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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第2章 冬樹
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第61話

ちょっと今回がんばりました、、、

なので月曜日投稿じゃないの許してください(こら

コツコツと、靴音だけが響く薄暗い廊下。長いその廊下には規則的に配置された電球や、ドアが立ち並びどこか不気味ささえ感じるほどだ。正気を保っていられるのは、皮肉かな時たま足元に現れる換気口がアクセントとして存在しているからだ。


「不気味なくらい静かね」

「あぁ、それにこんなに広いなんて思ってもみなかった。こんなでかい施設だと、どうして今まで話題にならなかったか不思議になってきた」

「いくら外見がコンクリートの箱だからって、これだけ巨大な施設だとそこそこの人数が働いてるはず、流石に近所の人もなにかおかしいなって思うんじゃないかしら」

「いつからこの施設があるか分からないけど、こんな大きいものを作るなら工事も並大抵じゃないだろうし」


二人は、長い廊下をひた進みながら感じたことを言い合う。この施設はやはり、何かおかしい。それが二人の共通認識になり、感想戦がひと段落すると長い廊下には再び二人の足音だけが響き、そこに二人しかいないことを引き立たせる。長い時間そのような状態が続いたせいか、二人のテンションがおかしな方向へ傾きつつあった。


「これだけ静かだと世界にあたし達二人しかいないみたいに錯覚しちゃうわね」

「ふっ、何言いだすんだよ急に」

「あんた今鼻で笑った?」

「いやいやいや、俺が葵のことを鼻で笑う?そんなこと滅相もない」

「ほんとにぃ?」


合っていたはずの歩幅がいつのまにか乱れていて、葵は冬樹の斜め右前から顔をのぞき込むように腰を引きながら、振り返る。


「…っ?」

「なによ、あたしの美少女っぷりに驚いちゃった?ぶりっこキャラって滅多にしないから、ギャップ萌えしちゃった?ねぇ?ねぇ⁈」


冬樹の目線が自身から斜め左前に移ったことを確認すると、葵はいたずらな笑いを浮かべここぞとばかりに冬樹を煽り散らかす。


「いやっ、お前今日ワンピースきてるだろ?」

「幼く見せなきゃだから、滅多に着ないワンピースを押し入れから引きずり出したのよ。えっ、なに?もしかしてあたしのワンピース姿に見ほれちゃった⁈えぇ、そうなの??ほんとぉ?」


葵は、突然駆け出し、冬樹の目の前でくるっと一回転して見せる。ふわっと水色のワンピースがめくれ、きれいな円筒形を腰のあたりに作る。円筒形がもっとも綺麗に出来上がると、同時に冬樹は再び慌てて目線を右前に移す。


「ねぇ、また目線ずらしたわよね?ねっ?ねっ?あたしとワンピースとポニテっていう最強コンビに見ほれちゃった?そうなんでしょ?素直になりなさい」


葵は身長152cmの小柄ながら、Eカップという凶器のロリコン体型であり、顔も整っている。学校では幼馴染だからと言う理由でいつも冬樹のそばにいるが、他の学生からの人気は高く、学年問わず告白されることが多い。


「どうしたのかたまっちゃって、やっぱりあたしに惚れちゃった?」

「ちげぇよ!」

「違うって…。もしかして、幼い感じがあんたの性癖にドンピシャとか……。まさか、ろr…「ちがうっ!!俺は断じてロリコンじゃない」

「ごめんって。ロリコン呼ばわりしそうになったのは謝るわ。でも、ロリコンじゃないってことはやっぱりあたしに見ほれてたって事じゃない。なんで最初から素直にそういわないのよ」

「だから…、その…」

「その?」

「お前の今日の服ワンピースだから胸元が緩いだろ」

「それがワンピのいいところよ?ってなんであんたがそんなこと気にするのよ」

「だから…、胸元が緩いから…、覗き込んだ時に見えたんだよ」

「見えたってなにが?」

「その、ち…、ちく…あぁーもう!いいだろ?」

「ち?ちく?ちくわ?」

「ちく“び”だよっ!あっ……」

「ちちち、ちく⁈」


廊下にこだまする冬樹の「ちくび」。それは葵の恥ずかしさゲージをカンストさせるには十分であった。葵の頬はみるみる熱をもっていき、葵の悲鳴が冬樹のこだまを追従するかのように廊下に響き渡った。しばらく、葵が胸元を両手で隠し、ぷるぷると震え、涙目で冬樹の事を睨みながら蹲っていたことは見ていなくても、簡単に想像できる。


あまりにも取り乱した葵は、ぷるぷると震えながら冬樹を睨みこう続けるだろう。


「どうだったのよ」

「どうだったとは…」

「あたしのちくびはどうだったのかって聞いてんのよ!」

「なっ、ば…ばっ、ばかやろぅ…そんなこといえるわけないだろ」

「何よそれ。そんなのあたしの見られ損じゃない」

「なんだよ、見られ損って…」


今回ばかりは冬樹がまともである。そして、葵の事だ、ばっと立ち上がり冬樹に殴りかかりながらこう叫ぶに違いない。


「つべこべ言わずに、さっさと答えなさいよっ!」


動揺し取り乱した葵のへんへなパンチを、幾度の戦いを戦い抜いて来た、冬樹がかわす事など容易…なはずだが、いつもとあまりにも速度の違うパンチに冬樹は対応することができず、葵は冬樹の胸板をポカポカと叩く。小さな体が全身を腕をポカポカとたたくパンチと、いつもとは違う恥じらった葵。冬樹はあまりの衝撃にせき込むはずだ。心臓の鼓動が速くなっている?目の前にいる可愛らしい生き物はあの葵だぞ??(ある意味)命の危険を感じた冬樹はきっとこう続けるに違いない。


「暗くてよく見えなかったけど、おっぱいでかいわりにちっさくてよかったと思うぞ」


何を言っているんだ…。


「ばかぁーーっ!」


葵の鋭い蹴りが、倒れこんでいた冬樹を再び襲う。その後、しばらく冬樹が再起できなかったのは言うまでもないだろう。再び、廊下には静寂が訪れる。冬樹は壁にもたれかかり、葵は少し距離を置いて未だ蹲っている。


「さっきの話だけどさ」

「なななによ、まだあああたしのち、ちくびの話するの」

「ちっ、ちげぇよ。お前がちくび見せてきt「いいい、いつからあたしは痴女になったのよっ!」


“ちくび”という言葉に脊髄反射で反応するbotと化した葵は、冬樹の口からち・く・びという3文字が発せられると、ギッと冬樹のことを睨み見つけながら大声で突っ込む。


「悪かったって…」

「で?あたしが乳首をみせてなんだって??」

「話ずれぇな…」


冬樹は頭を掻きながら、居心地の悪いこの空間を憂いながらも話を続ける。


「その時に言ってた話だけどな」

「…?」

「なんのこと、みたいな顔すんじゃねぇよ。お前が自分で言ったことだろ?」

「あっ、二人だけの世界になったらってやつ?」

「それだけど…な。そんなこと絶対にないけど、もしも世界に俺とお前の二人だけになったら…」

「なったら何なのよ。まさか、あたしと一緒はむりとか言い出すんじゃないでしょうね」

「……。こんな薄暗い廊下でも、こうやってお前といたら賑やかで寂しさなんかどこにあるんだって感じで…。だから、その…、お前となら生きていけると…思う」


世界は、音を忘れたのだろうか。スピーカーが壊れたのだろうか。何の音もしない、靴音も、二人の吐息さえ。葵は恥ずかしさからだろうか、腕に顔を埋める。


「…もう、何言ってんのよ。…ばか」


小さなつぶやきだ静かな廊下だ。冬樹の耳にもちゃんとそのお説教は届いただろう。そして、薄暗い廊下、冬樹の目にきちんとうつったかは分からないが、葵の頬は熟れた桃の様にピンクに染まっていた。と突然、コツコツと、遠くから靴音が響く。二人は一気に現実へ引き戻されたようだった。


「冬樹⁈」

「立てるか。先に進むぞ」


大きく頷いた葵は、勢いよく体を起こし、足音を殺しながら走る冬樹に続く。


「冬樹、これからどうするの。このまま走っても…」

「おい、あそこ。あそこの部屋開いてないか?」


冬樹が指さす先には、整然とした廊下に突然現れた若干開いた扉があった。目の前に現れたオアシス、砂漠で水を求める行商人がその好機を逃さないのと同じように、二人は身を隠せるその部屋に飛び込み息をひそめる。


(えっ?ふ、冬樹…?)


葵の目線の先にはぼんやりとした腕のシルエット。その腕の主は、後ろから葵のことを抱きしめ、静かに息を殺している。


(な、ななななーーーーっっっ⁉)


いますぐ叫びたいが、そんなことをすれば見つかってしまう。


(冬樹の匂い…昔から一緒にいるから…なんか安心す…って何考えてるのあたし⁉)


そうこうしていると話し声が聞こえてきた。


「…ぜったい聞こえたって、女の甲高い悲鳴と男の声で乳首って」

「あのなぁ、嘘つくにしてももう少しいいウソつけよ。女の甲高い声はまぁ分かるけど、なんだよ男の声で乳首って。おまえ乳首フェチかよ」

「俺はおしり派だよ。はぁ、幽霊じゃなかったらいつもの所長のいたずらかなぁ…」

「所長も乳首とは言わんだろ。はぁ、無駄な仕事ふやすなよ」


だんだんと声は遠ざかっていき、二人は息をひそめるのをやめ顔を見合わせる。


「…所長って。NGの、開発者かな」

「かもしれないな…。でも、これだけじゃ証拠にならないな」

「そうね…と、ところで冬樹、もう隠れなくてもいいんじゃない…?」

「あぁ…」

「あぁ…じゃないわよ!あ、暑苦しいから離れて!」

「あ!すす、すまん!!葵の匂い、なんか安心s…いや何でもない」

「⁉⁉とと、とりあえずさっきまでのことは一旦忘れましょ!ね?…ふぅ。それで、あの人達が出てきたのって…」

「あ、あぁ…。ん?この部屋ってもしかして倉庫か」

「うん、何かのバインダーがいっぱいね。もしかしたら…」

「NGの情報もあるかも」

「さっきの二人が戻ってくる前にさっさと探すぞ」

「うん」


そういうと冬樹の腕はもう棚に置かれたファイルに伸びている。葵は、しばらく立ち上がらずに胸に手を当てる。何故かその腕から目が離せない。


(あたし、持久走したわけじゃないよね…?)


いつもより速い鼓動。廊下を走ったからか、それとも…。葵自身には、答えが分かっている、そうであってほしいと。

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