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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第2章 冬樹
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第62話

1ヶ月くらい更新滞ってるって...マジすか(;ᐡ・∀・)


薄暗く、少しかび臭い部屋の床に無造作に広げられたファイルの山。その中心には、スマホのわずかな光を頼りに冬樹と葵が、手当たり次第ファイルを読み進めていた。


「はぁ、これも会議の議事録…。本当にNGについて書かれたファイルあるの?」

「いやぁ、結構な冊数中身を確認したけどこの調子じゃあな…」


冬樹の視線は、自身たちの周囲を取り囲むように無造作に重ねた冊子の山を撫でるように一周する。目線を手元のファイルに戻すと、大きなため息が口から漏れ出す。


「誰かに見つかる前に早いとこ片付けて見学コースに戻ろう」

「えっ、でもまだなにも見つかってないわよ」

「ここは敵の本拠地かもしれないんだ。同じ場所に居続けることはそれだけでリスクが高くなるし、この調子だと俺たちが欲しい情報が見つかるとは思えない、だから…」

「……分かったわ」


冬樹の言い分はもっともだ、敵の本拠地かもしれない施設に二人で挑み続けるのはそれだけでリスクが高い。葵は、読み進めていたファイルをわざと大きな音を立てながら閉じ、立ち上がると手が届く範囲にあったファイルを2、3冊適当に見繕い重ねると立ち上がる書棚の蔭へと消えていった。冬樹は、その後ろ姿を見ながら下唇を強くかんだ。


「正論なんだけど、冬樹の言う通りなんだけど…なんでだろ。あたしってこんなにわがままで嫌な奴だったかしら…」


ファイルを本棚に戻しながら、小さな声でつぶやく葵の声。聞き逃してしまいそうだが、彼女の心からの叫びだ。ファイルを戻し終え、目線を出口の方へ向けた葵は、ここである違和感に駆られた。


「あれ…?あそこの本棚」


葵の目に留まったのは、入り口のすぐ近くの本棚。その本棚には古そうなファイルがたくさん収容されているが、その中に唯一真新しい背表紙のファイルが居心地悪そうに仕舞われていた。葵はそのファイルを本棚から取り出すと、パラパラとページをめくる。


「えっ…」


滑り落ちるファイル、どさっと大きな音を立てながら床に落ちたファイルを慌てて拾い上げる葵。


「大きな音がしたけど、なにかあったか?」


大きな音を聞きつけて、冬樹が顔をのぞかせる。葵はファイルを拾い上げると、軽く手ではたき無言でファイルを差し出す。


「片付けろって事か?」

「違う、黙ってこのファイルを見て」


葵の差し迫った表情に、このファイルにはこの変わってしまった世界のことが書かれている、冬樹は直観的にそう感じ取った。葵からファイルを受け取ると、一呼吸おき、意を決してファイルを開いた。



――――――――

NG研究に関する第12次報告


(NGの概要)

・NGは仮想世界と現実世界のディメンジョンを超越することで仮想世界と現実世界の次元の差を破壊し、現実世界の崩壊を目的に開発したものである。ただし、現実世界の生物、物質および物体が仮想世界に、仮想世界の生物、物質および物体が現実世界にコンバートすることは一部例外をのぞいて不可能であることが先に行われた強制コンバート実験によって明らかになった。


~~~~~

~~~~~


(一部例外を受ける人間について)

・NGは仮想世界と現実世界のディメンジョンを破壊する技術であるが、2次元と3次元の世界を無理やりつなげることでこれを可能にした。これにより、意図せず現実世界から仮想世界へ仮想世界から現実世界へコンバート(以下、干渉)できる生物(物体・物質は意識を持たないため仮にコンバートできるとしてもしないものと仮定されている)が誕生したことが、二つのディメンジョン間の壁のゆらぎから予想される。

・調査班による調査によると、現実世界、仮想世界に上に当てはまる人間が一人ずつ発生し現実世界は後藤冬樹という少年、仮想世界はモミジという少女であることが確認された。今後我々の計画遂行のために、二人の動向を注視する必要がある。

――――――――――――


「なんだよ…これ」


資料を読み終えると、冬樹は悲痛な叫びをあげながら本棚に持たれかかった。自身が知らぬ間に謎の能力を身に着けていたこと、紅葉が仮想世界の人間であったこと、そして紅葉は仮想世界からやって来ていたこと…。波に揉まれて息ができなくなるように、情報の波に揉まれ脳が酸素を欲して悲鳴を上げる。


「冬樹、ゆっくり息をすって!」


葵の柔らかな手が、冬樹の背中を優しくなでながら深呼吸を促す。大きく息を吸い、吐くのを繰り返していくうちに脳に酸素がもどると、冬樹は落ち着きを取り戻した。


「悪い…。あまりにも…」

「うん…」

「なんだよ…、なんで俺にそんな力があるんだよ…。なんで、紅葉さんにも…」

「とにかく、急いでここを出ましょう」


冬樹の悲痛な叫びを遮り、葵は一刻も早くこの場を離れたい衝動に駆られた。冬樹が落ち着きを取り戻しつつあるのを確認すると葵は、慌ただしくファイルを戻す作業へと戻った。冬樹はそんな葵の様子を見ながら、もう一度深呼吸をして、鼓動を整え冷静な自分を取り戻した。冷静になると今何をしなければいけないかが見えてくる。冬樹はスマホを取り出し葵から手渡されたファイルの重要そうなページを見繕って写真に収めた。


「冬樹、落ち着いた?」


ファイルを粗方片付け終わった葵が、本棚の間からひょこっと顔を覗かせる。ついさっきまでファイルが散らばっていた床が見えている。


「あぁ、片付けありがとな」

「いいわよ、もう大丈夫なら早いとこここから出ましょう」

「あぁ、そうだな」


二人は荷物をまとめると、扉に耳をあて廊下の音に精神を研ぎ澄ませる。ひんやりとしていた金属扉はいつしかほんのり暖かくなっていた。


「いいか、まず俺が出るから葵はその後に続いて出てきてくれ」

「分かったわ」


緊張した面持ちの葵と、覚悟を決めた冬樹。冬樹はドアノブに手をかけ、音を立てないようにゆっくりと開ける。姿勢を低くし、外開きの扉の動きに合わせて廊下に出て、左右を確認するとこの部屋に逃げ込んできた時と何も変わらない、ただ薄暗く長い廊下が続いていた。


「よし、大丈夫そうだ」

「はぁ、緊張した。部屋から出るのにこんなに緊張したのは初めて」

「俺は初めてじゃないな」

「部屋から出るのに、緊張したことあるの?」

「葵を怒らせた後に自分の部屋から出るとの同じくらいの緊張感だった」

「ばっ!それはあんたがあたしを怒らせるのが悪いんでしょ⁈」

「ばかっ!おっきい声出すな」

「あっ、ごめん」

「とにかく、緊張感があるのはいい事だ。早いとここんな薄気味悪い施設から脱出しようぜ」


冬樹が前を歩き、時折葵が後ろを確認する。行きよりも流れる景色が早いと感じだのは私だけではないはずだ。それだけ、二人のこの施設から出たいという思いが強いということだろう。


「葵、見て」

「ん?なにかあった」

「俺たちがルートを外れた突き当りに戻っていたみたいだぞ」

「ほんとだ、よかった」

「嬉しいのは分かるけど、大きな足音出すなよ」

「えっ?あたし、歩いてないけど」


冬樹が振り返ると、そこには歩いてないどころか、足踏みすらしていない葵の姿があった。


「でも、足音が…」


どんどん大きくなる足音。何かが近づいてくる…。


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