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第67話

大変お待たせいたしました!今回より連載を再開します。今後も不定期更新となるかもしれませんが、週1話投稿出来るように頑張っていきますので、よろしくお願いします。

RDCに落としてきたはずの葵の携帯がどうしてここにあるのか。まぁいっかと無視できるほど小さな出来事ではないが、今話し合うべき話題はこれではないことは病室にいる誰もが分かっていた。


「これが、RDCの資料室にあったファイルの写真なんだけど…」


スマホのロックを解除した葵は、RDCで撮った写真をベッドの上の光春に見せる。冬樹も、それを横から覗き込むように顔を伸ばす。目で文章を追う光春の表情は読み進めるにつれ明らかに曇っていった。


「いったん整理したいから、言葉にしていいか。ちょっと、いやだいぶ混乱してる」

「俺と葵がした解釈が合ってるかも確かめたいんだ、とりあえず言ってみてくれ」

「とりあえず、NGは二次元世界と三次元世界、俗にいう仮想世界と現実世界をつなぐために開発されたんだよな」

「えぇ、NGの目玉の機能だって大々的に宣伝してたもの。ゲームもARよりもリアルに、というかもうゲームが現実になるって感じで…って合ってるわよね」

「合ってると思う。ディメンジョンっていう二つの世界を隔ててた絶対壊れない壁、壊れちゃいけない壁を壊すためのものだったなんてまさか、な…」

「ここはみんなの解釈が一致してるみたいだから先に進むぞ。んでまぁ、ここが一番問題か。NGは現実世界を破壊するために作られたって…。一体どうやって破壊するつもりだったんだよ」

「それこそ、俺たちが何回も戦ってきたあの化け物たちじゃねぇのか」

「そう考えるのが普通だよな。でも、この『現実世界の生物、物質および物体が仮想世界に、仮想世界の生物、物質および物体が現実世界にコンバートすることは一部例外をのぞいて不可能である』っていうのはつまりこっちの世界の人だったり動物だったり、物だったりっていうのは二次元世界に行けないってことだ。逆も然りだけど、でもこの通り解釈したら、あの化け物たちの説明がつかない」

「あんな化け物たちはこっちの世界にいないから、仮想世界から来たものだとばかり思ってたけれど、この文章はそれは違うって言ってる。じゃあ、あの化け物たちは現実世界の生き物になっちゃうけど…ってあぁもう!分かんなくなっちゃった・・・」

「あんな化け物がこっちの世界の生き物なわけあるか。俺は、化け物がなんかの理由で次元を超えて仮想世界からやってきたと思う」

「でもそれじゃあここに書いてあることと説明が合わなくない?」

「そうなんだよなぁ…。光春、さっきからだんまりだけどお前はどう思うんだよ」

「一つ確認したいことがあるだが、渋谷の商店街で戦ったねずみって空から降ってきたよな」


冬樹の脳裏には渋谷での血生臭い出来事が脳を直で搔きまわすかのようにフラッシュバックする。鼓動が痛いくらい速くなる、食べられたくない、殺されたくない、死にたくない。あの日の渋谷で冬樹が感じた人間、いや生き物臭い感情が冬樹の全身を駆け巡る。

渋谷…、すべてが、この地獄の日々が始まった日に見た、狂暴化したハチ公の爪に刺さった真っ赤な麦わら帽子。葵のお隣さんの親子の首が飛ぶ光景。紅葉を刺した殺した感触。今までの冬樹が味わった感情が、今の冬樹を蝕んでいく。苦しい、虚しい、悔しい、いっそ誰か俺を…。そんな感情が脳裏を駆け巡る冬樹を落ち着かせたのは、暖かなぬくもりだった。


「冬樹、これまでのこと思い出してたんでしょ」


冬樹を包むぬくもりの主は、ゆったりと優しい声で冬樹にそう語りかける。


「ごめん、葵。取り乱して。ありがとな」

「いいってことわよ。水でも飲んできたら?落ち着くわよ」

「あぁ、そうする」


葵の提案をすんなりと受け入れた冬樹は、病室を出て自販機のある一角へと歩いて向かった。


「葵、お前いい女だな」

「なによ、知らなかったの?あたしは昔からいい女よ?」

「まぁ、それが肝心の冬樹に伝わりきってないのが惜しいな」

「…なっ⁈別に冬樹のことは...」

「見てればわかるよ、何年の付き合いだと思ってんだ。幼馴染舐めんなよ」

「はぁ…。そんなに分かりやすいんだったら、なんで伝わってほしい本人には伝わらないのかしらね」

「押しが足りないね。あいつは、押せば弱いと思うぞ」

「ふぅーん…。そっか」


その顔、冬樹の前でしたらいいのに。光春は喉まで出てきたその言葉をぐっと飲みこんだ。


「そういえば、あんたがさっき言ってたネズミのやつってどういうことなの」

「あぁ、俺の記憶が違ってたら俺の仮説が全然見当はずれなことになるから、一応確認しときたいなと思って。どうだ葵。あの日のこと覚えてないか」

「んっとねぇ…。人混みに飲まれててあんまりよく見えてないんだけど、すごい地響きがあったのは覚えてるわよ。漬物石を家の床に落とした時みたいな」

「つまり、何かが落ちてきたと。やっぱり、ネズミは空から降ってきたのか?」

「そういえば、あたしと紅葉さんがネズミ…、こいつはちっこいあたしたちが見てるやつね、それにびっくりして大騒ぎしたのは覚えてるわよ」

「そういえば、モデレーターが最初にクエストコールした時に現れたのもちっさいねずみだったような…」

「ちっさいやつの後に、でっかいのが降ってきた?じゃあ、ちっさいのはどこに行ったの」

「はぁ、考えれば考えるほど俺たちの常識ってちっぽけなんじゃないかと思うな」

「ああぁっ!疲れちゃった、あたしたちも休憩にしましょ」

「そうだな、じゃあお茶買ってきてくれよ、喉が渇いちまった」

「はーい」

そう言って葵は病室のドアをスライドし、冬樹の向かったであろう自販機に向かった。


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