主。
オレは王宮から手入れの依頼を受けた武器を袋に入れて準備をすると店を出た。
オレの店は看板が下がっている。
武器屋だ。
あるコネでギルドの一角で店を開いてからは、冒険者相手からお城・王宮の特殊な武器の手入れまで様々に携わっている。
このロングソードも、装飾ばっかりである意味武器屋泣かせだが、オレにかかれば大した事じゃない。
こうやってまた一つ腕を上げることでオレの夢にも一歩近づけたってものさ。
オレは腰に下げている魔導ガン+99を見てにやけてしまった。
「+100まで あと1回」
それに比べて隣の道具屋なんて・・。
「ふん」
オレの武器屋に明け渡すか、いっそのことレストランの一角にしてしまえばいいのに道具屋のおやじの覇気のなさといったら、いつ夜逃げしても不思議じゃないだろう。
「準備できたぜ!行こうぜ リード」
「おう」
リードは商会の息子だったが去年に跡を継いで店はこいつのものになった。
マテリアルと言う鍾乳洞窟から採取する鉱石を取り扱っている金持ちだ。
オレも武器の修理や強化にはマテリアルを使うし、生活のいたるところで使われるものだから生まれながらにしてリードはこの街での成功を約束されている。
「ところでアイビー。お前さ、まだ一人で武器屋やってんの?人を雇えよ!すごいヤツ。こうぅ~、巨乳とか、クビれとか、エルフとか獣人とか好きな奴の一人ぐらいいるだろ?」
「オレのところは、誰でもいいって訳じゃない。最低でも客が武器に適性があるか脳裏に浮かぶくらいでないと使い物にならん」
リードと城へ向かう事は今までに何度もあったが、何かと理由を付けては女のお付きを連れてくる。
二人でお城へ向かうのはリードが商会の後をついでからは初めての事だった。
「今日はどうして一人なんだ?いつも 初めましてと挨拶をしてくる女どもはどうした?」
「ああ アイツらはお城に連れていくと勝手にテンションが上がってドキドキしやがるからよ。
その後に食事なんかすると成功率が上がるんだ。
お前も使っていいぞ。
ただし、これは俺たちだけの秘密な!
それはそうと、今日はお姫様との面会があるって話だ。さすがに女連れってわけにはいかんだろ?」
お姫様。
バーモン城のバーモン・ストック・ソニア姫。
ああ・・愛しのソニア姫・・。
このアイビー、あなたをお慕い申してます・・。
と言っても陰ながらお慕いするのが精いっぱいなのだが、最近では優しさに加えて知性がにじみ出るようになられた。
どんどん大人の女性へと成長なさいますそのお姿は、武器屋目は嬉しく思いますぞ。
はぁ~ なんか 口調がおかしくなってしまった。
リードと女の話をしているうちにお城が見える。
城下町とお城の間にはお堀があって川が流れており、門番が二人こちらを見つけてえしゃくをしてきた。
俺たちは顔なじみ。
門番が持っているヤリも元をただせばオレが世話をしてやったものだ。
ヤリを装備している二人のビジョンが脳裏に浮かぶ。
「よ~門番さん。ところであんた、右腕痛めたのか?」
「ええ 今日の修練中に手痛くやられまして、、しかし よく気づきましたね?
もしかして アイビーさんは神子ですか?」
「いいや。オレは神子じゃない」
武器屋なら気づいて当たり前。
天より与えられし才能なんて元からないし、だいたいオレは子供じゃない、大人だ。
リードが髪をかき上げて前に出てきた。
「俺は 神子だったぜ。算術の才を与えられて生まれてきた。
まあ 大人になった今は才は消えちまったが、代わりに1日に3人の女とバレずにデートできるぜ。がははは」
「3人ですか?羨ましい」
くだらない話ですっかり門番と話し込んでしまったせいで少し遅くなってしまったか?
色んな奴らとからむのがリードの商売のやり方。
オレとは真逆のやり方だ。
「なあ アイビー。お前さ。ソニア姫の事、好きだろ?」
「ん?! バカ言うな」
リードよ。バカを言うな。
好きなんて通り越して尊敬すらしているぞ。
お前のように動物としての好きや嫌いと言った感覚を超えたところにソニア姫は入る。
リードには一生理解できないよ。
雑談をしながら城の中を進んでいくと部屋の前の扉に今にも怒り出しそうな顔つきのご婦人が立っていた。
リードを見ると、いつの間にかにオレよりもシャキッと歩いていてまるでオレが遅いせいで遅れたかのようだ。
「はぁ・・あなたたち・・遅刻ですよ!」
さすがに謝っておくか。
待たせたお客を誤魔化すなんて商売人ならだれでも得意とするところだ。
オレとリードの物語に怒り顔だった婦人は渋々ツバを飲み込んだ。
「まあ今回はアレもあることですし、いいでしょう。ふふふ
次からは遅刻は許しませんよ」
こうしてオレ達は武器とアイテムの納品を済ませてソニア姫と会う事になった。
「・・・シャルロットご苦労様でした。私はソニア。覚えていらっしゃいますかしら?ふふふ」
「お久しぶりでございます。・・麗しく・・美しく・・でございます。」
さっきの婦人はシャルロットって名前なのか。
どうやらソニア姫の世話係っぽいな。
それにしてもソニア姫はまた大人っぽくなられた。
グリーンの瞳を輝かせて流れる金髪はうずまき貝のように波をうっている。
オレの心の人だ。
「本題を話す前に、私は人生とは自ら作り上げるべきなのか?。その問いを探しています。
アイビーよ。
そなたは、天よりの才を受けることなくこの国でも名の知れた武器屋となりました。
その力の源は何ですか?
実は 私にその力を見せてほしいのです」
「見せるといいますと?」
「あなたには今から、そこにいるソルジャーとの勝負をしてもらいます」
ヤリを持った好青年と武器屋のオレが勝負する?
ヤリをトン!と立てると紳士的に軽く礼をした。