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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
6/67

第06話

遅くなりました!6話投稿です!!

半分が無くなり、ドールハウスの様に中を見る事ができるようになった隣家。中では、可愛い人形ではなく、おぞましい化け物が物色をしている最中であるようだ。冬樹は少しの間、自分の目の前で起こった出来事が瞼に焼き付いて離れず、その場に立ち尽くしていた。かすかに聞こえてくる少女の泣き声。冬樹の足元では葵小さな体を震わせ、泣いているようだった。


「いったい何なんですか~…。お魚さんたちは何をしているんですか~…?」


あまりの出来事に、紅葉の声は届かず、冬樹は膝から崩れそうになり、咄嗟に塀を掴んだ。さきほどの家の倒壊でもろくなっていたのだろうか、冬樹がつかんだだけで、その塀は大きな音と共に崩れた。その瞬間、化け物たちは隣家の中を物色するのをやめ、冬樹の方をぎょろっとした目で睨んだ。化け物は向きを変え、冬樹たちの方へ今にも突進してきそうだ。


(まずい…、このままじゃさっきの親子みたいに、みんな喰われておしまいだ。でも、たぶん、あいつらが気づいているのは俺の事だけ。塀の後で見えていない二人はまだ大丈夫なはず…、だったらせめて)


「冬樹さん!大丈夫ですか?」

「葵のことは頼んだ!」


そういうと、冬樹は倒れた体をたたき起こし、震えが止まらない足で勢いよく走りだした。

冬樹は化け物たちの気を引くように、両手を大きく振り、大声で叫びながら葵と紅葉が隠れてる塀とは真逆に走った。


(こわい、でも俺はあの二人を守りたい。せめて二人が逃げるまで、いいや逃げ切れるように…)


けれども、化け物たちが冬樹に二人をどう逃がすか、自分がどう動けばいいかを考える時間や隙を与えるわけもなく、あっという間に冬樹に追いつき、その大きな尾びれで冬樹のことを吹き飛ばした。

冬樹は防御することもできず、道路に体を強く打ち付けながら、近くの塀に体全体を殴打した。


(いっ、意識が…とぶ…‼)


「ぐっっっ...!!」


(一撃でこの威力、もう一度やられたら次こそ意識が飛んじまう…)


冬樹は舌を噛み、飛びそうになる意識をなんとか引き戻した。冬樹を吹き飛ばした化け物たちは、ゆっくりと冬樹の方に近づいてきている。その画ははまるで、弱弱しい獲物を逃がさない狩猟者のようである…。


冬樹は、全身あざだらけ、着ている服は雨でびしゃびしゃ、吹き飛ばされた衝撃でいたるところが破れていて、ひどいところではそこから血が出ている。遠くから見ても、次の一撃が致命傷になるだろう。しかし、冬樹はあきらめずよろよろと立ち上がった。


(まだだ、まだ…。できるだけ遠くへ…、できるだけ二人から離れたところに…)


重い足を引き釣りながらゆっくりと歩きだす冬樹。少しでもつまずいてしまえば、間違いなくこけてしまいそうなほど、その後ろ姿は弱弱しい。化け物たちは、逃げた獲物を逃がすまいと、冬樹に迫るスピードを1段階あげた。当然のように、冬樹はそれほど距離を稼ぐこともできずに化け物に追いつかれ、きれいな弧を描きながら勢いづけられた化け物の尾びれ攻撃に対処できず、冬樹の体はきれいな放物線を描きながら空を舞った。体が地面に叩きつけられるまさにその時、冬樹はとっさに右手で体全体をかばった。


「…っ!」


いつもの平穏をとっくに失った住宅街に、鈍く音が響いた。


―――――――――――――――

―――――――――――――――


「葵のことは頼んだ!」

「えっ、ちょっと~冬樹さんっ‼」


冬樹がパシャパシャと勢いよく駆け出してく足音とともに、紅葉さんの叫ぶ声が私の耳に届いた。あたしは、体勢を変えず、目だけで冬樹の姿を追った。


すぐに分かった。冬樹が何をしようとしているのか、どうしてあたしたちを避けるように慌てて飛び出したのかを。冬樹は、化け物…、いいや…、ぐーちゃんとぴーちゃんの意識がこちらに向かないように大きな手ぶりでぐーちゃんとぴーちゃんを引き付けている。その行動は、あたしたちを助けようとしているんだと、逃がそうとしているんだと、嫌でも分かった。


「冬樹さんっ!」


紅葉さんが叫ぶのも無理はないと思う。ぐーちゃんとぴーちゃんに追いつかれた冬樹は、何をできるわけでもなく吹き飛ばされたのだ。武器もない、武術をやっていて強いわけでも、喧嘩で負け知らずでもない。幼馴染みのあたしが知っている冬樹は、生身であんな姿になったぐーちゃんとぴーちゃんに勝てるほど、強い男の子ではない。


宙を舞った冬樹は向かいの家の塀に勢いよく体を打ち付けた。紅葉さんはとっさに目をそらしたが、あたしは冬樹の事をずっと目で追っていた。冬樹のぼろぼろになった姿を見て、体が反射的に駆け出しそうになった。でも、あたしは駆け出さなかった。冬樹があたしたちを守ろうと戦ってくれているのに、自分が駆け寄るのは冬樹に申し訳ない、いつもとは違う気持ちが込み上げてきた。この気持ちは何なんだろう…。


よろよろと立ち上がり、もう一度ぐーちゃんとびーちゃんをできるだけあたしたちから遠ざけようと歩き出す冬樹の後ろ姿。だけど、ぐーちゃんとぴーちゃんにすぐに追いつかれたその後ろ姿は、吹き飛ばされ宙を舞った。あたしは、咄嗟に走り出していた。


「冬樹ぃっ!」

「葵!」


駆け寄ると、冬樹は右手に目線を向けた。いたるところから血が出ていて、あたしは持っていたハンカチで一番ひどい右手を縛ろうと軽く触れた。


「…っ!」

「どうしたの、痛いの…?動かせる…」


冬樹はあたしの言葉を聞き終える前に、地面を見つめながらゆっくりと首を横に振った。あたしの胸は、強く締め付けられるようだった…。


「なんで出てきたんだっ!」

「そんなの…、そんなのあんたが」

「俺はお前と紅葉さんのことを守りたいんたいんだよ」

「そんな腕じゃ、戦うどころか、動くのだって」

「でも、俺がやらなきゃいけないんだ!」

「ちがうっ!」


自分でもびっくりするような大きな声で叫んでいた。驚いたのか、冬樹は目を大きくして私の事を見ている。


「あたしが…、あたしがやる。今、冬樹に助けてもらった分、今度はあたしが冬樹の事助ける。大丈夫、決心はできたから」


私は立ち上がって、ぐーちゃんとぴーちゃんの方を向いた。


「見ててね、冬樹」

『面白くなってきましたねぇ。いいですねぇ~、いいですよっ‼んっ~、でもせっかく面白くなってきたのにここで終わってしまうのは私としてはいささか残念ですねぇ…。…っ!そうです!いいことを思いつきました。今回は私がほんの少しばかりお力添えいたしましょう』


雨の降りやまぬ雲が、ごろごろとなり始め、つぎの瞬間、瞬く間に辺りにまばゆい光と、鼓膜が破れてしまうかと思うほどの轟音が鳴り響いた。私は思わず目を閉じた。目を開けると、あたしの目の前には真っ黒こげになったぐーちゃんとぴーちゃんの姿があった。


『さぁ、葵さん!とどめを刺してください‼大丈夫です。あなたはあの化け物に触れるだけでいいのです』

「ぐーちゃん…、ぴーちゃん…?」


あたしは、ゆっくりと黒焦げになったぐーちゃんと、ぴーちゃんに近づき、手を触れた。あたしが手を触れると、ぐーちゃんとぴーちゃんはもがき苦しみながら、瞬く間に光の粒となり、光の粒は空へと昇って行った。足元を見ると、元の姿に戻った魚の形をした、何かが水たまりに浮いていた。


冬樹は、目の前で一体何が起こったのか分からなかった。今まで声のしていた方を見ても、人の姿はなく、その先には、さっきまでの厚い雲とはうって変わって、きれいな星空が広がっていた。


戦闘シーンってすごい難しいんだなと実感しました...。これから先また書くとなると...ナゲダシタイ‼

話は180度変わりますが、この後書きって、なんか作家になったみたいで楽しいですね。もう後書きだけで一冊本かけちゃいそう!(嘘)

こんなへんぽこりんな作者ですが、今後の話も追っていただけると嬉しいです♪

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